山下智博現象3「日本屌丝 外伝 ー ラオバンを倒せ!」 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第5週


 


 1回目のコラムの時に撮影現場を紹介させていただいた微电影、「日本屌丝 外伝」が、先月無事公開されました!

「日本屌丝 外伝」は、昨年公開した連続ドラマ「日本屌丝」のスピンオフの短編映画です。前作はほぼ自主制作のような形で、良くも悪くもアマチュア感満載の作品でしたが、今回は日本から加藤秀仁監督が参加、役者も演技の経験が有る方に出演してもらい、全てにおいて格段にクオリティアップしました。

<あらすじ>

未来からやってきた謎の女性「光原舞」から地球の未来を救って欲しいと依頼を受けた山下。そのためには未来の道具を使ってオカマの老板を倒さなければならない。ところが未来道具のせいで自体は最悪の展開に!果たして、山下は老板を倒して未来を救うことが出来るのか!?


 

そんな自信作が公開されたのが、8月15日。日本では奇しくも終戦記念日、中国では数日前に起きた天津の爆発事故で話題がもちきりだった頃、私たちは上海で開催された土豆映像季2015というイベントに出展していました。


 
山下智博ブースの様子

土豆映像季2015は、优酷土豆が主催する、中国の動画プラットフォームとしては最大のオフラインイベントで、今年で8回目となります。私達のもちろん参加は初めて。优酷土豆側の計らいで「日本屌丝 外伝」はイベント当日に大スクリーンでも予告編を流してもらいました。


 
大ステージで上映される「日本屌丝 外伝(予告編)」

そこでは沢山のファンの方々とも交流出来たのですが、当日はなんとビックリ、「日本屌丝 外伝」が最優秀コメディー賞を受賞しました!

そもそもここで賞を取ること自体ものすごい競争率のなか、外国人で、しかもコメディー部門での受賞は前例のない快挙とのこと。


 
授賞式の様子


「日本屌丝 外伝」は中国の動画プラットフォーム 优酷,土豆,AcFunにて公開されてますので、是非チェックしてみてください〜。

http://www.tudou.com/programs/view/Yh29wPFhpRs/?resourceId=0_06_02_99

※日本からだと開けない可能性があります。

文・写真:鳥本健太





山下智博現象2「紳士大概一分钟」 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第4週





いま中国の若者が山下智博に一番多く触れているのは、「紳士大概一分钟(紳士の大体一分間)」というバラエティ番組です。およそ1分間の中で、日本の面白い商品や旅行地、流行や若者文化などを紹介し、トピックにまつわる日本語のワンフレーズも学べる、ちょっと紳士な娯楽番組で、中国の主要な動画サイトで更新しています。

昨年の夏に、前回も触れたWebドラマ「日本屌丝」を公開して人気に火が付きました。その後、日本屌丝の次回作に向けて準備を進めていたのですが、公開が早くても1年後とかになってしまいかなり時間が空いてしまうので、折角できたファンの人達になにか出来ないかと考え、始めたのが「紳士大概一分钟」でした。

それまでも、おもしろ日本語を教える動画シリーズはいくつか作っていたのですが、「紳士大概一分钟」では、尺を約1分(実際は3分程度)と出来る限り短く、そしてテンポよく進むよう構成し、気軽に視聴してもらえるよう、いまの若者のライフスタイルに合わせた番組を目指しました。





特徴はなんといっても毎日更新していること。海外では、個人が動画を作ってYoutubeなどに毎日アップし、注目を集めているクリエーターが数年前から活躍していますが、中国ではそのようなクリエーターはほぼ存在しなく、恐らく「紳士大概一分钟」が”毎日更新”を本格的に始めた初の番組でした。

曜日ごとに違ったトピックで日本に関する情報を発信しています。よくガイドブックなどに出てくるようなオーソドックスな日本ではなく、イマの日本でリアルに面白いモノ、場所、出来事を取り上げ、それを山下独自の切り口で面白おかしく紹介。そして最後に、その日のトピックに纏わるワンフレーズの日本語を取り上げます。





この日本語もいわゆる語学の教科書に出てくるようなものではなく、絶対に学校では教えてくれないようなフレーズにしています。

また動画の配信も、海外のYouTubeの様な圧倒的な動画サイトが中国には存在しないので、より多くの人の目に触れるよう优酷,土豆,bilibili,爱奇艺,腾讯视频,PPTVなどなど、中国の大手動画プラットフォーム約10社にアップしています。

合わせて公式微信も開設し、動画の更新情報や、動画に纏わる小ネタ、また日本語が復習できるコンテンツなども用意し、毎日配信しています。

昨年のクリスマスから始め、様子見をしながら更新を続けていた所、次第に日本に関心のある若者が集まってきて、視聴者数が伸びていきました。週に1回程度チェックしてくれていた人が、毎日番組を見てくれるようになったり、この番組をキッカケに毎日日本の情報に触れるようになった人も沢山でてきました。

最初は1日あたり数万回だった再生回数も、数10万、ヒットする動画だと100万回を超えるものも出てきて、開始5ヶ月ほどで番組の総再生回数がなんと1億回に届きました。





周りのファンの人達に聞いてみると、みな口をそろえて「面白いだけじゃなくタメになる!」と言ってくれます。

ステレオタイプな日本ではなく、若者が関心のあるユニークな情報を取り上げていること。
山下独自の視点で、日本のリアルで面白い文化を知ることが出来るところ。
そして、最後にその日のトピックにまつわる日本語を学べるところ。

ただ面白いだけでなく、日本の文化に触れられて、(役に立つかどうかは別として)日本語も勉強できるという、一石三鳥だと言うのです。

また視聴者が増えるにつれて、SNSを通してファンからいろいろな問い合わせが来るようになりました。

「今度日本に行くんだけど、何処がオススメ?」
「〜に留学したいんだけど、相談に乗って下さい。」
「〇〇が欲しいんだけど、日本から買ってきて欲しい!」
「日本の女の子は本当に〜なんでしょうか?」

などなどなど・・・(笑)

ファンの反応が本当に興味深いので、次回は実際の番組の中身と、それに対するコメントやユーザー同士のやりとりなども紹介してみたいと思います。

文・写真:鳥本健太





山下智博現象1「日中の潤滑油(ローション)」 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第5週



(写真)「日本屌丝 外伝」 撮影の1シーン



中国のGWとも言われる五一労働節の連休。友人達は旅行へ行ったり、ホームパーティをしたりと、WeChatのタイムラインには連休を満喫している楽しそうな写真が延々と流れている中、私は連日連夜、映画の撮影という不慣れな仕事に明け暮れていました。

映画は「日本屌丝 外伝」というタイトルの微电影(ショートフィルム)。プロデューサーという立場で制作に関わっていているのですが、私は主に裏方でサポートをしているだけで、中心となって動いているのが主演の山下智博。この山下智博という男が、いま中国の若者、主に日本に興味のあるネット住民に絶大な知名度を得ています。

山下智博



(写真)「日本屌丝 外伝」 撮影の1シーン

山下智博、アラサー独身。中国在住歴3年弱。弊社でマネージメントしているアーティストなのですが、一応肩書は上海大学美術学部の大学院生。日中の若者の文化交流をテーマに学問なのか、遊びなのか、仕事なのか良くわからない立ち位置で活動しています。
2年前、空気人形とピカチュウのコスプレをしてコミケに行った様子をネットにアップロードしたところ、予想外に沢山の好意的な反応があり、それに味を占めた彼は、少しづつネットに自作の動画をアップするようになります。

教科書には絶対に載っていないような日本語を教える番組を流したり、淘宝で買ったちょっと変わったピカチュウの乗り物に乗った動画をアップしたり。そうこうしているうちに、なんだか応援してくれる若者が増えていき、数々の素敵な出会いや、出来事が起るようになってきました。

昨年はその実体験を元に、半分実話、半分フィクションのWebドラマ「日本屌丝」を制作。映像制作はほぼ素人にも関わらず、1人で監督、脚本、主演、作曲、などなどをこなし、沢山の方々のご協力のものと、中国版ニコニコ動画といわれている「ビリビリ動画」にてリリースした所、シリーズで(全10話)なんと合計500万回再生以上という、スマッシュヒットを飛ばしました。

仕事柄、面白い出来事に触れる機会が多い方だと自負していますが、ここ2年ほど山下智博の周りで起きている出来事は、本当に興味深い。

彼のメインのコミュニケーション手段はオンライン動画とSNS。それらを通じて、ネット上で中国の若者たちと、ウィットに富んだ?交流を毎日続けています。コミュニケーションの軸にあるのは彼独特の「ユーモア」。

よく「日中の架け橋」と言いますが、彼は本人曰く「日中の潤滑油(ローション)」になりたいそうです。そのまま交わるとギスギスして痛いモノ同士を、潤滑油によってヌルヌルさせてお互いを気持よくさせる。

このリレーコラムでは、山下智博が日中間をどのようにヌルヌルさせているか、彼のそのちょっと変わったアプローチと、それを通して垣間見える中国の00/90後世代の素顔を、少しづつ紹介させていただきたいと思います。

とりあえず、次のバトンが渡って来る頃には、GWに撮影した「日本屌丝 外伝」をお見せ出来るかも?ご期待くださいませ〜。

文・写真:鳥本健太