The Edge #8

2016年8月22日 / The Edge




(写真)布団に包まる夫KPと息子SB。SBはいまだ夢心地。KPにパンツ一枚姿の写真を撮らせてと頼んだがあっさり断られた。

連載8回:旅3日目 ー 01

青白い光がようやく室内に差し込むか否かの早朝、三女JRは薪ストーブに火をくべた。枕元で枯れ木が燃焼する耳慣れない音に起こされた私は、隣に並ぶ3人を写真に収めようとカメラバックに手を伸ばす。厚手の布団から身を起こし冷気にさらすと、背中にブルっと身震いを感じた。布団に戻りたい衝動を抑えて三脚までたどり着くと、夫KPが布団からヌゥッと顔を出した。こちらを無言で凝視している。私は数枚シャッターを切った。するとKPが突然色白い二の腕を布団から突き出してポーズをとる。「寝るときおれはパンツ一枚だ」という夫KPの突飛な発言に私は吹き出し、三女と息子SBもケラケラ笑っている。ようやく娘CKも眠たそうな目を開けた。
 
朝はまずヤカンを持ち出し顔と手を洗う。この習慣は天山山脈でも麓の街でも同じだ。外へ出ると改めて周囲を壮大な自然に囲まれているのに気がつく。吸い込む空気は焼きたてのパンの香りを嗅いだ幸福のようで、つい鼻が持ち上がる。すると、「もう洗ったの?」と地面にしゃがみ込んだCKが催促するように見上げて言った。

朝食を食べ終えると,一旦長男JMの家へ戻ることとなった。川の氷面をすり足で前進していると、放牧されているらしいラクダや毛並みの良好な太った馬が点在しているのが前方に見える。腹部が丸々と膨らみ、栗色の毛並みは太陽光を鋭く反射している。ふと、私が暮らす北京市内の果物を売る荷台に繋がれた馬を思い出し、同じ馬ならこの谷がいいなと与えられる環境の不公平さを思った。

更に進むと今度はこちらを敵視している犬の群れに出くわした。足下の適当な石をすばやく拾った三女は、低く構えるその群れへ力強く投げ込んだ。それでも野犬か猟犬はうなりながら近づいてくる。拾う石も大きくなる。投げた数投が危険な集団をかすめていった。その瞬間、「行くよっ」と怯む犬群を置いて三女は駆け出した。

逃げ込むように次女ARの家へ辿り着くと、外では息子DNと弟2人が野鳥を捕る仕掛けで遊んでいた。もしや今夜は羊以外のものが食べれるのではとの期待が頭をよぎった。