第6回 長江商学院MBA Kevin(男性)34歳

<プロフィール>
 台湾の高雄出身。父親は海運会社の商船船長。母親は中学校の生物学教師。妹が1人。高雄高等学校卒業後、国立交通大学に進学しコンピューターサイエンスを専攻。同大学にて修士号を取得した後、兵役を経てITRI(台湾工業技術院)に就職。2012年にてMBA取得を目指し、長江商学院に入学。2008年に結婚し、現在は2児の父。
 
 
 
 

Q.子供時代の生活や教育について教えてもらえる?

A.母親は教師だったから、厳しかった記憶があるな。よく勉強したし、成績もずっと良かったね。小学校のカリキュラムにBASIC言語を使ったプログラミングの授業があって、それ以来、それがずっと好きになったね。

 

Q.中学校や高校時代はどのように過ごしたの?

A.基本的に勉強ばっかりだね。スポーツにも興味なかった。父親はよく僕に株の話をしていたから、そのせいもあって、中高からビジネスに興味を持つようになった。

 

Q.大学生活を紹介してもらえる?

A.大学では、コンピューターサイエンスを専攻したんだ。ソフトウェアも勉強したけど、他にも電気工学的なことも学んだ。仲のいい同級生に誘われて手話サークルに入ったりしたね。積極的な興味があった訳じゃなかったから、実質的にはユーレイ部員だったね(笑)とにかく、たくさん単位を取ったね。成績も良かった。おかげでマスターに進む時は、テスト免除だった。
 
 

学生時代に独立して開発案件を受注

 

Q.バイトとかはしてた?

A.やってたよ。博士課程にいた先輩に誘われて、ベンチャー企業でのバイトを始めた。最初はプログラミングの仕事だったんだけど、あんまり給料がよくなかった。その後、同じ会社のプロジェクトでプログラミングに関しての本を出版することになって、先輩と一緒に共同執筆者としてチームに加わることになった。今思えば、大した金額じゃないけど、当時としてけっこうなお金を稼いでたね。

 

Q.学生で本を出すなんですごいね。

A.そんなに大したもんじゃないよ。でも、本を出したお蔭でいろいろな開発案件の相談が持ち込まれるようになったんだ。それで、これはチャンスだと思って、自分でSOHOを構えて案件を直接受注することにした。僕が案件調整をして、それを知り合いの開発者に投げるというビジネスだね。とにかく忙しくて、顧客との折衝も大変だったけど、プロジェクトマネージメントの良い勉強になったね。それから、プログラムの価値っていうのは、それに掛かる工数とか難易度ではなくて、顧客のビジネスにどれだけそれが役立つかっていうことだと気が付いたのが大きいかな。単純な開発案件でも、顧客が儲けられる機能を提供できれば、高く売れることができたね。
  
  
 
兵役がきっかけで出会った会社とは
 
 

Q.修士課程卒業後は兵役があったんだよね?

A.そう。ただ僕の場合は、兵役と言ってもエンジニア枠だったから、ハードな訓練はなかったよ。ITRI(台湾工業技術院)に派遣されて、そこでソフトウェアの開発をやっていた。ITRIというのは、独立行政法人みたいな組織で、最先端の研究を通して台湾企業のイノベーションを支援しているんだ。日本企業とも取引があるから、けっこう知っている人もいると思うよ。兵役終了後は、そのままITRIに残って就職したんだ。

 

Q.仕事内容について教えてもらえる?

A.僕がいた部署では、Wifiを使ったポジショニングシステムを開発していた。位置情報っていうとGPSが有名だけど、Wifiポイントを使って利用端末の位置を特定するこも可能なんだ。特に屋内とか都市部ではWifiを利用した方が精度がよかったりするよ。セールスした顧客は、ソフトウェア開発者やヘルスケア関連の会社だね。例えば、ケアが必要なお年寄りの位置を把握するために利用するとかね。僕はこの開発チームでプロジェクトマネージングやプリ・セールスを担当したよ。

 

Q.その間に結婚もしているよね?

A.うん。社内恋愛だね。部署は違って、彼女は海外の半導体会社を担当するセールス部門にいたんだけど、友人の紹介がきっかけで付き合うようになったんだ。2008年に結婚して、今は子供が二人いるよ。妻は今でもITRIに勤めているよ。

 
 
 
そして北京へ

  

Q.中国に来た理由は?

A.台湾にとって中国はどんどん重要になってきているから、中国に来てこっちで何が起きているのか自分の目で確かめてみたいと思ったんだ。僕の台湾の友人でも中国で働いている人はいっぱいいるよ。中国に進出している台湾企業も多いし、自分で起業した友人もいる。僕は、将来は中国と台湾の架け橋になるような仕事をしたいと思っているんだ。
 
 
 
 
<インタビューを終えて>

 短いインタビュー記事ではなかなか伝えきれないですが、ケビンはとっても温厚で面倒見のいい友人です。一緒に出掛けると、よく「実はここのレストランは台湾資本」「このモールも台湾系のディベロッパー」「このドリンクブランドも台湾の会社」みたいなことを教えてくれます。日本の商品や文化に対する関心も高く、先日一緒に北京の「さぼてん」に行ってきました。すると得意そうに「北京の「さぼてん」は台湾の会社との合弁。さっき話してきたマネージャーも台湾人だよ」と笑っていました。そんな彼を通して、中国と台湾そして日本の結びつきの強さに気付かされることが多いです。今回のインタビューでは、ケビンの若かりし頃の(今でも若いですが)ベンチャースピリットが垣間見れて、個人的にも興味深かったです。


Nao Ishikawa

投稿者について

Nao Ishikawa: 1977年 埼玉県出身。 筑波大学人間学類卒業後、2000年に海上自衛隊に入隊。 テロ対策特別措置法案に基づくインド洋派遣任務に従事した後、2005年に退官。 民間では、ITコンサルタントとして、顧客の業務改善に貢献。真っ赤に炎上した大規模プロジェクトを立て直すのが専門。 好きな言葉は「焼け石に水」。 2012年9月、長江商学院に入学。北京では大好きなブラジリアン柔術ができないけれど、毎朝、地下鉄で戦っています。