Away from home in Shanghai ~大都会上海で暮らす学生のすがた~

第4回 艾雨 「朝鮮族や日本人、様々な文化や価値観に触れ、自由に生きる」

第4回目インタビューは東華大学日本語学科4年生艾雨(アイ・ユー)さんです。大学進学を機に自らの視野を広げるために大都市上海にやってきました。友人の紹介で上海で知り合ったのですが、なんと秋田に留学経験があるという彼女。インタビュー中地元トークで盛り上がりました。



東華大学の最寄り駅、延安西路にて。
 

北朝鮮との国境で生まれ育つ

アイユーの故郷ってどんなところ?
私の故郷は中国東北部の街、遼寧省丹東市。北朝鮮との国境に接していて、実際新鴨緑江大橋という橋で北朝鮮と繋がっている。北朝鮮の近くだから危ない印象を受けられがちだし、私自身幼いころは核実験や戦争を恐れて引っ越したいなと思ったりした。でも、国境に接している影響で朝鮮族の人が多く、独特の文化を持つ程よく発展した街です。最近は緊張が少し緩和したおかげで、丹東の印象が良くなって家賃も上がったみたい。

朝鮮族、「独特の文化」って?
中国と朝鮮、2つの文化が影響しあって、共存しているということ。北朝鮮と国境を接しているので、丹東には朝鮮族、北朝鮮から出稼ぎに来る人がたくさんいる。だから中国語と朝鮮語、どちらも話されている。街の看板にはハングルが併記されていて、料理も中華料理と同じくらい朝鮮料理もよく食べる。昔は朝鮮語しか話せない人もいたみたいだけど、今は朝鮮族の人も中国語を話すようになった。



丹東と北朝鮮を結ぶ橋、新鴨緑江大橋
 

アイユーも朝鮮族なの?
私は朝鮮族ではなく、漢族。でも父は満族だから、本当は満族になる予定だったけど、戸籍の手続きに手違いがあって母親のほうの漢族になってしまった。満族だったら高考で追加点もらえたのに、と思ったりもする。笑 満族も昔は独自の言語を話したけど、今は皆普通語を話すね。

上海で気づいた北と南の文化の違い

東北部、特に丹東と上海は全く違うよね。上海に来て何か気づいたことはあった?
地元の方が田舎だから、人が優しくていい意味で世話焼きな人が多い。中国の北部は男性が強くて男らしいけど、上海は女性が強くて家事も男性がすることが多いのは驚きだった。
でも一番の驚きは北部と南部の風習の違い。南は食べ物が甘くて、北は辛いものが多い。最初こっちで甘いお粥を食べたときは慣れなかったなあ。あと、北部はどんな行事ごとでも餃子を食べるし、皆手際よく作るけど、南部の人は作れない人もいてびっくり。代わりに彼らは他の物を食べるね、例えば清明节のときは青团とか。

そういえば日本に留学中も東北・秋田大学に留学していたよね?故郷と比べてどうだった?
故郷と同じで、秋田は穏やかで人が優しいけど少し不便。だから就職は上海でするけど、いつか遊びに帰りたいなと思っている。あと、中国東北部は暖气の設備がしっかりしているから冬もあまり寒く感じないけど、日本はそうでもないみたいで冬の寒さが身に染みた。笑

北と南、両方見た今、中国ってどんな国だと思う?
とにかく広い。留学中に韓国人の人と付き合っていたことがあったけど、中国国内でもこんなに大きいから国家間の距離は全然気にならなかった。

ファーストリテイリングでインターン中・就職予定

大学生活について聞かせて。
もう4年生だから授業はほぼなくて、ファーストリテイリングでインターン中。3か月のプログラムで4月から6月までは店舗で接客、陳列等をしていて、7月からは正社員として生産管理を担当する予定。日系企業かつ昇進制度に優れているという点に惹かれて入社を決めた。

日系企業で働いてみて、何かきづいたことはあった?
細かいところにこだわることころ。例えば部屋に入る前には「失礼します」と必ず言って、部屋の人の返事を待たないといけなかったり。中国にいるとあまり周りに気を使わないから楽な分、ちょっと面倒くさいなと思う。でも留学中には挨拶をたくさんする日本の習慣はとても素敵だなと思ったよ。



1年間留学していた秋田大学での修了式の様子
 

これからも上海に残る予定?
上海は物価が高くて1人暮らしをするのが大変だけど、上海は日系企業もイベントも多いから日本語を活かせる機会がたくさんある。地元に帰ったら理想的な仕事はないし、給料も低いので上海に残って、1年に数回故郷に戻るのが一番だと思う。語学が好きで、今は韓国語も勉強しているから、ほかの仕事もしてみたい。

インタビューを終えて
今回のインタビューで印象的だったのは、中国の少数民族について。中国には約90パーセントを占める漢族のほかに55の少数民族がいて、独自の文化を形成しています。マイノリティは教育等様々な点で不利な立場に置かれており、それを克服するためにアイユーが言及していたように高考の際に加点される制度が設けられています。私自身も朝鮮族自治州である延辺に行ったことがありますが、中国にいるのに韓国にいるような、不思議な感覚に陥りました。現地の友人が、両親が出稼ぎに韓国に行っていて年に数回しか会えないと言っていたこと、朝鮮語よりも中国語を重視する人が増えていると言っていたことが印象に残っています。これから中国の少数民族、言語はどのように変化していくのだろうか、加点政策のような制度は本当に機能しているのだろうか。改めてこのような問題について考えさせられたインタビューでした。


Ryoko Hasegawa

投稿者について

Ryoko Hasegawa: 秋田の国際教養大学グローバルスタディズ課程4年生、長谷川綾子(りょうこ)です。1995年生まれ、出身は大阪です。2016年の香港大学への交換留学を経て、2017年秋から華東師範大学に1年間の予定で公費留学中です。地方から上海に進学してきた若者へのインタビューを通して、中国人の多様性、彼らの故郷・将来への思い、学生生活について少しでも伝えられたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。