第7弾 “中国の病院を舞台にして”

2016年8月30日 / 中国秀逸ドラマ



心术


~心术 (全36集)~

強い北風で北京の冬らしくなってきました。一度病院を舞台としたドラマを取り上げたかったので、今回は中国人中でも評判の高い“心术”をご紹介したいと思います。

一般に中国の病院で診察を受けるのは簡単では有りません。まず診察券を得るために時間をかけて並ぶ必要がありますが、評判の良い病院や医師ほど集中するので、診察を受けるまで一苦労です。更に都市の病院には地方での治療が難しい患者も来ますので、結果的に都市の大病院では医師が毎日非常に多くの患者を診ています。

“心术”の舞台である脳外科では腫瘍を除去する手術が多いのですが、多くの中枢神経が集中する部分で、手術後に後遺症が残ったり、極端な場合は死亡につながる場合も少なく有りません。手術前に家族に十分な説明行い同意を得ていたとしても、結果に納得のいなかい場合も有り、医者と患者は高い緊張関係に有ります。医療事故の責任を取らされて病院を去った医師が、今度は弁護士として病院と対決する場面や、医療事故を専門にして騒ぎを起こす“医闹”と呼ばれる人々の存在も絡めて、医者と看護婦が大変な圧力の中で仕事をしている状況が良く描かれています。

ドラマでは大型病院で脳外科医である吴秀波演じる霍思邈(老二)、先輩医師の张嘉译演じる刘晨曦(老大)、その娘で重い腎臓病を抱えた南南、若手医師の翟天临演じる郑艾平、そして看護婦の海清演じる美小护を中心に様々な物語が展開します。主人公の霍思邈は一見軽い感じの独身医師ですが、倫理観が高く、腕利きで“医闹”を含む難しい患者家族への対応で周囲の信頼を得ています。日々の診察と手術の傍ら、病状の悪化する先輩医師の刘晨曦の娘を救おうと子供の臓器探しに奔走しますが、刘晨曦は父親と医師としてのはざまで一度は苦しい決断を迫られます。一方若手医師の代表格である郑艾平は親しかった看護婦を、医療事故で病院に殴りこんできた患者家族からの暴力から救えなかった自分自身を責め、一旦医師を辞める決心をしますが、やがて別の医療事故で不幸が起こった患者の家族から、医師を続けるように励まされます。

“心术”では人間がぎりぎりの状況でとる行動、発言する内容によって、周囲が大きく変わる様子をうまく描いています。中国の医療現場は多くの人口、収入格差、医師不足、保険制度、病院や都市と地方での医療設備や技術の差など多くの課題を抱えています。現代中国が抱える問題を理解する上でもお薦めの作品です。

以上