第3弾 東北の鋼鉄会社を舞台にした歴史物語

2016年8月30日 / 中国秀逸ドラマ



鋼鉄年代


~鋼鉄年代(全37集)~

第3回は鋼鉄年代をご紹介しますが、遼寧省にある“鞍山鋼鉄”を舞台にしたドラマです。ここは瀋陽から車で数時間のところに有りますが、中国でも有数の鋼鉄会社ですので、ご存じの方も多いと思います。私自身も以前出張で何度か訪問した事があり、何本もの煙突からあがる煙と、真冬の工場内の寒さを今でもよく覚えています。

ドラマの始まりは日本敗戦以降、この鋼鉄工場を先に接収、管理していた国民党と東北解放を目指していた共産党との戦いの場面から始まります。国民党は投降し共産党の管理下に入りますが、新国家設立で鋼鉄需要が高まる中、戦前日本が建設した鞍山鋼鉄は当時中国最大の鉄鋼生産拠点として政府から重要視されていました。

その中で工場長(陳国宝演じる尚鉄龍)の下に配属された日本人女性(松峰璃莉演じる鈴木加代)の鉄鋼技術者が登場するのですが、自らも満州で家族を失って一人中国に残り現地で力を尽くそうとする加代に対し、当初戦争の記憶から鉄龍の加代への風当たりは強かったのですが、加代の懸命に働く姿を見て両者の関係は信頼から愛情に変わっていきます。やがて二人は結婚を決意しますが、当時共産党幹部だった鉄龍が日本人との結婚するためには党組織の壁があり、最終的に二人は結ばれず加代は帰国します。

時代は移り大躍進政策のもと15年で英国を追い越す目標に向かって、鞍山鋼鉄工員の住居でも、集合住宅の中庭に土で作った炉を使っての鉄鋼生産が始まります。鉄くずは家から集めて来るのですが、土の炉での生産がうまくできるはずもなく、これを科学的でないと批判したもう一人の工場長(冯远征演じる楊寿山)は労働改造所送りとなります。その後の食糧難が更に工員の困難な生活に追い打ちをかけ、栄養不良で倒れる工員が続出しますが、皆が力を合わせて困難な状況を乗り切ろうとする姿は心を打たれます。

生活が困難だった時代を描いたドラマですが、家族、隣人、職場の人々が一体となって困難ぬ立ち向かう姿はとても心温まるものがあります。1950年代の日本やソ連、米国との関係、大躍進時代の土炉を使った鉄鋼生産や食糧難時代の糧票など、歴史的にも勉強になる材料が多く含まれています。また日本との関係では戦争直後に新中国建設に貢献した日本人がいた事に心打たれます。個性的な俳優陣、美しい黒竜江省の映像、そして音楽など本当に素晴らしいドラマに仕上がっています。

以上