薪割りをする手を休めたJMは、私と息子BNとJMのお姉さんの息子DNを部屋へ招き入れた。どうやら「仕掛け」をつくるみたいだ。釣り竿から垂らすテグスのようなものを、広げた両腕の間隔で噛み切る。その1.5メートルほどのテグスに等間隔で手のひらほどの輪っかを括りつけている。これで鳥が捕まるのか不思議に見守っていると、JMが作った輪っかに指を入れてみろとの指示。引っ張るとヒュッと輪っかが締まり指を捕らえた。「どうだぁ」と言わんばかりの笑みを浮かべるJM。相槌で答えたが実際の効用は半信半疑だった。幼いときに母方の祖父が家の前の運動場で釣り針にミミズを引っかけ、雀を獲っていたことを思い出した。釣り針も餌もないキルギス方法で捕れるならこれに勝るものはない。
我々は作ったばかりの仕掛けと羊の糞や干し草を持って裏山へ出かけた。石を投げるとバサバサと鳩ほどの大きさの鳥が飛び出した。お目当ての獲物らしい。長男JMは辺りを見回し適当な場所を選ぶ。仕掛けを置いて両端にその辺の重石を置く。持参した干し草と羊の糞で仕掛け全体をカモフラージュする。これで完了。
結局三女JRとJMの奥さんが戻ってきたときまでは仕掛けの出来は解らずじまいだった。JRの家へ帰宅するまえに夕方の斜光で切り取られた谷を撮影したく、家の裏手へ回ると、「キャー」っと仲良く並んで用を足していたJRとJMの奥さんに出くわした。慌てて目を伏せ、彼女達の笑い声を後ろに、視界から逃げるように崖を登った。この谷では無論トイレという固定の場所はなく、私もこの恥ずかしいご対面をなんどか体験していた。夕日は谷を囲む崖の陰陽を色濃く照らし出していた。