第2回 タオバオ!宝探し!

2016年8月26日 / Tokyo Panda



(写真)ニットコート 150元 / ワンピース 130元 / 靴 370元 / ネックレス 20元 / カチューシャ 10元 / 水玉タイツ 16元 / すべて@タオバオ(1元=約13円)/ ―瀋陽駅の前で 瀋陽駅は東京駅をモデルとして建設されました―


瀋陽は、日本人にとってはあまりなじみのない場所かもしれない。私が瀋陽に来たのは5年前。その時思ったのは、想像していたよりも生活できそうな感じだということ。
 ちなみに、瀋陽は北京から新幹線で4時間ほど北に行ったところにある。東北三省(遼寧省、黒龍江省、吉林省)遼寧省の省都で、人口は700万人強くらい。外国人も徐々に増えてきてはいるが、まだまだ昔の中国が残る。外国人からすれば、かなり中国的な街でないか。
 5年前は、アパートの階段そこら中に冬の間白菜を積み重ねて保存していたり、道にはロバが行商に連れられていたりした。ある程度のカルチャーショックはあったものの、アパートだって1000元(日本円約1万3千円)も出せば、2DKでキレイめな内装の部屋を借りることができた。
 日本人の先輩とのシェア生活が始まった。
 私よりも1年先に来ている先輩が、中国では「ふつう」が最高のほめ言葉だということを教えてくれた。食事にしても衣類にしても、よけいな味つけがされていなかったり、日本では見られないようなださいデザインでも大げさにスパンコールがついていなかったら、それは「よい」の部類に入ること。
 瀋陽に来た当初は、食べることも洋服も大好きな私には、何もかもが受け入れがたかった。しかしそこは妥協するしかなかった。というか、それしかないのだから、妥協せざるを得なかった。

 それよりも、中国語を上達させる必要があった。大学の授業に慣れるのに必死だった。言葉がわからないというのはすごくストレスが溜まるし、時間がもったいないような気がする。せっかくみんなと同じ時間を共有しているのに、中国人クラスメートたちが笑っているところで笑えない。先生が解説していることがわからないのでは、授業を受けている意味があるのかさえ疑問だった。どうにかして中国語の問題を改善する必要があった。そんな思い悩む日々を送っていたときに、クラスメートで華僑の子がタオバオというショッピングサイトの存在を教えてくれた。

眼からウロコ。買い物から中国語マスターまで、タオバオ一色!

 もともとインターネットに詳しいわけでも興味があるわけでもなかった私は、そのお薦めのサイト、タオバオをまず見てみた。見て思ったことはその商品数の多さだ。本当に「タオバオ(淘宝)」という言葉の意味どおり、宝探しをしているようだった。諦めていたオシャレをすることが、タオバオでは問題なく可能だった。大げさにスパンコールがついている洋服どころか、その年の流行を網羅した洋服をはじめ、とにかく何でも売っていた。
「眼からウロコ」とはまさにあの瞬間のこと。私のタオバオに対する熱は一気にヒートアップした。最初は知らない単語ばかりで解読不能だったが、写真と言葉が一体に書いてあることによっておおよそ単語の意味は推測できた。自然とタオバオが私の中国語の教科書になっていった。中国人が普段使う単語が学べるのがとても魅力的で、毎日毎日買うでもなく眺めていた。一日に何時間見てもまったく飽きないうえに、見れば見るほどいろいろな商品が探せて終わりがこないのだ。

 慣れてくると、この生地でこの程度の値段なら、中国の◯◯地方産だとか、そのようなこともわかってくる。そうすると、バイヤーでもないのに「買いつけができそう」とか、「自分のお店だって出展料が無料なのでできるぞ!」とか、若者にとって夢のある場所であることがわかった。

 また、チャット機能がついているので直接中国人と会話ができる。私の知りたかったアパレル用語やネットの流行語など、勉強尽くしだったのだ。これぞ一石数鳥。中国語の勉強はできるし、中国人とのチャットは楽しい。安くてかわいい掘り出し物だらけ。値段交渉もできる。仲よくなれば、たわいもない話や「私あなたのお店で買った服がすごく気に入って……」などなど、さまざまなチャットが日々行われているのだ。アパレルの勉強などしたことがない私が、知らぬまに店主と仲よくなって。原価や仕入れ値など教えてもらうこととなった。
 私の中国語が飛躍的に伸びたのはいうまでもないが、買い物から語学までとことん「タオバオのおかげ」になっていった。タオバオで中国での消費の感覚をつかんだ私は、「タオバオならこれはいくら、日本ならこんなに高いのにタオバオならこの価格で買える!」といったふうにタオバオ価格で計算するクセがついてしまった。そして、街では何も買えなくなっていったのだ。


Tokyo Panda

投稿者について

Tokyo Panda: 医学部実習生 ファッションブロガー   東京都出身、瀋陽市在住。 2010年中国で医科大学を卒業し、現在は実習生として活動する傍ら、自身のファッション・生活スタイルをブログで紹介し、中国全土で多くの女性ファンを集める。 日本でもその活動・影響力が注目され、若者文化を通じた「日中親善大使」を目標とし、今後の活動が注目される。