そのような困難な状況を乗り越え、現在では現代写真に対する認識度は高まりつつあります。
時代の流れも影響し、足場も価値観も定まらなかった写真芸術が「中国の現代アート」として、まず海外で展示される機会を得ました。そしてもともと中国の作家たちが持っていた飛躍的な感性から独特の表現へ発展した作品が、現代アートとして認められ、それが国内に逆輸入されてきたような感じですね。
9年経った今でも、三影堂を訪れるゲストであの展覧会の印象を語ってくれる人がいることに驚きます。作品や、それを展示する機会さえも大量に消費される時代となっても、印象深い展覧会として覚えてくれていること自体が奇跡です。でも彼らの多くは当時私たちのことを知らなかったと思います。今になって「あの時、実は僕も展覧会を見に行ったんだよ」などと言われることがあります。Sアルル国際写真フェスティバルのディレクター、フォンソワもそのひとりでした。
展覧会以後、この場所に注目する人達が増え、その後この旧工場は、798芸術地区を代表する芸術空間『ユーレンス現代美術センター』となった。
これからもあの場所は798の行方をにぎるキーポイントであり続けるでしょうね。
Inri: アーティスト 北京在住 1973 神奈川県生まれ 1994 日本写真芸術専門学校卒業 1994-97 朝日新聞社出版社写真部委託勤務 1997 フリーランスとなり自主作品制作に専念 2000 榮榮と共作開始 2001 オーストリア連邦政府のレジデンスプログラムに参加 2006 北京に三影堂撮影芸術中心を創設