中国秀逸ドラマ

林奨さんは、堀場製作所の駐在員で、中国で<分析計測装置の販売>に汗するビジネスマンです。強面の林さんですが、実は大学ではグリークラブに所属した歌好きで、今年2月に北京で開催された都道府県対抗歌合戦では実行委員長として大活躍。その林さん、実は歌だけでなく大の中国ドラマ通と聞き込み、ぜひ連載をとお願いし、快諾いただきました。たとえば日中戦争を取り扱ったドラマにも、国籍を超えた人と人との絆を描いた名作など、ひと言では語れない「中国ドラマ」の奥深さを、林さんが厳選した10作品をもとに熱く冷静に書き下ろします。どうぞお楽しみに!



第1弾 激動の歴史を生きた家族の物語



人间正道是沧桑


~人间正道是沧桑 (全50集)~

まず最初に“人间正道是沧桑 ”をご紹介したいと思います。このタイトルは中国語で“移り変わりこそ人の世”という意味ですが、1925年から1949年までの近代中国歴史の中で最も激動の時代に生きた人々の物語です。孫紅雷(楊立青)、黄志忠(楊立仁)、張恒(楊立華)の3兄妹に、柯藍(瞿霞)、楊雪(林娥)、孫淳(瞿恩)などの豪華俳優陣が、激動の時代の中でそれぞれの立場や信念で懸命に生きる姿が描かれています。

1925年の中国は孫文が亡きあと、革命新政府と北京などの各軍閥が対峙していた時代ですが、広州に革命政府の軍官養成機関として蒋介石が校長を務める黄埔軍官学校が設立されます。当時は軍閥に対する革命政府軍の育成のため、国民党と共産党が協力していた時代ですが、両者の矛盾と不信が徐々に広がって相互監視が始まります。その激動の時代の中で日本の士官学校を卒業した父を持つ3人の兄妹がそれぞれの道を歩み始めます。

やがて国共合作は破れ立青の家族も共産党と国民党の幹部として、それぞれの立場で対立した状態となります。立青は好意を寄せていた瞿霞の国民党による逮捕や投獄、更に恩師瞿恩教官が戦闘の中で国民党に射殺される中でつらい時期を迎えます。ところがここに日本が入ってきて三つ巴となり、これが第2次の国共合作を促し両者の対立は一時的に停止されます。分かれていた兄妹にも和解の機運が出てきますが、根本的な相互の不信感は拭い切れず、日本投降後には直ぐに対立が始まり解放戦争が始まります。

特に日本が支配していた中国東北地区は、両者が覇権を目指して激しい戦闘地域となります。米国から支援を受ける国民党の砲弾に対抗するため、共産党は東北に残っていた日本人技師を利用して国民党を上回る性能をもつ砲弾を開発させる場面や、戦闘で負傷した兵士の看護のため、日本人医療部隊を優遇する場面も出てきます。

このドラマは激しく変わる不安定な時代でそれぞれの進む道は違っていても、家族の絆の大切さや、本当に信頼できる友人や尊敬できる先輩を持つことの大切さを教えてくれます。孫文の革命から中華人民共和国の設立まで、さまざまな場面で日本がどう関わったのか、中国人がどう見ていたのかも理解できます。バイオリンやピアノが中心の音楽も素晴らしく、美しい場面に彩を添えてくれます。是非皆さんにお薦めしたいドラマです。

以上








林奨

投稿者

林奨

皆さんこんにちは。林 奨(すすむ)と申します。名前が2文字でよく中国人に間違えられるのですが長崎生まれの日本人です。京都の会社勤務で2010年から北京に赴任しています。

これからBB映画コラムで日本に関係のある中国ドラマのご紹介をさせて頂きます。皆さん毎日の仕事や学校などでストレスも多いかと思いますが、時間の空いた時に見ると手軽な気分転換になりますので、この連載をきっかけに中国ドラマファンが増えればと思っています。

ご意見や感想もお待ちしていますので、よろしくお願い致します。

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