日中間 越境EC市場 最後のブルーオーシャン BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第9週



KJT.com 越境ECサイトでは日系商品が目立つ 


タオバオ・京東・アマゾンなど大手のプレイヤーがひしめき、楽天やZOZOTOWNも早々に撤退するほどのレッドオーシャンとなっている中国EC市場。その市場規模は14年の時点で約53兆円と、日本の約4倍にもなります。その中で、最後のブルーオーシャンと言われているのが越境EC市場です。日中間の越境EC市場規模は、13年の時点で約3900億円、これが20年には約8800億円にまで成長するとされています。まだ大きなシェアを確保しているプレイヤーがいない中で、アリババ系の天猫国際や、テンセントが出資しウェイシンとタッグを組む京東など、各社がしのぎを削り始めています。

 これまでにも、2010年にヤフーがタオバオと提携して双方向の越境ECのサービスを展開する等、多くの企業が取り組んできましたが、高い送料と関税・長い配送日数や言語の壁にも阻まれて、なかなか上手くいきませんでした。こうした問題を解決して成功し始めているものの1つに『跨境通』というプラットフォームがあります。これは上海市政府が主導で行っているもので、自由貿易試験区を活用したクロスボーダー専用のECスキームです。ここでは、関税や衛生許可などが免除され、保税区での保管・出荷が可能なため、配送日数も短く、かつ圧倒的に安く届けることが可能となっています。そして「KJT.com」というECサイトも用意されており、アマゾンや1号店もこのサイトを通じて販売を行い、上海保税区での在庫確保・出荷を行っています。「日本製品は安心・安全」というイメージから、オムツ・粉ミルク・化粧品等といった、いわゆる「爆買い商品」の売上も伸びています。

 さらに、日系企業でも、上海の新天地や伊勢丹で高級輸入品スーパーマーケットを展開するGL plaza社が、中国最大の港湾企業であるSIPG社と共同で、5月に北外灘の上海国際旅客ターミナル内に店舗をオープン。そこで「跨境通」とも連携した「越境EC専用ショッピングモール」を併設しています。日本の人気商品を揃え、その場で簡単にネット注文が出来る仕組みも完備。船便や保税倉庫を利用することで、従来よりも大幅に安く商品を販売することを実現、今後大きく発展することが見込まれます。中国にいながらにして、日本の商品が日本と変わらない価格ですぐに手に入る時代はもうそこまで来ています。

 また、伊藤忠商事もタイの華僑財閥チャロン・ポカパングループと組んでの中国越境EC市場への参加も表明しています。近年急成長を遂げ、18年には約139兆円にまでなるとされる中国EC市場。その最後のブルーオーシャンを巡る戦いの火蓋が切って落とされました。

文・写真:山本達郎





中国人観光客「爆買いリスト」の作り方 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第9週



オムツを段ボールで4箱買う中国人客 




 2020年の訪日外国人旅行者数の目標は2000万人とされていましたが、3000万人に引き上げられることになりました。アジア各国に対するビザ発券要件の緩和や円安の影響もあり、観光客が急増中です。日本でも、中国人による爆買いのニュースが頻繁に流れており、7・8月の夏休み期間でも更なる観光客の増加が見込まれます。また、中国人観光客の平均旅行消費額も約23万円と突出しています。

 この中国人の購買に欠かせないのが「買い物リスト」です。実際、先日中国人の友人をアテンドしましたが、奥さんや同僚から頼まれた買い物リストを持参していました。内容は魔法瓶、一眼レフ、セラミックナイフ、紙オムツ、目薬、化粧品など。新宿のビックロやマツキヨで、確かに20万円位買い込んで行きました。富豪クラスになると、ゴルフクラブのセットを毎月お土産に買って行ったり、最新のハイレゾ対応ウォークマンを10個買って配ったり、日本のアクセサリーを買いに青山の本店までプライベートジェットで乗り付けて3時間で1500万円分を買ったりと、まさに爆買いっぷりを発揮している人たちもいます。さすがにこれらは極端な例ですが、メーカーからすると、この「爆買いリスト」に事前に商品を入れ込むことが大事になります。その際に必須なのが、ソーシャルメディアの活用です。中国では基本的にニュース等の情報よりも、知人からの口コミが重視されます。先日も、日本のドラッグストアで買うべき「神薬TOP12」なるものが発表され、一瞬にしてウェイボー・ウェイシンで拡散され、その日のうちに新宿マツキヨの棚から商品がなくなったということがありました。

 弊社にも、「この爆買いリストに自社製品を入れたい!」というお問合せが多数来ています。弊社の提携先であり、中国にある訪日専門の大手旅行代理店にも注文が殺到中。毎月日本に送る人数も約1万人を、ウェイボーのフォロワー数も100万人を、サイトのPVも月間1000万を超えています。当然、何でもかんでも「爆買いリスト」に入れれば良いというものではなく、大切なことは日本に来て良質な体験をしてもらい、リピーターになってもらうということです。先日中国人のお金持ちから依頼があったのは、刀鍛冶がゴルフクラブを作っているということを聞いて、そのクラブが欲しいということでした。これはどこでも同じですが、こうした製品の背景にあるストーリーや想いといった部分が大切になってきます。本質的な良さを追求しつつSNSで上手く拡散する、こうすることで爆買いリストに入れ込んで行くことが可能です。中国人観光客が増えすぎるとマナー問題等も起きるとも言われますが、中国人の購買力は日本経済にとっても大切な要素となりつつあります。観光客にも満足してもらい、日本側も喜べる環境作りが大切です。

文・写真:山本達郎