まいごのシャルル「05.青色のさがしもの」



 シャルルはもうどこに行ったらいいのかわかりませんでした。思いつく限りの道を歩き、そして歩けば歩くほど知らない場所に迷い込んでいくようでした。マンションを出てから少し歩き振り返った時に、遠くに大きな古い灰色の建物が見えたのですが、ここからはその建物が随分と近くにみえました。



これ以上先に進んでもどうやら家から遠ざかることになりそうです。

 とりあえず来た道を戻ろうと振り返ったその時です。目の前に突然壁があわられたみたいに視界がさえぎられ、シャルルはあわてて後ずさりして顔をあげました。

すると、毛むくじゃらの大きな顔が急に覗きこんできたので
「わぁっ!」と、大きな声で叫ぶと、シャルルはその場にへたへたと座りこんでしまったのでした。



 ラオワンの方だってとても驚いたのです。あまりにも悲しそうなため息を聞いて心配になって近寄ったものの、なんて声をかけたらいいか考えこんでいたところに、シャルルが急に振り返ってきたのですから。さらに、ラオワンの前で、シャルルは大きな目をさらにまん丸にして、口をパクパクとさせ声を出すこともできずにしゃがみこんでいました。

「あの」と、ラオワンはもごもごと口を動かしました。

「ごめんなさい」と、シャルルはささやくように言いました。それはあまりに小さな声でした。ラオワンはシャルルのことばを聞きとることができなくて、さらに顔を近づけたものですから、かわいそうなシャルルはもっとおびえて小さくなってしまいました。

 こういう時にどうしたらいいのかラオワンには良い考えが思いつきませんでした。とりあえず、顔を近づけたまま「なにしてるの?」と、声をかけてみました。

 頭が真っ白になってなにも考えられなくなっていたシャルルはそのひとことで我にかえりました。そうです。シャルルはずっと探していたのでした。

「えっと…あの…お店に買物にきたの、でも見つからなくて、だから帰ろうと、でも見つからなくて、青色がどこにも見えないの。」と、シャルルは一気に話しました。



《お店?買い物?青色?》

シャルルの言った言葉を繰り返しながら考えたラオワンは、
「青色のものをさがしているの?」と、聞きました。
シャルルは大きくうなづきました。

 この人なら青色の瓦屋根のマンションを知っているのかもしれない!これでようやくおうちに帰ることができると、シャルルは期待をこめてラオワンを大きな目でじっと見つめました。

ところがー
「えっと、えっと、バケツ、ブルーベリー、ソーダアイス、サファイア、イルカ!」と、ラオワンが次々と言いはじめたのです。シャルルはラオワンがいったいぜんたい何を言いはじめたのかと、きょとんとした顔で聞いていました。

ながみみシャルルの物語 〜まいごのシャルル〜
つづく ▶︎06.あこがれの鐘の音




Kiyomiy

投稿者について

Kiyomiy: [投稿者名]Kiyomiy [投稿者経歴] 1976年生まれ。静岡県出身。 コマ撮り (ストップモーション)映像撮影やデザイン制作、 オリジナルグッズの企画制作を行う『FrameCue』(http://framecue.net)主宰。 ブログ『ツクルビヨリ』(http://framecue. net/tsukurubiyori/)にて仕事からプライベート まで365日つくる毎日を記録中。