第3回 日本人バッシングの洗礼、半年で2000人のブログ仲間

2016年8月26日 / Tokyo Panda



(写真)カーディガン 130元 / Tシャツ 100元 / スカート 218元 / バッグ 79元 / 靴 158元 / すべて@タオバオ(1元=約13円)―瀋陽の歴史ある文化宮(劇場)の前にて、ここで中国式漫才を見ることができます―


タオバオ漬けな毎日の中で、たまたまひとりの女の子の写真をタオバオのショップ内で発見した。彼女の名前を百度(バイドゥ:中国最大の検索エンジン)で検索してみると、すぐにBBSがヒットした。そして私は中国のBBS文化を目の当たりにした。ふつうの中国人女性たちが自撮りや自分の買った洋服たちをおしげもなく写真におさめ公開していたのだ。
 
 日本にいたときはBBSで遊んだことなんてなくて、というかネットで遊ぶということ自体したことがなかった私にはとても衝撃的だった。
 私もタオバオで買った商品を紹介してみようと、ふと思った。
 
 すぐに2日ほどBBS研究をした。どのように写真をとればいいのか、どんな感じで返事を書けばいいのか、何を求めて女子たちはこのBBSで遊んでいるのかなどなど。その中で気づいたのはまずみんな個性的なハンドルネームを持っているということ。せっかくなら、私も自分らしくて目的にあった名前をつけてみようと考えた。
 
 まず何よりも東京出身だから、東京という街のもつ世界におけるブランド力でTOKYOを入れるのは必須だった。次にくる単語……。なかなか想い浮かばず彼氏に相談してみたところ、即答で“PANDA”と返ってきたのだ。私がなぜ?と聞くと、
「だって顔がパンダだし…」
 とのこと。苦笑。
 パンダって、中国の国宝で、ストレートに中国を連想させる。
 
 せっかくなら日中友好を兼ねたオシャレ大好き女子をアピールしたかったので、即決でハンドルネームが決まった。TOKYO PANDAである。そして自分の選んで買った気に入った服を紹介してみようと慣れないなりにまずはコーディネートだけ5点ほどBBSに載せてみた。1分もたたない内に“どこで買ったの?”など、さまざまなコメントが届くようになった。初めての経験が本当におもしろくて、今はMr.Pandaとなっている彼氏と一緒に興奮した。そして私のBBS生活が始まった。
 
 BBS初投稿数時間後、サイトを開いてみるといきなり強烈な写真が飛び込んできた。南京大虐殺のときの写真を思わせるもので、正直かなりえぐかった。TOKYO PANDAという名前にし、“日本人で中国に何年在住です!”とBBSに書いたために日本人バッシングが始まったのだ。  
 
 過去の日中間の争いの写真をBBSのコメント欄に貼られ、ファッションと全く関係のない日本批判のコメントが数十もつき、3日ほどで炎上しかけてしまった。バッシングに対しては想定内だったので動じることもなかったが、ファッションのサイトにそのような主旨の違う写真、コメントが殺到するのもいかがなものかと思い、どうやって対処するのがいちばん早いか考えた。
 
 BBSの下には運営サイドの電話番号が書いてある。とっさに私がとった行動は“直接BBS運営側に電話しよう!”である。電話をかけて、どうにかファッションと無関連のコメントをすべて削除するように頼んだところ、意外にも対処は早く、数時間ですべて消してくれ、そのあとは“日本人として歴史上的バッシング”はほぼなくなった。
 
 BBSにこんなことが起きてもやめなかったのは、想定内だったから。予期せぬことが起こればショックも相当大きかったかも知れない。でも、瀋陽にある9.18博物館などを見たこともあったし、ネットという環境で顔を合わせて話したことのない人たちが集う場所においてはそれも起こりうるという、私の中での想定内。

みんなが1位にしてくれた——かけがえのないコミュニティのメンバーたち

 BBSはブログと違ってさまざまなネット有名人たちが集う空間なので、訪問量もやたらと多い。私ひとりを目的に見にくるわけではなかったが、その中で仲よくなり交流するネット仲間が出てきた。その子たちと一気に交流したほうが時間も効率的だし、何より安くてかわいい洋服の購入場所などの情報量が何十倍にもなるということで、パンダコミュニティをネット上に3つほど開設。総勢750人程度のパンダファンたちの集いをBBS開始後半年ほどで設けた。毎日さまざまな一斉同時チャットがコミュニティ内でできる。親近感、一体感がわくのでより仲よくなれるのが魅力的だった。

 内容はほとんど、共同購入を一緒にするためのもの。“この洋服かわいいと思う?”とか、“これ買ったけど似合わないから売ります”とかその手の会話が中心になる。一緒に共同購入するなんていったらかなり熱狂的になって、みんなで人数をコミュニティ内で集めて、洋服、タイツなどの衣類、またおいしそうなお菓子類も共同購入した。人数が足りなければ他のコミュニティにもコメントを出したりして、人数集めをしたり少しでも安く買うためにみんな団結して買うものだ。

 もちろん人数不足になってがっかりすることもあれば、思っていたものと違うなどの苦情もある。慣れてくればそれも醍醐味になり、やはり“お買い物はやめられない”となるわけだ。そしてまた、女子同士仲よくなれば、ファンとしてか友だちとしてかわからないが、応援もしてくれる。

 私が一度参加したイベントは、とある日本風ファッションを扱うショップでイメージキャラクター的ポジションを募集していた。私ともうひとり人気ブロガーがいて1位をとるのは難しく思えたのだが、コミュニティのメンバーたちが“一致団結してパンダを1位にしよう!”と投票してくれた。こんなふうにして、コミュニティ内のメンバーたちの存在はかけがえのないものとなっていったのだ。

 その毎日の中で、日々買ったものをアップすることにも慣れたとき、自分のブログを持ちたいと思い始めた。TOKYO PANDAセカンドステップ、ブログ開設である。実際そんなかっこいいものではない。単純に、自分だけの空間だったら、人は果たしてそれでも見てくれるのだろうかと思ったのだ。


Tokyo Panda

投稿者について

Tokyo Panda: 医学部実習生 ファッションブロガー   東京都出身、瀋陽市在住。 2010年中国で医科大学を卒業し、現在は実習生として活動する傍ら、自身のファッション・生活スタイルをブログで紹介し、中国全土で多くの女性ファンを集める。 日本でもその活動・影響力が注目され、若者文化を通じた「日中親善大使」を目標とし、今後の活動が注目される。