第4弾 残留孤児と中国人家族の物語

2016年8月30日 / 中国秀逸ドラマ



小姨多鹤


~小姨多鹤 (全36集)~

4回目は“小姨多鹤”をご紹介します。ドラマは戦後中国東北地区に残された複数の日本人残留孤児が麻袋に入れられて町で売られている場面から始まります。そこに偶然通りかかった一家の父親(杜源演じる張石匠)が一人の孤児を買って帰るところから物語が始まるのですが、家族は戦争で被害を受けた多くの中国人の日本人への感情として、周囲の反感を大変恐れます。そこで家族の息子(姜武演じる張检)は、孤児を冬の川に捨ててしまおうとしますが、間一髪のところで母親(薩日娜演じる关小脚)が助けます。この19歳孤児の日本人(多鶴)を演じるのが孫麗という中国トップ女優ですが、多鶴は当時ソ連軍の参戦で混乱した東北から逃げる中で家族を失い、自らも重傷を負い瀕死の状態で売られていました。

やがて多鶴は日本人であることを隠して中国人として生きることになりますが、中国人父母の愛情を受ける一方で、日本兵の被害で子供の産めなくなった息子夫婦のために3人の子供を産み、更に家計を助けるため重労働に従事します。生活はとても苦しいのですが、子供たちと息子夫婦とともに幸せな日々を過ごします。3人の子供たちは真の母親が多鶴ということを知らず“小姨”と呼んで育ちます。

真摯に生きる多鶴の姿に周囲の中国人も好意を持つようになり、その後日本人であることが分かって差別を受けそうになる多鶴を助けるようにもなります。多鶴は自らも恋愛をし結婚相手まで見つけますが、思わぬ不幸に遭ってしまいます。そして1972年の日中国交正常化で思わぬ出会いが有り、子供たちも本当の母親を知ることになります…

“小姨多鹤”は北京で共同研究を行っている主任の方から、日本人への推薦ドラマとして紹介を受けたものです。中国で仕事をされている皆さんは感じる機会が有ると思いますが、お互いの意識の中に歴史的な話題にはなるべく触れない、触れにくい部分があります。しかしつきあいが長くなるにつれて、さまざまな話ができるようにもなります。

孫麗の演技は本当に素晴らしく思わず引き込まれてしまいます。戦前中国東北には日本人移住者が多く住んでいたために、他の地方にはない特有の歴史がうまれました。戦後中国人に引き取られた日本人孤児がどのような人生を過ごしたのか、中国人が日本人にどう接したのか考えさせられるドラマです。東北地方の美しい景色と音楽を背景に、戦争に翻弄されながらも、激動の時代を懸命に生きた中国人と日本人の愛情を描いた素晴らしいドラマです。

以上