第10弾 人々を幸せにする国家とは

2016年8月30日 / 中国秀逸ドラマ



北平无战事


~北平无战事(全53集)~

中国ドラマのご紹介もいよいよ最終回となりました。日中関係の多様な捉え方や中国社会の理解に意味のありそうな作品をご紹介させていただいたつもりですが、如何でしたでしょうか? さて最後は昨年末に放映され大きな反響を生んだ“北平无战事”です。1948年から1949年の間に起こった北平(今の北京)での物語を個性的な俳優陣が演じます。

当時の中国は8年に及んだ抗日戦争に勝利はしていましたが、国民党と共産党との戦いが再び始まっていました。当時国民党支配下にあった北平では食糧不足が深刻で多くの市民が餓えに苦しんでおり、米国からの援助に頼っていました。その援助食料の配分に管理責任のあった北平民食調配委員会と中央銀行北平分行で組織的な不正の疑いが強まり、市民や学生では政府への不満からデモが頻発していました。問題解決のため南京の国民党本部から北平に特別調査チームが派遣されますが、この調査チームと北平の関係者の間で複雑な戦いが展開します。

調査チームとして派遣されたのは市民に人気の高い国民党空軍将校の方孟敖(刘烨)と国防部の曽可达(董勇)で、受ける北平には方孟敖の父親で中央銀行北平分行長の方步亭(王庆样)と妹婿で秘書の谢培东(倪大红)とその娘の谢木兰(姜瑞佳)、燕京大学の副学長で国民党の経済顧問の何其沧(焦晃)とその娘の何孝钰(沈佳妮)、何其沧の助手の梁经伦教授、及び国民党中央党員の徐铁英(陈宝国)らがいました。

方孟敖と曽可达は協力して作業を進めていきますが、調査先には国民党員と地下共産党員が交わっており、更に家族関係や恋愛感情も入って複雑な調査展開をたどります。経済運営を司るのは方步亭と何其沧の経済学者ですが、破たんが迫る財政状況で苦しい政策が続きます。一方の徐铁英は調査で追い込まれる中凶悪な手段を取り始め、ついには方孟敖の家族を取り返しのつかない大きな悲劇が襲います。そして正義感のあった曽可达は最後に南京の命に背いて市民への食糧配布を行ったため非業の最期をとげます…

このように腐敗と経済運営の失敗により国民党が敗れ今の中国が生まれるのですが、今再び腐敗が深刻となっているのは皮肉な状況です。当時の国際情勢から中国の援助より日本再生を優先した米国への不信感も垣間見ることができます。1948年から僅か2年の間に起こった劇的な物語を、家族や隣人との愛情を絡め豊かな人間模様と、北平の美しい風景と静かで印象的な音楽で描いて行きます。見て忘れられないドラマです。是非ご覧ください。 

以上