Away from home in Shanghai ~大都会上海で暮らす学生のすがた~

第6回 「文学から思想を学ぶ―教育と思想は相関関係にある」

第4回インタビューは現在教育実習をしている友人(匿名)です。普段は一見能天気に見える人ですが会話の端々に現実的でクリティカルな視点が垣間見えます。

上海には自分の時間、空間がある

故郷・上海は自分にとってどんなところ?
故郷は経済がまだあまり発達していない山西という中国の中部地区。故郷では人との距離が近すぎると感じることが多いけど、上海は一定の距離感を感じる。上海は発展していて、開放感がある。私は個人的に、上海にはもっと自分の時間、空間があるように感じるから好きだよ。上海には成長できる可能性がたくさんあるからこれからも住み続けたい。両親も同意しているしね。



「上海には自分の時間、空間がある」
 

教育実習を通して気づいた教育格差

どんな大学生活を送っているの?
授業に出る以外はサークル活動のようなものやクラスの集まりに参加している。インターンシップでは上海の高校に出向いて教育実習をしたりもしたよ。

故郷の高校、上海の高校の違いに気づくことはあった?
まず、上海と故郷では使われている教材が違う。また、高考の点数配分や必要受験科目数も違う。例えば山西では6科目の受験が必要なところを上海では4科目のみの受験で済む。山西の人口は多いのに定員が少ないから名門校への入学はかなり難しい。特別良い教育資源にも恵まれていないね。

この格差についてはどう思う?
この現象はどうしようもないと思う。一线城市(上海、北京、広州、深圳などの大都市)で生まれ育った若者が大学に入学できなければは社会的に不安定な分子になってしまう。家はここにあるのに教育が受けられないと社会的な問題もたくさん起こりうるから。だから一线城市の学生に対して優遇措置が設けられていることは理解できる。優遇されているとはいえ上海でも名門校に通わないとなかなか良い大学には進学できないし。


上海と山西の高考受験科目数比較。(友人が受験した頃とは科目数が変わっているようです)
 

文学を通して思想を学ぶー教育水準の低さは思想にも影響を及ぼす

学部では何を勉強していたの?
学部では中国言語・文学専攻で、古代中国語、現代中国語、中国や国外の文学作品を勉強していた。幼いころから本を読むことが好きだったから。
文系学部、特に文学部は最近存在意義を問われているけど、学部研究で何を学んだと思う?
文学部の研究は社会に入って役に立たないからもっと専門的な技能を身に着けるべきという人が多くいるけど、私はそうは思わない。中国語で「无用之用(役に立たないと思われることがかえって役に立つこと)」という言葉があるようにね。私は本科生の時、国内外の文学作品を多く研究した。文学自体の内容は確かに時間が経つと忘れてしまうかもしれないけど、学習の課程で様々な思想に多く触れることができた。一つの具体的な技能を学ぶことによって思想は学べないけれど、私たちは文学から思想を学ぶことができる。すると思想から1人の人間の教育水準の高低やどのような人間かを判断することができる。中国でも抗日映画や過去の歴史のせいで未だに反日感情を抱いて、不買運動等をする人がいるけれど、それは彼らの思想や教育のレベルが低いからだと思う。

大学卒業後の予定は?
まだ決めていないし、正直明確な目標は立っていない。でも教師にはあまりなりたいと思わないかな。試験のために何かを教えることにあまり気が進まないし、高考の言語の科目等では文化や政治との関係が強い内容が多々見受けられる。私がその内容を教えることによって、学生の思想に制限がかかってしまうことが嫌なんだ。

インタビューを終えて
普段はとても気さくな人ですが、今回インタビューをするとなると少し硬い表情になってしまい、話を深堀するのに苦労しました。以前大学の講義で政府に対する失言をして追放された教授のことや、ネット上での発言について友人が話してくれたことがあります。おそらく今回発言が消極的だったのも一人の教師としての自分の立場や発言について人一倍気を付けているからだと思います。
彼女が言うように、やはり地方都市に行くと反日感情を表す人が多くなるように思います。雲南に旅行した時には「日本人・犬お断り」と掲げる看板を目にしたこともあります。都会にいると考えることがなくなってしまう歴史問題もやはり地方都市では人々の記憶に未だ深く刻まれています。歴史問題の解決や教育水準の底上げはそう簡単に実現することではありません。だからこそ両国民間の実際の交流や対話の機会を増やすことが重要なのだと、改めて思いました。実際雲南でもあまり嫌な思いはせず、親切な方にもたくさん出会いました。観光地化が進み外国人との接触が増える中、人々の意識も変わりつつあるのかもしれません。



雲南で目にした看板
 


Ryoko Hasegawa

投稿者について

Ryoko Hasegawa: 秋田の国際教養大学グローバルスタディズ課程4年生、長谷川綾子(りょうこ)です。1995年生まれ、出身は大阪です。2016年の香港大学への交換留学を経て、2017年秋から華東師範大学に1年間の予定で公費留学中です。地方から上海に進学してきた若者へのインタビューを通して、中国人の多様性、彼らの故郷・将来への思い、学生生活について少しでも伝えられたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。