第7回 清華大学MBA Leon(男性)26歳 ー ビジネス界の「太子党」、人脈をフル活用して起業準備中

2016年9月11日 / 清華大MBAリアルトーク

日本のマンガ「スラムダンク」の影響でバスケットが大好きというLeon。いつもクールで、クラスでもNo.1のオシャレさんです!

<プロフィール>
1985年北京市生まれの一人っ子。父親は時価総額中国No.5(2012年5月22日現在)の中国石油化工(シノペック)の華北地区(中国北部)副社長、母親は北京市某区の副区長。中国No.1高校との呼び声が高い北京师范大学附属实验中学(高校に相当)卒業後、北京邮电大学、中国电信(チャイナ・テレコム)を経て、清華大学MBAに入学。今夏よりマサチューセッツ工科大学(MIT)とのダブルディグリー・プログラム(2年間で清華大学とMITの2つの学位を取得するプログラム)のためアメリカに出発予定。

 
 

Q. Leonはオシャレで自然体、どちらかと言うと外国人に近い雰囲気ですよね。どういう学生時代を過ごしたのですか?

一般的に中国の中学生、高校生は課外活動もせず、ひたすら勉強をするのですが、私の場合は遊びまわっていて、中学生の時には両親から途中でより厳しい学校に編入させられる程でした。高校では名門の北京师范大学附属实验中学に入学しましたが、高校の場所が金融街や官庁に近い西单という場所にあり、且つ中国のトップ校であったため、同級生の多くは政治家や富裕層の子弟(中国語:太子党、富二代)でした。中国では「富二代」というと、努力もせず、親の七光りで社会的な地位が高いために嫉妬や批判の対象になりがちです。しかし、少なくとも私の同級生は非常に勉強熱心で、多くの友人が海外の大学に進学し、現在では官僚になったり、起業したり、投資銀行やコンサル業界で働いていたりと様々な業界で活躍しています。高校の同級生はいまだに最も重要な友人たちであり、中国国内だけでなく世界中に華人ネットワークをもっていることは自分の強みの一つだと思います。

 
Q. 中国社会では人脈が大事だと聞きますが、学生時代から意識的に人脈をつくるものなんですか?

私は特に意識していました。例えば、高校生の頃からインターネットビジネスに興味があったため、北京邮电大学の信息管理学部(情報経営学部)に入学、大学では学級委員長になったり、学生会に入会しスポーツや社会活動(ボランティアやインターネットビジネス勉強会)等を企画したりして、自分自身の成長と人脈づくりに努めました。
また大学4年の2007年1月から、就職前提に就活の第一希望だった中国电信(チャイナ・テレコム、中国最大の固定通信会社)の北京オフィスでインターンシップをする機会を得ることができたのですが、ここでは両親と友人の人脈を駆使して、自分が希望する法人営業部への配属と、給与水準も初任給150,000元/年(当時の日本円で約225万円。尚、大卒初任給の北京市における平均は約36,000元/年)という破格の待遇を得ることができました。

 
 
Youku(优酷)、Tudou(土豆)、CCTV!中国有数のコンテンツ企業を顧客に

 
Q. なぜ法人営業部を希望していたのですか?

2007年当時、中国のインターネット業界は発展期にあり、特に動画共有サイトが急速に人気を集めていました。一般的に動画共有サイトが使用する通信量は非常に大きいため、それに応じて十分な帯域幅(通信などに用いる周波数の範囲)を確保する必要性があります。私が就職した中国电信はその帯域幅の使用権を持つ最大の国有企業であり、インターネット業界では強い影響力を持っています。そのため中国电信の法人営業部は大手インターネット事業者の社長や役員に直接アプローチできる格好の部署だったわけです。

 
Q.具体的にどのような会社を担当しましたか?

インターンシップ開始後、3か月間のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレイニング)を経て、動画共有サイト向けの法人営業部に配属され、最初から動画共有サイトの最大手であるYouku(优酷)を担当しました。彼らのビジネスモデルはアメリカのYoutubeと同じで、採算度返しでもいいからまずは視聴者数を増やすという戦略で、基本的には赤字体質です。そのため値引きの要求をされることが多いのですが、一方で、「国家の資産を安売りしてはいけない」という政府方針があり、結局は直接的な値引きの代わりに付随する製品やサービスを格安で提供することで顧客の要求に応えていましたが、その板挟みで悩まされることも多くありました。

 
Q.担当先は1社だけだったのですか?

Youku以外の顧客は新規開拓する必要がありました。UGC(ユーザーによって作られたコンテンツ)最大手の一つであるKu6.com(酷6网)は北京に本社機能があり入社1年目に新規契約を獲得できました。しかし、他の多くの新興系インターネット企業は上海や広州に本社があり、基本的に華南(中国南部)は中国联通(2008年に帯域幅を保有する中国网通を買収)が圧倒的シェアを誇っています。更に、社内の上海オフィスや広州オフィスとも新規顧客の奪い合いをしていました。そこで友人や担当先の役員の紹介で、当時すでに動画共有サイトの最大手の一つに成長しつつあったTudou(土豆)にアプローチし、それこそ接待から、付加サービスの一部無料化、通信品質の保証までを提供することで、競合である中国联通から契約を奪い取ることに成功。その後も人脈を駆使してTOM.COM、S6.cn(顺六中国网)、iQIYI.com(爱奇艺)といったインターネット系から、CCTVといった大手テレビ局まで、多くの顧客を獲得することに成功しました。

 
Q.なぜ清華大学MBAに入学したのですか?

近い将来に中国国内で起業を考えていて、中国电信で働いてきた約4年半の経験を体系的に学び直したかったのと、特にファイナンスや会計など知識的に不足している部分を補いたかったため、2011年8月に中国电信を退職、その翌月に清華大学MBAに入学しました。最初は起業の準備をしながらMBAの勉強をしてようと思っていたので、パートタイムMBAに入る予定でしたが、入学直前に、IT分野で有名なMITに入学するチャンスのあるIMBAに変更しました。卒業後は、前職での社内人脈や顧客ネットワークを活かして、中国电信から帯域幅の使用権を買い取り、それを小口化して、起業したばかりのインターネット系ベンチャー企業に販売する会社を始める予定です。


Hitoshi Kono

投稿者について

Hitoshi Kono: 1981年鹿児島県出身。 一橋大学経済学部卒業後、2005年に新卒で外資系金融機関に入社、金融派生商品の開発や法人営業を担当し、2010年9月に退社。 世界一周旅行をエンジョイした後、2011年9月より清華大学MBAに入学。 北京では大好きなサーフィンができないけれど、出会いと発見に満ちた中国生活を満喫中。