上海編 その11ーかすんだ街で



(写真)朝もや…それともPM2.5!?霧の向こうにはビルが立ち並ぶ


老大のマスク

PM2.5が騒がれて久しいが、我が家も遅ればせながら、毎朝とあるサイトで数値をチェックするのが習慣になってきた。
老大はその数値と朝の風景を見ながら、マスクをつけるかどうかを自己判断して登校するようになった。スクールバスにはマスクをつけている子などいないのだけれど…。
老大は「みんななんで気にならないの?こんなに喉がイガイガするのに〜」と、ひとりPM2.5対応の大げさなマスクをつけて乗り込んでいるが、おっちょこちょいの老大のこと、よくマスクを学校に置き忘れて、私に怒られている…。

さわやかマラソン青年のつぶやき

ほぼ毎朝、エレベーターで出会うジョギング上海人青年がいる。いつもエレベーターで、市場から買い物帰りのおばちゃんたち相手に上海語で親しげに話してしている姿をみると、いまどき珍しい好青年だな、と思う(私もおばちゃんみたい)。
うちのマンション棟は2基のエレベーターがあり、ひとつはガラス張りになっていて外が見えるようになっているのだけど、この朝は向かいのビルでさえかすんでいて、私は思わず「今日もまた空気が悪いよ…」と独り言のようにつぶやいてしまった。
それにすばやく反応してくれたのがこの青年で、パッとポケットからスマホを出して「あ〜、今日は数値が高いよ」と言った。
彼の言う「数値」がPM2.5の事だと気付いた私が、「どこのサイト見てるの?」と聞くと「○○領事館のだよ」という答えが返ってきた。
自分がチェックしているサイトと同じだったので、親近感がわき、話しかけようとした直後、またさわやか上海人青年はスマホを取り出して、パパッと手を動かしたあと、私の方を向いて笑った。
「中国のだと、数値が低いよ。これだから信じられやしない」
ネット世代の若者たちの言葉には、しばし国への不信も垣間見えることが多くなってきたことに気づくこの頃。
傍で聞いていたおばちゃんは、何を話しているのかわからないようで、怪訝な顔をして私たち2人を見まわしながら、エレベーターを降りて行った。
こんな空気の悪い中、毎朝ジョギングを続けている青年の身体も他人事ながら気になる…。早く彼が気持ちよいジョギングできる朝を迎えられる日がくればいいと願うばかり。

かすむ運動場

普段、老大はスクールバスで学校まで通っているのだが、
今学期から毎週木曜日の放課後、学校側から提供される「興趣班」と呼ばれる選択授業でテコンドーを習っているので、毎週老二、三を連れて老大の学校まで足を運んでいる。
この木曜日も老二と老三を連れて、彼の小学校に乗り込んだ。地下鉄の駅から降りた途端、ちょっと「埃っぽい」気がした。歩いて数分、小学校に入ると、老大はテコンドーを終えていて、運動場で遊んでいた。
運動場に入ると、目の前のさえぎるものもない運動場が白くかすんで見えた。
なんだか喉もどんどん痛くなってくる。これは大変だ、と老大を呼び戻して、そそくさとその場を去った。運動場ではまだ20人以上の子どもが遊んでいた。
帰ってからあるサイトでPM2.5をチェックすると、数値は180以上。すでにレッドゾーンを超えて、パープルゾーン。
日本で外出を控えろという数値が35と聞いたから、これがどういう程度のものかわかってもらえるだろうか。
その直前、老大の学校の教室には空気清浄器(親側が寄付)が取り付けられ、植物が増えた。
子どもたちが遊ぶ運動場がコレでは、本当に心配だ。
ただでさえ少ない体育の授業、屋内でさせてもらえればいいのだけど、これを理由に体育の授業が減らされる可能性もあるだろう。
中国の学校では、何か授業に遅れがでると、一番に体育の授業がつぶされてしまう。これ以上子どもたちの楽しみが削られるのはかわいそうだ。



tako

投稿者について

tako: 1998年より上海在住。留学後、現地ベンチャー、フリーコーディネイター、駐在員を経験。現在、専業主婦。 ローカル生活の中で「小さな幸福」を見つけながら、地道に暮らす。 家族は、現地で起業している夫と現地校に通う息子が三人。趣味はネットリサーチ。