<第4話>エリートエンジニアがHuaweiを辞めてMBAに学ぶ理由

<筆者プロフィール>

1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<紹介文>

第1、2回では、大山さんがなぜ会社の制度がない中で、社費留学制度を作ってまで、中国MBAに行きたかったのか。第3回では、なぜ中国人エリートの働き方に興味をもったのか。第4回以降は、中国人同級生の取材を通してこれからの中国人エリートの働き方にせまります。

 

 

<第4話>エリートエンジニアがHuaweiを辞めてMBAに学ぶ理由

中国人同級生 LIAO Bin (英語名Liao):
1984年、広西チワン族自治区生まれ。華中科技大学にてオートメーションを専攻し、2007 年卒業、卒業後Huaweiにプロキュアメントエンジニアとして入社。サプライチェーンのマネジメントを一貫して担当する。3年間Huawei本社にて働いた後、ブラジルに異動。Huaweiのブラジル支社にて5年間勤務。趣味はサイクリング。

あのHuaweiで社内婚。学び続けるのがHuaweiメソッド

大山:Liaoは奥さんもHuaweiで働いていたんだよね?

Liao:妻は今も 東莞(トウカン)市にあるHuaweiの本社で、ある部署の人事系の仕事をしているよ。だからMBA期間中は別居生活だね。子供もいるけど共働きだから日中は妻の両親に3歳の子供の面倒を見てもらっているよ。MBA生活はタフだけど、なるべく1ヶ月に1回は帰るようにしているよ。

大山:奥さんとは職場で知り合ったの?

Liao:妻とはHuaweiの入社同期なんだ。入社初日のトレーニングで知り合ったんだ。トレーニングが終わって別々の部署に配属になったけどね。今の奥さんとも知り合えたしHuaweiには本当に感謝しているよ笑 それに、8年間Huaweiにいて働く姿勢や哲学はHuaweiから学んだことが多いよ。

大山:中国人は良く転職するイメージがあるから、8年間は長い方だよね?

Liao:長い方だね。Huaweiの平均勤続年数が大体6年くらいだったかな。

大山:Huaweiは先日、日本でも新卒採用の給与がマーケットの倍くらいということで話題になったよ。Liaoが思うHuaweiで働いた経験から、従業員にとってHuaweiの良いところと悪いところを教えてよ。

Liao:日本でHuaweiの新卒の給与が高いと話題になったことは知っているよ。今でもHuaweiのニュースはチェックしているからね。
一番良いところはもちろん給与だね。同じ業界の同じ仕事で、外資系の競合他社よりも約30%、中国企業よりも約50%程度はHuaweiの給与の方が高いと言われているよ。二番目は、Huaweiは決して学ぶことを辞めない会社だから、その姿勢を学べたことはとても大きいよ。Huaweiは全ての競合他社は徹底的に研究しているけど、例えば一時期、小米(シャオミ)がインターネットを通じて、顧客から様々な意見を吸い上げて、全ての意見に対応していることがニュースになったけど、Huaweiも顧客第一主義を掲げているから、すぐに実践したよ。そして本当に顧客のニーズがあれば、とても面倒な作業であるにも関わらず、すぐにプロセス変更をしてまで顧客の要望に応えようとするんだ。
更に、全然違う業界の成功企業の事例、例えば海底捞(中国で大成功している火鍋のチェーン店)のケースも徹底的に研究して、社員に共有している。この満足することなく、学び続ける姿勢はHuaweiから学んだね。後は昼休みが1時間半あったのは良かったな(笑)。Huaweiの従業員はみんな、30分ご飯を食べて残りの1時間は昼寝をしていた。そうすると午後スカッと仕事が出来るんだよ。昼休み中に電話が来たりすると、小さな声で周りの人を起こさないように、昼休みが終わったらもう一度連絡してくださいって言って対応していたいよ(笑)。
逆に良くない点としては、Huaweiは今や大企業だから、深センでは企業というよりは一つの街のような感じなんだ。だから良くも悪くも、Huawei内で全てが完結できてしまう。考え方や物事の見方が似ている人が多くて、Huawei式にこりかたまっちゃう可能性が高いと思う。いろいろな考え方を知りたいというのはMBAを目指した理由の一つだね。うちの場合は僕も妻もHuaweiで働いていたからとても考え方が偏ってしまっていると感じることがあったんだ。だからMBAでの日々はとても刺激的だよ、金融やコンサルがバックグラウンドの同級生とは全然考え方が違うからね。

ブラジル支社を5年経験後、MBAへ

大山:Huaweiの創業者ってどんな人?例えばアリババのジャック・マーに比べて、全然メディアに露出しないし、プレゼンとかも聞いたこと無い気がする。

Liao:Huaweiの創業者はジャック・マーとは全然違うタイプだよ。もう70歳は超えていると思う。メディアには全然出てこないけど、社内では伝説的なプレゼンをいくつも残していて、その噂が外部に漏れたりしているね。彼は70歳を超えているけどとても元気で、若くみえる。多分学ぶことをやめないからじゃないかな。学ぶことをやめなければ若さを保つことができる。

大山:そういえばHuaweiってLDP(Leadership Programの略。外資系企業は幹部育成のために、通常とは別の採用・育成ルートを持っているケースが多い)もないよね?どうやって幹部を育成しているの?

Liao:Huaweiの人材育成の考え方は、LDPを持っている企業とは異なって、とにかく成長の機会をたくさん従業員に与えて、そこでサバイブした人達を幹部として迎えるというもの。だから、有望な若手はすぐに別の国に、送りこまれてふるいにかけられるんだ。

大山:Liaoも5年間ブラジルにいたよね。有望な若手と認められていた証だね。その間奥さんはどうしていたの?

Liao:最初の2年間は単身赴任だったんだけど、奥さんも会社にお願いしてブラジルで働けるようにしてもらったんだ、だから最後の3年間は一緒に住んでいたよ。一緒に旅行もたくさんした。ブラジルはとても広大だから、まだ回れていない場所もたくさんあるんだけどね。ちなみにブラジルを希望したのは、若いうちに 英語以外の言語を習得したかったから。スペイン語、ポルトガル語はこれからとても重要になるだろうからね。

大山:これだけエリート街道まっしぐらで、Liaoはキャリアの上でミスをしたことってあるの?

Liao:もちろんあるよ。ブラジルにいた時に、部署は中国にいた時と同じく、サプライチェーン・マネジメントを担当していたのだけど、ブラジル支社のダイレクターから、その部署の業務とは全く異なる仕事のプロジェクトマネージャーを頼まれたんだ。ダイレクターからのお願いだったから断れなかったのだけど、とても忙しく、重要なプロジェクトで本業の方に時間があまり取れず、当時の部署の上司はそのことをよく思わなかった。だからその年の評価がとても悪くなってしまった。その後、ダイレクターが僕に社内で自分の現状や、なぜ今本業に集中できないかを説明する機会を設けてくれたんだけど、そこで僕は上手く皆に説明することができなかった。そこで気がついたんだ、僕はソフトスキルが欠如しているって。だからMBAに行くことにしたんだ。もしプレゼンが上手くいって、トントン拍子で出世していたらここにはいないかもしれないね(笑)。

両親は反対、妻は賛成したMBA進学

大山:数あるMBAスクールの中でCEIBSを選んだ理由は?

Liao:当時はブラジルに5年間住んでいたから、そろそろ中国に帰りたくなっていたんだ。北京は大気汚染が酷いし、香港は熱すぎるから選択肢から外して、上海を選んだんだ。上海だったらCEIBS以外他に選択肢はないからね。

大山:奥さんや家族の反応はどうだった?

Liao:両親は、信じられないという反応だったよ。とても良い給料で安定した会社をなぜ辞めるのかと。両親の世代は、恐らく日本と同じで、一つの会社にずっと長く勤めることが美徳とされていた時代を生きてきたからね。しかしながら僕達の世代は、やりたいことや、家族の状態に合わせて転職することは普通のこと。両親には、Huaweiは今は調子が良いし、僕が入社した当時と比較しても売上が8倍位になっているけど、いつ調子が悪くなるか分からない。日本の家電メーカーのようにね。そうなると35、40歳以上のスキルの割に、給料の高い従業員からクビになる可能性が高い。だから、妻も僕も同じ会社で働いているということはとてもリスキーなんだ。そんな話を両親にはしたよ。納得はされなかったかもしれないけど、僕らはもう自分の人生を自分で決断できる歳だよ(笑)。
妻とはとても長い時間相談していたけど、基本的に僕の決断を応援してくれているよ。実は2015年の夏にHuaweiを離れているから、MBA卒業まで3年間僕は無収入の状態になる。これは大変なことだけど、妻は僕の決断を応援してくれている。本当に感謝しているよ。

夫婦で「Enough」の価値観を共有したい

大山:素晴らしいね。Liaoにとって、理想の家族像、夫婦像ってどんなもの?

Liao:理想の家族は、家族みんなで一緒にいること。やっぱり、お父さんが別のところにいるのは子供にとって良くないことだと思う。理想の夫婦は、お互い支え合って、また互いに違うものの見方だけど、お互い勉強して、例えば夜ご飯の時とかに、意見を出し合ったりして、意見は違うけどお互い高め合える夫婦。だから妻には専業主婦にはなってほしくはないけど、Huaweiが好きだったらずっとHuaweiで働いてもらっても構わないし、違う会社に移りたかったら移っても構わない。好きな場所で仕事をしてほしい。後は「Enough(もう十分)」を理解している夫婦になりたいな。

大山:「Enough」を互いに理解するってどういう意味?

Liao:中国では、基本的に共働きが普通で、その主たる理由は、住居費をはじめとした生活費を賄うために、共働きせざるを得ないということだけど、もう一つは、中国人はメンツを気にして、他の人と比べることを好むんだ。だから、1千万円稼いだら、5千万円稼いでる人、5千万円稼いだら1億円稼いでる人と比較して、更に上を目指す。だけど、もうこれで十分っていうラインをお互いが分かっていれば、他人と比較することもないし、幸せになれると思うんだ。

大山:なるほどね。CEIBSにいると特に成績に関しては中国人の方が敏感だもんね。子供の教育に関してはどう?
多くの同級生の悩みとして、インターナショナルな教育を受けさせるか、中国の教育を受けさせるか悩んでいる人が多いと思うけど。一度インターナショナルな教育を受けさせたら、現実的には中国式の教育には戻れない=中国の良い大学には行けないからっていうのが主たる原因だけど、Liaoはどういう意見?

Liao:僕は子供には中国式の教育を受けさせようと考えている。これからどんどん良くなっていくと思うからね。だけど、子供には小さいうちに数年間、海外で経験を積ませてあげたい。次の職場で転勤で海外に行くチャンスがあって、そこで子供と数年間海外で過ごせたら最高だね。

将来は起業、PhDもとりたい

大山:なるほどね。最後にLiaoの今後のキャリアプランについて聞かせてよ。

Liao:これから先自分の考え方がどう変わっていくかわからないから不確実だけど、MBA卒業後は就職しようと思っている。できたら、東莞や深センの近くで働いて、そこで家も買えたらいいね。次の就職先でいろいろと新しい考え方も学ぶと思うけど、ゆくゆくは起業するつもりだよ。現時点では教育関連での起業を考えているけど、例えば、学校のコンサルティングプロジェクトでブロックチェーンについて学んで、その延長線上で自分で作ったビジネスプランを投資家に説明したら、興味を持った投資家が複数人いた。彼らはブロックチェーンについて何も知らないのだけどね(笑)。しっかりした事業プランがあれば、特にホットなトピックであればなおさら、今の中国でお金を集めることはそこまで難しくないと思っている。だからどの分野になるかはわからないけど、自分でビジネスをそのうち始めるつもりだよ。それに、学ぶことも絶対に死ぬまでやめないよ。中国国内で、パートタイムで何年かかるかわからないけどPhDもとりたいと思っている。

大山:学ぶことをやめないHuaweiイズムが染みついているね(笑)。


<第3話>上海は猛スピードで変化し、女性が活躍する街

<プロフィール>

1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<紹介文>

第1、2回では、大山さんがなぜ会社の制度がない中で、社費留学制度を作ってまで、中国MBAに行きたかったのか。第3回では、なぜ中国人エリートの働き方に興味をもったのか。第4回以降は、中国人同級生の取材を通してこれからの中国人エリートの働き方にせまります。

 

 

<第3話>上海は猛スピードで変化し、女性が活躍する街

スマホ決済が見る間に浸透

実際に夢がかない、2016年8月にCEIBSでの留学 がスタートしました。CEIBSでの生活は予想通り大変ハードなものですが、徐々に環境にも慣れてきました。

1年弱経った今、CEIBSはもちろんのこと、上海、中国が大好きになりました。それは日本では知ることが出来ない中国を知ることができたからですが、こちらにきてとても驚いたことを2点紹介したいと思います。

ひとつ目は、日本よりも遥かに進んでいるIT産業と、それを原動力にどんどん変化していく都市と中国人の生活習慣です。いくつか例を紹介します。私がCEIBSに入学した当時は、まだ少し電子マネーが使えなかったお店がありましたが、今どんなに小さなお店でも、屋台でさえも電子マネーが使えます。今私は中国で生活している間は、財布を持つことをやめました。逆にあまりに現金を使わないので、財布をその日持ってきたかどうか忘れてしまい、不安になることが増えてきたからです。それでいっそ財布を持つのをやめたのですが、私だけでなく、多くの中国人がもう財布を持たずにスマホだけで生活しています。また、入学した当時はまだ流行していなかったMobikeを中心とした自転車共有サービスを今では使わない日はありません。完全に中国人の生活の一部となっており、この1年程の間に街の風景がガラッと変わりました。更に外卖(Waimai)でいつでも数時間以内に美味しいご飯を自宅まで届けてもらえ、滴滴(Didi)を使えば、待ち時間なく、遠回りされることなく、安価でタクシーのサービスが受けられます。中国の発達したITサービスを使って、日本にいた時に比べて自分の時間を削ること無く、安価でハイクオリティのサービスを受けられていると感じます。

女性のクラスメートが生き生きしている

そしてもうひとつ中国に来て驚いたことは、中国における女性の活躍です。これはCEIBSに来て気づきました。CEIBSに来てすぐに気がついたことが、女性の同級生達がとても生き生きとしているということ、また「女性だから」といって夢を諦めることが100%ないことです。これが今回CEIBSの同級生達を取材しようと思ったきっかけです。CEIBSの女子学生比率は45%程ですが、中国人だけに限ってみればほぼ50%です。CEIBSのアドミッション・オフィスも中国人を増やすとその分女子学生が増えると言っていました。彼女達は、出産や結婚等によってキャリアを諦めるということはありません。

また、200人近い同級生達の中には妊婦さんも常に何人かいます。とても忙しかった最初のタームが終わる最終日のことです。試験を受けるため教室に座っていると、横に座った女子学生が妊娠していたのですが、あまりにお腹が大きいので、いつ出産予定なのかと訪ねました。すると「来週出産予定で明日から入院する、1ヶ月だけ休んでそれ以上休むと休学扱いになって1年キャリアが遅れるので、すぐに学校に復帰する」と言うので大変驚きました。
彼女はとても忙しいMBAの最初の半年間、妊娠中の身体にもかかわらず、深夜までのディスカッション、プレゼンの準備、ケースの予習等、まるっきり健康体の私でもしんどい生活を乗り越えてきたのです、全ては自分の夢の実現のために。
(彼女は子供への投資が加熱する中国国内で、教育ビジネスで成功したいと考えています、後日インタビュー談記載)。

また、寮の隣に妊娠している同級生が住んでいることもありました。その時は同級生のお腹が大きくなるに連れて緊張していったのを覚えています。CEIBSでは最初の半年がとても忙しく、深夜までディスカッションや課題に追われるため、多くの学生が寮に入ります。子供がいる学生は、平日は寮に住み、子供は自分の実家に預けるか、両親に自分の家に来てもらって子供の面倒をみてもらい、週末に時間ができたら子供達に会いにいくような生活をしている人が多いです。そういった学生達が平日グループで課題をやっている最中などに、両親から送られてくる自分の子供の動画をみて微笑んでいる姿はとても印象的です。

同級生と接するうちに自分の知っている男女平等とか、ワークライフバランスといったものが、日本固有のもの、また自分の経験に基づいた偏ったものであることに気付きました。

(写真:↑子供をもつ同級生達)

中国の女性就業率はアメリカより高い

そもそも 中国政府は男女平等に働くことを政策に掲げており、中国では女性の就業率はBRICsや主要先進国に比べて高く、世界銀行のデータによれば、中国人女性の就業率は大体65%程度です(シンガポール58%、アメリカ56%、日本48% Source:世界銀行(2014年))。
(15歳以上の女性のうち、働いている女性の比率。母数から労働能力を喪失した女性の数を除いていない)

今の私の夢は少しでも多くの日本人が中国を好きになり、少しでも多くの中国人が日本を好きになることです。そのために多種多様なリアルな中国の情報は自分のブログで報告していくとして、Billion Beatsではターゲットを結婚している中国人同級生に絞り、深く取材していくことで、彼らの考えるこれからの働き方、家族のあり方を学んでいこうと思います。

それは同世代の若い中国人エリート夫婦の価値観や、 二人ともキャリアを諦めることなく、互いにサポートしながら夢を掴もうとしている姿から、私達日本人も学べることがたくさんあるんじゃないかと思ったからです。

CEIBSの同級生達は働くことに対してどのような価値観をもっているのか、次回以降同級生のインタビューを通じて問いかけていきたいと思います。


<第2話> 社費留学制度を作る

<プロフィール>

1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<紹介文>

第1、2回では、大山さんがなぜ会社の制度がない中で、社費留学制度を作ってまで、中国MBAに行きたかったのか。第3回では、なぜ中国人エリートの働き方に興味をもったのか。第4回以降は、中国人同級生の取材を通してこれからの中国人エリートの働き方にせまります。

 

 

<第2話>社費留学制度を作る

めざすは「中国で、MBA」

中国のみならず、MBAに興味を持った私は、MBA、特に海外のMBAとはどういった教育なのかを調べ始めます。驚いたことに海外にMBAを取得しに行く日本人は毎年たったの200人程度。そのため巷に出回っているMBAに関する情報は、基本的に日本国内のMBAの情報で、ましてやアジア、中国のMBAの情報はほぼ皆無でした。そこで、海外旅行で行く国にMBAスクールがあれば、必ず寄るようにして、実際に自分の身体で生の情報を吸収していくことにしました。ちなみに海外旅行の際にその地にあるMBAスクールを訪問するのは個人的にはかなりおすすめです。海外MBAスクールに通う日本人は少ないため、どこのMBAスクールも日本人を歓迎してくれます。私も多くの学校をビジットしましたが、その際にたくさんの日本人留学生の方によくしていただきました。そして何より異国の地でサバイブしている日本人留学生達の話は刺激的で、 学ぶことが多いです。

結果的に中国語を学んで、中国について勉強していく中で、MBAにも興味を持ち、今度はMBAについて調べると、 アジアNo.1、世界でも認められていて且つ上海にあるMBAスクールのCEIBSへの思いが強くなるのは自然な流れでした。

社費留学の交渉を始めた

そして忘れもしない2015年3月上旬のある日を境に、私の生活は激変しました。それは会社にMBAの社費留学制度がなかったため、MBA留学をしたいと直談判し、交渉し始めたからです。行動を起こすにあたっては、当然ながらとても綿密に準備をし、何度跳ね返されても絶対に諦めないと強い覚悟をもっていましたが、親を含めて親しい人 からも「130年以上歴史のある会社が、入社5、6年目の若造の提案で、簡単にいくわけがない」と否定的なコメントをもらうことが多かったです。しかしながら、 私は諦めなければ絶対に最後は会社が認めてくれると信じていました。それはCEIBSのカリキュラム、集まる人材、ビジョンを知れば知るほど、そこで揉まれて成長できれば、会社を良い方向に向ける、変革させることができる人材になれると思ったからです。つまり会社のその当時の研修の目的と合致しており、且つそれを上回る提案 だと信じていたからです。

また交渉開始とともに、MBA受験の準備を開始しました。会社が仮に認めてくれても、受験に受からなければ話になりません。 MBAのトップスクールに行くには大変な準備が必要です。しかし私自身は大学時代も体育会の活動ばかりしていたため留学経験もなく、海外経験は海外旅行程度で英語は苦手でした。しかし私には10ヶ月程しか残されておらず、 MBA受験を決意したその日、その足で向かった某大手MBA専門の塾のカウンセラーからは、CEIBSは難しいので、別のMBAスクールをターゲットとするように言われました。

体重激減。ついに合格

(写真:同級生達との集合写真)

しかしながらカウンセラーのアドバイスは無視して、CEIBSをターゲットに 受験勉強を開始しました。はじめからCEIBS以外に 行く気はなかったからです。MBA受験ではTOEFL、GMATが必要ですが、そのような試験で海外経験豊富な他の受験生達を上回るような点数を取ることは難しいと早々に諦め 、足切りにならないような最低点の点数を取れたら、すぐに面接対策に切り替えて、面接で挽回する作戦をとりました 。また、CEIBSのアドミッション・オフィスが来日したり、CEIBSのキャンパスビジットをした際は、自分で作ったパワーポイントを用いて、アドミッションの人達に必死に自分のアピールをしました。

受験勉強中は、仕事が終わってから終電まで会社近くの自習室で勉強、自宅に帰ってスカイプ英会話をして就寝、朝5時にまたスカイプ英会話をこなして、朝6時半からやっている会社近くのスタバで出社までの間勉強というリズムで勉強しました。英会話をその時間に入れていたのは、英会話だったらどんなに眠くてもできるだろうと思ったからです。

受験勉強の不規則な生活と、もし会社から認められなかったらどうしようというプレッシャーから体重は激減しましたが、夢に向かって進んでいる実感を毎日感じていたため、辛いと感じたことはありませんでした。そして無事秋頃に会社から正式にサポートが受けられることがわかり、また、綱渡り的なMBA受験も最終的には無事に上手く行きました。
サポートしてくれた上司達に、無事面接が全て終わったことを報告するため食事している最中に、CEIBSにから合格の報告を受け取ったことはひとつのハイライトです。

今思えばこんな無茶苦茶な私を信じて送り出してくれた会社には、本当に感謝しかありません。送り出してくれた方々のことを毎日思い出し、必ずこの留学を成功させると強い意志を持って一日一日大切に過ごしています。

(写真:↑特に最初の半年はハード。休み時間に死体のように転がる同級生達)


<第1話> 僕はどうしても「CEIBS」に行きたかった

<プロフィール>

1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<紹介文>

第1、2回では、大山さんがなぜ会社の制度がない中で、社費留学制度を作ってまで、中国MBAに行きたかったのか。第3回では、なぜ中国人エリートの働き方に興味をもったのか。第4回以降は、中国人同級生の取材を通してこれからの中国人エリートの働き方にせまります。

 

 

<第1話>僕はどうしても「CEIBS」に行きたかった

なんとなく、中国を遠ざけていた

多くの日本の会社が中国の経済成長の恩恵を受け大きな利益を挙げたにもかかわらず、また中国と日本は隣国で歴史的にも大変深い関わりがあるにもかかわらず、 更に実際に中国本土に行ったことがない人がほとんどであるにもかかわらず、多くの人が中国に対してネガティブなイメージを持っていることに、漠然とした疑問をずっと持っていました。

会社に入ると、多くのビジネスが中国とリンクし、中国を無視することなどできず、より中国の存在感を感じるようになりました。

こんなに存在感があるのに、一方でマスコミに植え付けられたイメージのためになんとなく中国を若干敬遠してしまっている自分に気づき、「イメージだけで何となく避けていることで、大変貴重な機会を逸しているのでは」と思うようになり、「一度しっかりと中国に向き合って、先入観なく中国を見つめてみよう。生の中国を知って、それでも日本の多くのマスメディアが報道しているような中国で、あまり好きになれなければ今後近づかなければいいけど、できることならどうせこれから少なくともビジネスでは一生つき合っていくんだし、好きになった方がいいに決まっている」と思い、短絡的な私は、「よし、そのために中国語をマスターしよう」と思い中国語の勉強を開始しました。

世界ランキングトップMBAが上海にあった

中国語の勉強を進めていくと、今まで以上に中国の情報に敏感になります。また能動的に自分からインターネットで中国に関する情報を調べるようになりました。特に、日本では報道されていない、IT産業を中心とした中国の方が日本に比べて遥かに進んでいる分野に興味を持つようになりました。興味深いことにそのような、日本人にとってあまりおもしろくない情報は日本語ではほとんど書かれておらず、英語か中国語の情報に限られます。

そんな中、たまたま目にしたFinancial Times の大学のランキング記事で、全世界のMBAのランキングの記事を目にします。その中に日本の学校は一つも入っていませんでしたが、中国の学校が複数入っていることに驚きました。特に、欧米の名門校を押しのけて、トップ20位(当時17位、現在は11位)にランクインしているChina Europe International Business School(CEIBS)という学校が目につきました。

(写真:憧れのCEIBSのキャンパスとロゴ)

中国といえば、北京大学や清華大学といった超名門の総合大学は知っていましたが、CEIBSという名前はその時初めて目にしました。恥ずかしながら最初は今までの人生で一度も聞いたこともないし「胡散臭い学校」と思っていましたが、中国語を学ぶにあたって先入観をなくすことを心がけていたので、とりあえず調べてみると、驚いたことに設立されて20年そこそこしか経っていないに、設立後10年でFinancial Timesのランキングトップ10 入り、以降もずっと世界のランキングで20位以内をキープしている、世界的なMBAスクールということを知ります。今度は中国語で検索してみると、アリババやテンセントをはじめとした中国の大企業の幹部を多数排出している、アジアNo.1のものすごいMBAスクールということを知るのです。こんな情報は今まで誰も教えてくれなかったし、中国語を勉強して中国に興味を持たなければたどり着かないものです。CEIBSに興味を持った私は、そこで初めて「MBA」を意識することになります。

ここでCEIBSを簡単に紹介します。CEIBSは1994年に中国政府とEUが合同で非営利の教育機関として設立したMBAスクールです。当時、中国政府は企業の経営層、及びシニアのマネージャー層の質が欧米に比べ劣っていることを感じていました。そこで、リーダーシップとアントレプレナーシップを持って組織をマネージメントできる、主にシニアのマネージャーを多く 輩出することで中国企業の競争力を高めようと、中国から世界レベルのMBAスクールをつくるべくCEIBSが設立されました。その後、的確な学校運営と中国の急速な発展をバックに世界中から優秀な教授や学生を集めた結果、1994年の開校より10年あまりで、フィナンシャル・タイムズの世界MBAランキングのトップ10入りを果たします。今年のランキングは世界11位、アジアでは1位。フィナンシャル・タイムズのみならず、ForbesやNewsWeek等からもアジアNo.1のビジネススクールとして評価されています。学生の比率としては60%が中国人で、40%が外国人。女性の比率は45ほどです。

(写真:キャンパスではTED等のイベントも頻繁におこなわれる)

ここまでが外形的なCEIBSの説明ですが、私が個人的に感じている他のMBAスクールにはないCEIBSの大きな特徴は、「野心的」であるということです。これはCEIBSのキャンパスを初めて訪れた際に感じました。ランキングの上がり具合や、次のハーバードになるという壮大な目標を掲げているCEIBSは、 野心的です。アドミッション・オフィスもそれを隠そうとせず、学校の説明の際はどんどんビジョンを語ってきます。私は受験の際に多くの学校を実際に訪れキャンパスビジットしましたが、ここまで学校としての勢いを感じたのはCEIBSだけでした。学校のみならず。 発展する中国経済でチャンスを掴もうと世界中から集まってきた学生も野心的です。そんな学生達のディマンドを満たすべく、CEIBSのカリキュラムはハードに設計されています。