第2回 清華大学MBA Mike(男性)29歳 ー 医療業界コンサル、市場制覇の野望

2016年9月11日 / 清華大MBAリアルトーク

クラスでは「Mr.ハンサム」と呼ばれている彼。突然の写真撮影にも関わらず、気さくに応じてくれました。さすがMr.ハンサム!

<プロフィール>
1982年陕西省生まれ。両親は共に政府系公務員。父親が中国有数の美術協会の会長ということもあって、当時としては珍しく、父親は彼に画家になってほしいと望んでいた。しかし、彼は天津大学で薬学を学び、卒業後、医療系コンサルティング会社に就職。その後、3M、ジョンソン&ジョンソンを経て清華大学MBAに入学。今はまだ入学したばかりなので勉学に集中しているが、すでに会計士のクラスメートと一緒に医療系の経営コンサルティング設立の準備を始めている。

 
 
Q.薬学部を卒業したのに、なぜ製薬会社に就職しなかったんですか?

薬学部にいる学生のほとんどはそのまま大学院に進学します。しかし、私はあくまでビジネスに興味があったので、当初は医療・製薬業界で仕事を探そうと思っていました。ところが、調べれば調べるほど、中国における医療・製薬業界で働くことに魅力を失ってしまいました。
まず1つ目の理由は、研究職ではなく、ビジネスの第一線で活躍したかったので、営業職という選択肢が濃厚でした。しかし、中国における医療・製薬業界での営業職は、病院の先生と時には袖の下を使うなりして個人的にも仲良くして製品を買ってもらう、という傾向が根強くあります。当時の私はまだ若かったので、そういう仕事には気が進みませんでした。
2つ目の理由は、私が就職活動をしていた2006年、中国政府による医療・製薬業界への規制が強化されたため、業界が不景気に陥っていました。元来、医療・製薬業界は政府の監督が強い業界ですが、実は当時、製薬業界の監督官庁である国家食品药品监督管理局(SFDA)の局長が汚職の罪で逮捕され、さらに規制が強化されたため、製薬業界の景気が一気に冷え込んでしまったんです。

 
Q.だから、医療系のコンサルティングに就職したんですね。

そうなんです。就職活動をしていた当時、偶然Emergoというアメリカの医療系コンサルティング会社の中国法人社長と出会い、意気投合して入社することに決めました。Emergo中国法人の主なビジネスは1.法律や認可に関する政府当局との折衝に関するコンサルティング 2.中国企業による海外進出、もしくは海外企業による中国進出に関わるコンサルティング 3.HRやマーケティング等の所謂経営コンサルティング です。当時のEmergoは中国にコンサルタントが60名いて、中国国内において、アメリカ系で最大手の医療系コンサルティング会社でした。

 
Q.しかし1年半で転職していますが、やはりコンサルティングの仕事って大変でしたか?

A.いえいえ、非常に充実した日々を過ごしていました。3か月の社内研修と社長によるメンターシッププログラム後、いきなり現場に放り込まれましたが、その3か月後には営業成績第一位を獲得することができました。ちなみに、3か月の研修で約半数の10名の新卒社員がクビになり、さらにその3か月後には会社に残っている人はほとんどいませんでした。あそこまでやれたのは、顧客の幹部にあっても物おじせずに意見を言えること、それと、日本人と違って中国人はしたがらないですが、週末含めた時間外勤務も厭わずに仕事ができること、こういった私の性格が仕事に合っていたからじゃないでしょうか。

 
 
3Mのトップポジション、認可取得で中国企業に勝つ

 
ではなぜ3Mに転職したんですか?

3Mは前職のコンサルティング会社の顧客だったこともあり、社内の雰囲気については事前に多少知っていました。さらに給与が3倍、ポジションも経営幹部を除く中で最も上位のスペシャリストというポジションでのオファーだったので、転職することにしました。また当時から最終的には医療業界でコンサルティングという仕事をやっていきたい、という気持ちがあり、そのためにはFortune 500に名前が載るような会社で実務の経験を積みたいという思いもありました。
3Mでも前職に引き続き、中华人民共和国卫生部(MOH)や国家食品药品监督管理局(SFDA)といった当局との許認可に関する折衝に関する仕事をしました。
特に印象に残っているのは、「N97」という工業用マスクについてです。中国ではSARSや鳥インフルエンザの脅威が時々報じられますが、2008年にも鳥インフルエンザの脅威が伝えられました。「N97」はウイルスの飛沫感染対策に有効ということで売り出そうとしていたのですが、当局からの認可に時間を要していました。そこで、私を含め数人でプロジェクトチームを組み、今までのネットワークをフル活用して、5か月で認可を得ることができたのです。もちろん、政府もウイルス性の病気に対して対策を急いでいたこともありますが、中国企業が同種の商品の認可に2年もかかっていたことからすると、驚くべき短時間での認可でした。その甲斐あって、ウイルス対策マスクとしてほぼ独占状態、売上、利益率とも過去には類を見ないものとなりました。
順調にキャリアを積んでいましたが、最終的には医療業界のコンサルティングをやりたかったこと、そのためにファイナンスや会計等の知識が不足していたこと、上司や同僚にMBAをとっている人がいて、彼らから学ぶことが本当に多く、自分もMBAを取得したかったこともあり、清華大学のMBAを受験し、見事に合格することができました。

 
Q.あれ?たしか3Mと清華大学MBAの間にジョンソン&ジョンソンで働いていましたよね?

そうなんです。清華大学MBAの入学まで1年間あったので、その期間に3Mを辞めてジョンソン&ジョンソンで働いていました。3Mはどちらかと言うとイノベーションを重視する会社ですが、ジョンソン&ジョンソンはマーケットシェアを重視する会社なので、どのように中国で売り上げを伸ばしているかに興味があり、1年間だけ働いてみることにしたんです。入ってみて、この会社はやり方がうまいな、と思わされました。彼らは病院の先生が必要としているモノを、上手く提供することでシェアを伸ばしています。何だと思いますか?それは勉強の機会です。高学歴の中国人が憧れるアメリカの大学院への留学を斡旋したり、逆にアメリカから中国に有名な教授を招いて授業を行ったりしているのです。アメリカの会社ならではの機転の利いたやり方ですし、正攻法で中国人のハートをつかむ上手な方法だと感心しました。

 
Q.最後に今後について教えてください。

現在クラスメートの会計士と一緒に医療系コンサルティング会社を設立する準備をしています。現在中国は高齢化も急速に進展していて、医療・製薬業界全体の底上げに対する政府のバックアップも増加しており、まさにこれからが勝負という時代になりつつあります。ちょっと詳しいことをお話しすることはできませんが、私の経験とネットワークを活かして、許認可プロセスを中心としたコンサルティングから始めようと思っています。


Hitoshi Kono

投稿者について

Hitoshi Kono: 1981年鹿児島県出身。 一橋大学経済学部卒業後、2005年に新卒で外資系金融機関に入社、金融派生商品の開発や法人営業を担当し、2010年9月に退社。 世界一周旅行をエンジョイした後、2011年9月より清華大学MBAに入学。 北京では大好きなサーフィンができないけれど、出会いと発見に満ちた中国生活を満喫中。