立場が違えば見えるものも違う、中国で子育てすると見えてくる中国は、仕事や留学で出会う中国とはまた違った姿なのです。 両親ともに日本人でありながら、がっつり中国に根を下ろし、「ド」のつくローカル環境で3人の子どもを育てる上海の「tako」さん、留学時代に「駐在妻」を夢見、現在そのあこがれの身分でひとり娘を育てる無錫の「ゆかっち」さん。それぞれの奮闘から見えてくる中国と中国人の姿をご覧ください。
わが家のプロフィール
わが家は現在、中国の無錫という街に住んでいます。
無錫は江蘇省南部の経済都市、上海市から西へ車で2時間ぐらい。太湖という湖に面した自然に恵まれた場所で、長江が近いこともあって、昔から経済的に栄えていたそうです。今も外資企業の誘致に熱心なこともあり無錫の経済は良好で、日本企業の進出も多く、中国において比較的住みやすい環境といえます。
幸いうーたんには持病もアレルギーもなく、熱を出したのも1回ぐらい、健康面では何の憂いもありませんでした。ただひとつの問題は、娘の性格!
娘の辞書に「慎重」の文字はない
当時の娘は気の向くまま自由に行動する子どもで、それはそれは無鉄砲。慎重という言葉はうーたんの辞書には存在せず、瞬発力のある猪突猛進な子でした。
買い物に出かけても、お店は彼女にとっては陸上のトラックのように見えるらしく、一人でひたむきに走り始めます。子供が走りだすと、スピードは速くはないものの、人と人の隙間をかけてゆくので、大人でも追いつくのが大変です。何度冷や汗をかいたかわかりません。
一度こちらの大病院で、診察の順番の札を取るのに並んでいる時に事件は起こりました。
唐突につないでいた手を振り払い、うーたんは私から離れていきました。はじめは列の側でちょっとうろちょろしているだけだとタカをくくり、横入りされないように意地になって列に並んでいました。いざ札を取り終わってみて、ふと辺りを見回しても彼女の姿が見えません。何度名前を呼んでみても返事もありません。さらに当時病院は人でごった返していました。
「ここは中国。人さらいも多いって聞くよね??もし迷子になれば、どこに訴えればいいのだろう。的確な場所に届けたとしても、日本のように帰ってはこない可能性は大だ…どないしよ??」と半泣きになりながら、途方に暮れながら必死に探しました。探しても探して見つからず、もうダメだ。連れ去られたと諦めかけた時、ちょうど同じ病院に来て居合わせていた友人に電話をかけ、いなくなった旨を伝えました。
すると友人が、「え?ちょっと待って。うーたん、今私の前を走っていったよ~」と。
はあああ、良かったと胸を撫で下ろしながら、「どこにいる?」と聞くと、「5階の…」
え?私は今4階いますけど…
どうやって5階にたどりついたのか、今だに謎です…
嬉しい誤算?!子供にやさしい中国の人たち
こんな思いもしましたが、中国に来てよかったと思うことの1番は、中国は実は子供に寛容な環境だということです。もともと中国人は日本と比べて大らかな性格な上、子供にはやさしいのです。「子は宝」という考えが根付いているからでしょうか。皆さんが良き育児アドバイザーというか、おせっかいないい隣人というか。
子どもを連れて外出するとよく話しかけられます。住んでいるマンションの警備員さんからご近所さん、その辺にいるおっちゃん、おばちゃん。お兄ちゃん、お姉ちゃんまで子供を見つけるとフランクに話しかけてきてくれます。
「こんにちは」「子供は何か月?」は定番のご挨拶。
「薄着だからもっと着せないとだめだ」は冬にはしょっちゅう言われます。
「足首が見えているじゃないか。こんな事したら風邪をひいてしまう」とおもむろに言いながら、うーたんのズボンの裾を下げて心配するスーパーの店員さんまでいました。
日本では「子供には薄着を」が一般的ですが、ここ中国では薄着なんてご法度。子供には遠慮なく何枚も洋服を着させます。特に赤ちゃんはいつもいっぱい着せられて、汗をかいていてもだるまのようにくるまれています。そっちの方が大丈夫なんかいなといつも思うのですが、論破できないことは言わないほうが得策です。
子供にやさしい方も多いです。無錫でバスに子供連れで乗ると、必ず誰かがすぐに席を譲ってくれます。こちらのバスは運転がとても豪快で、子連れだと危ないことも多いので、これは本当にありがたいです。しかも譲ってくれるのは若い子が多いんですよ!!
しかし上海だと逆になかなか席は譲ってもらえません…特に若い子が譲りません。都会だからかなあ…
食事に出かけても、子供がいるからといって嫌な顔をされることはまずありません。たぶん子供がじっと座れられるなんて最初から思ってないのでしょう。
うちのうーたんはまあ「元気」な子ですので、退屈になったら席を離れ、店を徘徊しようとするんですが、店員さんが自らすすんで相手になってくれます。娘が大きくなるにつれ、さすがにいつも甘えてばかりいてはならないと思い、今は子供には店員さんと遊んでもらってはダメだと言うことにしています。
レストラン店内を徘徊しても、嫌がる店員さん、他のお客もほぼいません。
さらに店員さんの中には自分の休憩用のお菓子をわざわざ子供にくれる人も多いようです。もともと中国では大人が子供にちょっとしたおもちゃやお菓子を渡す習慣があるからなんでしょうが、その気持ちはなんとなく嬉しいものです。
以前娘とバスに乗って横並びの椅子に座っているとき、私がふと娘に視線をやるとうーたんの隣に座っていたお兄ちゃんが、お菓子をそのまま娘の口に持っていっていき、娘もパクリと食べていました。
欧米では「知らない人からのキャンディーは毒だと思え」と言われて育つといいます。しかし私も正直驚きでしたが、中国では欧米の正反対のようなのです。つまりこれは子供に対する愛情のしるし、つまり好意なんです。
という訳で、日本とは違う暖かい子育て環境で、当初は戸惑う事も多かったですが、今じゃ親子ともども、すっかり中国の周りの優しさに甘やかされています(笑)
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ゆかっち
無錫在住の日本人駐在員の妻。家族構成は夫と4歳の娘。
いつの日か必ずやって来るであろう帰国命令に怯えながら(笑)、『日々楽しく』をモットーに『太太』生活を満喫中。現在ハマっているのは、中国茶藝と中国ドラマ。
中国滞在は3度目、通算5年。大阪府出身。
TAKO
1998年より上海在住。留学後、現地ベンチャー、フリーコーディネイター、駐在員を経験。現在、専業主婦。
ローカル生活の中で「小さな幸福」を見つけながら、地道に暮らす。
家族は、現地で起業している夫と現地校に通う息子が三人。趣味はネットリサーチ。