大学教育の現場から1「恋愛観の世代間格差」 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第6週

2016年9月11日 / 大学教育の現場から



(写真)第四回BB Caféが行われたNIWOTATAでの様子



2015年3月、第四回BB Caféが北京のNIWOTATAで開催されました。タイトルは「エリートバーリンホーのリアル」、長江商学院MBAホルダーである3名の中国人エリートが登壇しトークを繰り広げました。「ビジネス」や「環境」に関する質問が続々と出る中で、私が選んだ質問は「恋愛観」でした。

よく「80後(80年代生まれ)」や「90後(90年代生まれ)」といった異なる年代の中国人が、あたかも全く異なる人種であるかのような議論がなされています。私は職業柄、多くの「80後」、「90後」の中国人との交流の機会がありますが、世代間では説明できない事が数多くあります。その一つが「恋愛観」なのです。

中国において、失恋が原因で自殺を図る大学生のニュースを耳にする事がありますが、これは最近に限ったことではなく、過去においても明るみに出なかっただけした。事実、私も何度かその手の話を聞いたことがありました。また、先日17人の女性と同時に付き合っていた21歳の男性が話題になりました。話題になるだけあって驚愕の人数ですが、複数の異性と付き合っていた学生は十数年前にも一定数はいました。

「恋愛観」に対して異なる意識を有する中国人を観察してみると、世代間よりも出身地域や家庭環境の差異が大きく影響していると感じます。私の周りには、結婚するまでに一人としか付き合った事のない「80後」の友人がたくさんいますが、彼らに共通して言えるのは、ほとんどが地方の田舎の出身者であるという事です。同じ「80後」でも、北京の友人の多くは複数人との恋愛経験があります。

今回のトークセッションにおいても、私の

「あなたたちの周りで、恋人をあたかも洋服のように換えていた友人はいましたか」

との問いに対し、

「いましたよ」

と即答したのも北京出身のJuliaさんで、地方出身の二人からの返答はありませんでした。

中国は13億という莫大な人口を抱える巨大国家です。現代の中国人を理解する上において、「80後は~」、「90後は~」とステレオタイプに決めつけるのではなく、様々な世代、地域出身者一人ひとりと直に向き合い交流を積み重ねる事によって、隣人の実像が見えてくるのではないでしょうか。

文・写真:西村友作





Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。