Away from home in Shanghai ~大都会上海で暮らす学生のすがた~

第5回 于瑞川 「ボランティアは社会を理解する手段」

第5回目のインタビューは現在上海交通大学公共管理学部4年生の于瑞川(ユ・ルイチュアン)です。同じ奨学金団体のプログラムに参加していたことをきっかけに知り合った彼。のほほんとした性格、口調の中にも彼の鋭い視線がうかがわれます。



大学の洋食レストランにて。
 

ボランティア活動を通して中国の発展について学ぶ

普段はどんな大学生活を送っているの?
学習以外もインターンやボランティア等の課外活動に参加している。例えば大学2・3年の夏休みには中国中西部の田舎でのサマーキャンプでボランティア教師をしたり、大学4年次に早稲田大学に留学していたときは日本の小学校で中国を紹介した。大学内では海外の著名な科学者を招いた特別な講義に参加し、時には遠方を訪ねた。大学や奨学金団体が提供してくれた機会に感謝している。

どうしてボランティアに興味があるの?
社会を理解する手段の一つだから。自分自身も幼いころに農村で育った身として、やはり農村部と都市部の格差が大きいと感じる。公共サービス、生活の利便性,生活スタイルなど、様々な側面でね。中国の農村部は地理的に不利な位置に置かれているので、なかなか発展しにくい。また、地元の若者が都市に出て仕事をしたがるので、人口流動も加速している。この格差をなくすには長い時間がかかる。

ボランティア活動の内容は研究テーマと関係ある?
あるよ。所属する公共管理学部では、国家や市民の生活という側面から、どのように中国の発展を理解し、更にはどのように発展過程で生まれた問題を解決するかを学んでいる。卒業後、ハンガリーの大学院でも引き続き比較政治を学ぶ予定。東南アジア諸国の多くは中国と同じく社会主義の影響を受けているが、違う発展の道をたどった。それぞれの発展の課程や問題を学びたい。

中国の発達する中、直面している一番の問題はなんだと思う?
都市と農村部、貧富の差が大きい。これらの問題はだれか1人の手によって発生したものでも解決されるようなものではなく、大衆全体が向き合い、解決に努める必要がある。

将来はどうしたい?
国際組織か国境をまたがる企業で働くか、研究を続けたい。まだ明確ではないけれど。



日本の小学校でのボランティア活動の様子 
 

沿岸経済都市・青島から上海へ

故郷はどんなところ?
故郷は青島。沿岸都市で、中国では最も早い段階で解放された都市のひとつ。山も海もあって、海鮮が美味しいし山東省で最も高い山である崂山もある。歴史的には、青島は春秋戦国時代からある古代都市。ドイツの租借地として、その後は日本の占領によって現代化した。未だに当時の建築や青島ビール等、ドイツや日本の影響が色濃く残る。また、青島は地域の経済の中心。日本と韓国との関係がとても強く、商業の往来が盛ん。公共交通手段も発達していて、生活は一般的な都市生活という感じ。

上海の印象は?故郷と何が違う?
国際化のレベルがやはり違う。そして上海で生活している人は全国、世界各地からやってきている。交通や生活において利便性が高いし、教育レベルも高い。ここに来て勉強できて幸運だと思う。

卒業後上海に残りたい?
今はあまり残りたくない。まず、外地人として上海に残るのはあまりにも障壁が高い。戸籍制度によって、上海人と同じ公共福利を享受するために彼らより多くの仕事や時間を要する。他の条件はまずまずだけれど、僕は個人的にまずは異国に行って見識を深めたい。もし仕事の機会があれば戻ってきたいけれど期的に住むのは厳しい。

故郷への思い
故郷は僕にとって変わらない場所。青島は発展した街だけど、上海に比べたらまだまだ遅れている部分が多いなと気づいた。でも当分の間僕は外にいるし、すぐに帰る気はない。



青島の街並み。租界時代の建築が今も多く残る 
 

インタビューを終えて
今回のインタビューから浮かび上がったのは中国の農村部と都市部の発展の格差。香港留学中に中国の地理についての授業を受講していましたが、中国沿岸部と内陸部、南部と北部の発展の差に驚きました。実際現地を訪れてみるとなおさらです。一帯一路政策の影響もあってか、最近は内陸部の開発も進んでいるようですが、まだまだ先は長そうです。また、ボランティア活動で得た経験を一過性のものではなく、しっかりと研究に活かそうとしている彼の姿勢に感銘を受けました。


Ryoko Hasegawa

投稿者について

Ryoko Hasegawa: 秋田の国際教養大学グローバルスタディズ課程4年生、長谷川綾子(りょうこ)です。1995年生まれ、出身は大阪です。2016年の香港大学への交換留学を経て、2017年秋から華東師範大学に1年間の予定で公費留学中です。地方から上海に進学してきた若者へのインタビューを通して、中国人の多様性、彼らの故郷・将来への思い、学生生活について少しでも伝えられたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。