老大が帰ってきた
老大が日本から真っ黒に焼けて帰ってきた。
しかし日本での思い出に浸りすぎて、
こちらの学校の宿題のエンジンがかからないまま、
夏休みが終わりに近づいている。
親としては困ったことだけど、
それだけ日本が楽しかった、ということだろう。
私と老二、三は久々にひと夏を上海で過ごした。
老二や老三にとっては、上海の人たちとよりディープに触れ合うチャンスが多く、
友達も増え、思い出深い夏になったと思う。
そうしてふれあう中で見えてきた、上海の子どもたちの夏をご紹介する。
夏休み、どうやって過ごす?
上海の学校は6月末に終業を迎え、夏休みに入る。
9月の初めまでの、丸2か月が夏休みだ。
上海の子どもたちが夏休みに入る直前、
親たちはみんな、子どもたちの夏休みのスケジュールに頭を捻らせ悩ませていた。
「長い夏休み、子どもにどう過ごさせようか?」
親の悩みは世界共通のようだ。
上海には日本のように、夏祭りもなければ、花火もない。
中国の夏にはイベントがないのだ。
だからずっと、上海の子どもたちは何をして夏休みを過ごすのかしら?
なんて疑問に思っていたのだけれど、この夏、少しそれがクリアになった。
教育熱心な上海のお母さんたちは、この長い休みを乗り切るために、
子どもたちを短期や長期と、様々なスケジュールの塾や英語学校のサマースクールに参加させようと、
ネットでの検索やお母さん同士の情報交換に余念がない。
それでも夏休みの最初の頃は、
普段忙しく友達とゆっくり遊べない上海の子どもたちだから、親たちも何も言わず、
近所の子どもたちも老大と一緒に朝から晩まで遊びまわっていた。
やがてそれぞれのスケジュールが入ると、一人、また一人と遊び相手は少なくなっていく。
就学前の子どもたちには、スイミングスクール、絵画教室、ピンイン班などが
人気があるようで、どれも一応見学したことがある。
特にスイミングスクールのトレーニングが日本のそれと比べて
超スパルタなのには驚いてしまった。
自然と触れ合うチャンスのない子どもたち
夏の子どもたちの遊びといったら、海水浴、虫捕りなどといったイメージが
私にはあるが、上海では、自然に触れる機会は少ない。
沿海都市なのに、あまり海水浴にいく、という話も聞かない。
まぁ、これは近郊の海の色(茶色)を見ればちょっと納得がいく。
虫捕りなどして遊ぶ習慣もないようで、
以前、老大が街中で偶然捕ってきた「クワガタ」をみて
近所のおばさんが、
「これは馬のフンの中にいる虫に似ているわ…(なぜに馬のフンなのだろう?)」
と言って、コソコソと避けるように去っていった。
近所の子どもたちも見たこともない虫にびっくりして後退りするばかり。
クワガタを育てている我が家は奇妙に思われただろうか?
それでも毎年マンション内の池におたまじゃくしやメダカが放流されると、
子どもたちはこの時は!とばかりにバケツなどをもってすくっている。
しかし、「中国語でこの魚なんて言うの?」と近所の子にメダカを差して問うと、
大真面目に「小魚!」と答えが帰ってくる。
隣に付き添う大人たちは子どもの安全に目をくばるのに必死で、
魚どころではなさそうだった。
子どもたちの娯楽から見える、変わる上海
変わったな、と思うのは、ごく自然にプール遊びをする子どもたちが増えたこと。
5年程前までマンション内のプールを利用する子どもたちは本当にまばらで、
就学前の子どもたちだと下着のパンツでプールに入る子も多く、
軽くカルチャーショックだったことを思い出す。
数年ぶりに利用した公共のプール(室内)も
設備が綺麗になり、ずいぶんと衛生的になっていた。
年々気温が上がっていることも影響しているのかもしれないが、
色とりどりのかわいい水着を着て、楽しそうにプール遊びをする上海の子どもたちを見ていると、
豊かになった、と思わされる。
今年、一般サラリーマン家庭が多い周囲でよく聞いたのは、
「香港ディズニーランドに行く」という言葉だった。
上海から来た人だけで、香港ディズニーランドを埋め尽くすのでは、と思うくらいだ。
日韓への船の旅、青島のリゾート地など、行き先も様々だけど、
子どもたちの夏休みの旅行が豪華になっているのは
私の気のせいではないと思う。
夏休み、世界中に上海のファミリーが散らばる日が来るのも、
そう遠くはないことだと思った。
tako: 1998年より上海在住。留学後、現地ベンチャー、フリーコーディネイター、駐在員を経験。現在、専業主婦。 ローカル生活の中で「小さな幸福」を見つけながら、地道に暮らす。 家族は、現地で起業している夫と現地校に通う息子が三人。趣味はネットリサーチ。