大学教育の現場から2 くまモン座@北京 BBパートナーリレーコラム「日中コミュニケーションの現場から」第5週

2016年9月11日 / 大学教育の現場から





去年、第81回アカデミー賞外国語映画賞「おくりびと」の脚本家で、くまモンの生みの親としても知られる小山薫堂さんを私が勤める対外経済貿易大学に招き、講演会とワークショップを開催しました。講演会では「人を喜ばせるということ」、ワークショップでは「友達の日」がテーマで、多くの中国人学生を薫堂さんのsurprise & happinessの世界に引き込むことに成功しました。

この第二弾となる企画、くまモン座@北京を開催する事になりました。くまモン座とは、薫堂さんプロデュースのショートフィルム「くまもとで、まってる」と「ふるさとで、ずっと」を鑑賞する会です。これらのフィルムにはsurprise & happinessがふんだんに散りばめられています。去年講演会・ワークショップで薫堂さんが本当に伝えたかったことを、学生たちに直感的に感じてほしいという想いから、この企画が実現したのです。
準備スタッフは対外経済貿易大学の日中両国の学生10名。字幕やポスターなど全て手作りでしたが、とても学生が作ったものとは思えないほどのクオリティの高いものができました。





約3か月の準備期間を経て、2015年6月5日にくまモン座@北京がついに開幕しました。当日はあいにくの雨となり、学校外の予定参加者がほとんど来場できなかったにもかかわらず、100名近くの日中の学生・社会人が会場に足を運んでくれ大盛況となりました。また、くまモンも熊本から応援にかけつけてくれ、「くまモン体操」で会場を大いに盛り上げてくれました。

ショートフィルムの鑑賞会では、私は学生たちがどのような表情で映像を観ているのかをつぶさに観察しました。薫堂さんが作り出す独特の世界を学生たちが理解してくれるのか不安でしたが、大きく裏切られる結果となりました。途中退出する人やおしゃべりする人、スマホを操作する人などは全くおらず、みんなスクリーンを食い入るように見つめていました。中には感動して涙を流す女学生も数名おり、薫堂さんのsurprise & happinessが中国人の学生の心にじんわりとしみわたっていく瞬間を目の当たりにしました。

次世代の中国を担う学生たち。彼らの心にまいたsurprise & happinessの種が芽吹く日が待ち遠しくてなりません。





文:西村友作・写真:Go Takayama





Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。