上海から北京に来た翌年の2008年、通い始めた学校が清華大学美術学院の漢語班(外国人向けの中国語コース)でした。月曜日から金曜日まで毎日4時間、文法・会話・作文などそれぞれの分野を4人の先生が担当、その中で精読の授業がとても楽しかったのを覚えています。先生は1947年生まれの女性で、北京の前門近くの胡同で育ち、以前は師範大学で中国人の学生に教えていたそうです。
精読の授業はほぼ毎日宿題とテストがあり楽ではありませんでしたが、先生は折々に旬の果物やお菓子などをクラスに持参しては私たちに食べさせてくれたり、体調が優れない学生がいれば漢方薬を紹介してくれたり、季節ごとに摂るべき食材を教えてくれたりととても親切で、彼女の人柄はもちろん授業の合間に耳にする身の上話もとても興味深く、楽しく通学していました。
冬のある日、先生がふと取り出したのがこの蛤蜊油(ガーリーヨウ)です。「これはずいぶん昔からあって、手にあかぎれができたりすると塗っていたのよ」と言いました。日本のオロナインやメンソレータムのような位置付けかもしれません。試しに使わせてもらうと、どっしりと重めの質感ですが、自分の体温でゆっくり伸ばしていくとしっかりベールになり優しいフローラル系のリラックスできる香りです。蛤蜊はハマグリの意味ですが、ハマグリエキスが入っているというわけではなく入れ物がハマグリということのようです。
以来7年、私にとって冬の乾燥する時期には欠かせないものになりました。小ぶりなので携帯にも便利ですが、そのままバッグに入れると何かの拍子で開いてしまって中がベタベタ、というリスクがありますからぴったりサイズのケースに入れて持ち歩いています。毎年秋頃にお店でまとめ買いしていたのですが、今回調べていたらネット通販の京東(jd.com)でまとめ買いすると少しお安くなるようなので次回から利用したいと思います。
文・写真:勝又依子
Yoriko Katsumata: 北京在住 主婦 翻訳 コーディネート 台北(99年末〜01年春)、上海(06年夏〜07年夏)、北京(07年夏〜現在)、計10年あまり滞在 通訳案内士(中国語) 陸羽茶藝中心泡茶師 日本ソムリエ協会ワインエキスパート れんげコレクター