中国のGWとも言われる五一労働節の連休。友人達は旅行へ行ったり、ホームパーティをしたりと、WeChatのタイムラインには連休を満喫している楽しそうな写真が延々と流れている中、私は連日連夜、映画の撮影という不慣れな仕事に明け暮れていました。
映画は「日本屌丝 外伝」というタイトルの微电影(ショートフィルム)。プロデューサーという立場で制作に関わっていているのですが、私は主に裏方でサポートをしているだけで、中心となって動いているのが主演の山下智博。この山下智博という男が、いま中国の若者、主に日本に興味のあるネット住民に絶大な知名度を得ています。
山下智博
山下智博、アラサー独身。中国在住歴3年弱。弊社でマネージメントしているアーティストなのですが、一応肩書は上海大学美術学部の大学院生。日中の若者の文化交流をテーマに学問なのか、遊びなのか、仕事なのか良くわからない立ち位置で活動しています。
2年前、空気人形とピカチュウのコスプレをしてコミケに行った様子をネットにアップロードしたところ、予想外に沢山の好意的な反応があり、それに味を占めた彼は、少しづつネットに自作の動画をアップするようになります。
教科書には絶対に載っていないような日本語を教える番組を流したり、淘宝で買ったちょっと変わったピカチュウの乗り物に乗った動画をアップしたり。そうこうしているうちに、なんだか応援してくれる若者が増えていき、数々の素敵な出会いや、出来事が起るようになってきました。
昨年はその実体験を元に、半分実話、半分フィクションのWebドラマ「日本屌丝」を制作。映像制作はほぼ素人にも関わらず、1人で監督、脚本、主演、作曲、などなどをこなし、沢山の方々のご協力のものと、中国版ニコニコ動画といわれている「ビリビリ動画」にてリリースした所、シリーズで(全10話)なんと合計500万回再生以上という、スマッシュヒットを飛ばしました。
仕事柄、面白い出来事に触れる機会が多い方だと自負していますが、ここ2年ほど山下智博の周りで起きている出来事は、本当に興味深い。
彼のメインのコミュニケーション手段はオンライン動画とSNS。それらを通じて、ネット上で中国の若者たちと、ウィットに富んだ?交流を毎日続けています。コミュニケーションの軸にあるのは彼独特の「ユーモア」。
よく「日中の架け橋」と言いますが、彼は本人曰く「日中の潤滑油(ローション)」になりたいそうです。そのまま交わるとギスギスして痛いモノ同士を、潤滑油によってヌルヌルさせてお互いを気持よくさせる。
このリレーコラムでは、山下智博が日中間をどのようにヌルヌルさせているか、彼のそのちょっと変わったアプローチと、それを通して垣間見える中国の00/90後世代の素顔を、少しづつ紹介させていただきたいと思います。
とりあえず、次のバトンが渡って来る頃には、GWに撮影した「日本屌丝 外伝」をお見せ出来るかも?ご期待くださいませ〜。
文・写真:鳥本健太
Torimoto Kenta: アートプロデューサー。2005年より上海在住。 アートと社会の接続点を作り価値を生み出せるよう、アーティストのマネージメントや展覧会の企画など上海を中心にアジア各国で活動中。 アートマネージメント会社 Office339 代表。