無錫編 その6ー 無錫のローカル病院にデビュー その1



(写真)病院ではゼムクリップでガーゼを止めてもらいました。医療用具としても活躍するゼムクリップ!

うーたん、蚊帳に興奮して負傷する

 無錫に来てからの半年間、幼稚園にも通ってなかったせいか、うーたんは病気ひとつせず元気いっぱい。なので私は病院に関する情報収集や下調べをあまりせずにいました。そんなある日、うーたんがやらかしたんです…。

 夏も近づき、蚊が出始める頃。無錫では夏には蚊帳を吊って寝るのが一般的です。私自身も蚊には神経質、まして寝ている間に蚊に起こされるのはとっても不愉快だし、蚊帳をつけると涼しげでなんとなくセレブな気分になるかも?と蚊帳を購入しました。帰宅後早速蚊帳を開封すると、それを見たうーたんは大興奮。私と相方がベッドに蚊帳を設置している間、何度も蚊帳に入ろうとしては追い出されていました。
 やがて、ようやく蚊帳が形をなしてきたのを見計らってうーたんは蚊帳の中へ、ベッドの上でトランポリンのように飛び跳ねて喜んでいました。その時です。
 危ない!勢い余って、うーたんはベッドから転落。運悪くそこにあったサイドボードの引き出しの取っ手に後頭部をぶつけ、出血…。

 初めてのうーたんの負傷で、私たち夫婦は大慌て。後頭部から出血しているから、髪の毛で傷口の深さはよくわからないし、わかったとしても縫うケガなのかどうかも判断つかない。頭を打った=何かまずいんではないか?と夫婦でケンカになり、第三者の意見を求めるため、両実家の母にそれぞれ電話をかけて相談までしました。どちらの母も答えは「大したことないよ~」でしたが、私たちはそれに納得できず、病院に行くことにしました。

病院ってどこにあるの?

 病院に行くにしても、情報収集を十分にしていなかった私たち。どこにいけばよいのやら。中国では外国人とVIP専用窓口をもつ病院があるのですが、うーたんがケガしたのは、夕食後。たとえその病院に行ったとしても夜間診察の時間です。近所の人民病院に日本語の話せる看護師さんがいて、お友達から紹介だけは受けていたので、とりあえず彼女に相談しました。しかし、この時間では外科を診ることはできない。彼女の勤務先ではなくもう少し遠い人民病院に行くか、家から徒歩圏内にあるローカル児童病院に行ったほうがいいとアドバイスを受けました。
 急いで、うーたんを連れてその人民病院に向かおうとタクシーを探しましたが、渋滞する時間帯でなかなかタクシーがつかまらず、結局徒歩でいける児童病院に向かうことに…。

 その病院は、お散歩でよく通る道沿いにあり、外見は少し古ぼけた感じです。昔、友人が中国で入院したときにお見舞いに行ったことがあるのですが、現地の人が利用する診療、待合いスペースは、なんというか古ぼけていて照明も暗い。廊下に病人がたくさん横たわってもいるさまには、ちょっとカルチャーショックを受けたものです。
 私と相方は共に中国経験が長いのですが、日本人の医者がいない街に住んだことはありません。ましてやローカル病院を利用したのは初めてでした…。

「でも打ってください」

 病院に着いたら、まず受付で薄いノートを購入、そこに住所と名前を記入します。このノートはカルテ。中国ではカルテを自分で保管するのが一般的なようです。それから、何の診察に来たかを受付に伝え、診察代を支払います。
 そうです。こちらの病院は前払いなんです。日本とは違う受付システムに戸惑いながら、その診療代の領収書を片手に案内された診察室に向かいました。診察室を覗くと、先生が患者を看ているすぐ後ろに何人か待っている人がいるのが見えます。私たちも順番取りのため、診療室に入りこみました。患者のプライバシーもなにもあったものではありません(笑)。

 そんなこんなでうーたんの順番に。お医者さんが髪をかき分け傷を確認、5センチほどの切り傷で深いように見えました。
「先生、どうですか?」と聞くと
「傷は大したことないとは思うけど、念のため、破傷風のワクチンを打ちましょう」
「え?!半年前に日本で何回か破傷風のワクチンを打ったので、大丈夫だと思うし、打ちたくないです」
「でも打って下さい。」
「……」

 室内でのケガだし、ワクチンを打つ必要性があるとはまったく感じられなかったのですが、やはりお医者さんの言われることなので、そのままワクチンの代金を払いにいき、また領収書を持って、今度は注射室に向かいました。病院の建物も古ければ、注射室も古い。使いふるした木の長椅子が、まるで昭和初期の駅の待合室のように並び、それぞれの椅子の上には点滴を吊るすためのフックがついています。うーたんも頭を負傷してちょっと元気がなく、私たち両親もこの環境に不安感でいっぱい…。うーたんはどうなってしまうのでしょう。

 注射室で看護師さんに呼ばれ、ワクチンの説明を聞くと、2回に分けて打つとのこと。1回目はおしり、2回目は手首のところです。2歳の子どもには痛くて負担の大きな場所。私たちが「だったらやめる」と言っても、時すでに遅し。案の定うーたんは大泣き大暴れ…。

 今から考えると病院になんか行かなくてもいいほどの浅い傷、ただ私たち夫婦が未熟なばかりに、うーたんはえらい目にあったというわけです。先生たちのおっしゃる言葉はなんとなく聞いてわかるけれど、こちらの聞きたいことがうまく伝わらない。さらに診察を受けるのも点滴をうけるのも血液検査を受けるのもすべて前払い。それも先生に指示をされてから支払いにいくことになるので、病院内をいったりきたりすることに。病気のこどもを抱えて病院に行くのは、外国人であるという条件以上に、保護者一人の付き添いでは至難の業だと感じました。家路につき、後頭部のガーゼの付け方を見てうーたんには悪いけど思わず失笑してしまいました(写真参照!)。


Yukacchi

投稿者について

Yukacchi: 無錫在住の日本人駐在員の妻。家族構成は夫と4歳の娘。 いつの日か必ずやって来るであろう帰国命令に怯えながら(笑)、『日々楽しく』をモットーに『太太』生活を満喫中。現在ハマっているのは、中国茶藝と中国ドラマ。 中国滞在は3度目、通算5年。大阪府出身。