ラオワンは思いつくかぎり青色のものをあげてみましたが、シャルルはどんどんうつむいていき、悲しそうに首を横にふるばかりです。
「あぁ、イルカはお店に売ってないな。それに青じゃなかったか。青のもの、他になにかあったかなぁ」と、ラオワンは首をかしげました。
「青色のものを買うんじゃないの、さがしているの」
「買わないの?」
「そう。買うんじゃないの。」
ラオワンには何のことだかさっぱりわかりませんでした。
「それは…どこにあったの?」と、何か手がかりがつかめないかとラオワンはたずねてみました。
「それが、どこにあったのか、ちっともわからないの!」と、シャルルは悲しそうにつぶやきました。
それから思い出したように
「あの、古い建物。あれが遠くに見えたの。だからここではないの。」と、通りをのぞいて楼閣を指さしたのです。
「あぁ鐘の楼閣だね。」
「鐘?」
シャルルが不思議そうにしているのをみて、この子はこの町の子ではないのだと思いました。この町に住んでいてこの鐘を知らない人などひとりもいないのですから。たとえ小さな子どもだとしても!
「あの建物の上には鐘があって、それで時間を町のみんなに知らせていたんだ」
「鐘で!時間を!」
シャルルは目を輝かせました。なんて素敵なことでしょう。
街角でスケッチしていると、あたりに鐘が鳴り響き、「あら、もうお昼ね。そろそろお昼ごはんを食べにいきましょう」とスケッチブックを閉じカバンにしまうと、さっそうと近くのお店に入っていくーそんな自分を想像し、シャルルはうっとりとしました。まるで映画の主人公になったようです。なんて素晴らしい町に引っ越してきたのでしょう!
どんな鐘の音がするのかしら?鈴の音のような澄んだきれいな音でしょうか。それとも威厳のある遠くまで低く響く音でしょうか。シャルルは早くその鐘の音を聞いてみたいと思いました。
「その鐘は何時になるのかしら?」と、シャルルは喜びをかみしめながらたずねました。
そばでシャルルが何やらうれしそうにしているのをじっとだまって見ていたラオワンは少し困ったように話し始めました。
「今はもうならないんだ。鐘で時間を知らせていたのは昔のことでー」と、そこまで言うと、そのあとはだまってしまいました。
その時のシャルルのがっかりした顔といったら、ラオワンがそれ以上ことばを続けることができないほどだったのです。
ながみみシャルルの物語 〜まいごのシャルル〜
つづく ▶︎07.暗闇の世界へ
Kiyomiy: [投稿者名]Kiyomiy [投稿者経歴] 1976年生まれ。静岡県出身。 コマ撮り (ストップモーション)映像撮影やデザイン制作、 オリジナルグッズの企画制作を行う『FrameCue』(http://framecue.net)主宰。 ブログ『ツクルビヨリ』(http://framecue. net/tsukurubiyori/)にて仕事からプライベート まで365日つくる毎日を記録中。