<総集編>【前編】CEIBS、行ってよかった!
− 感動の卒業式 −

<筆者プロフィール>

大山廣貴:
1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<総集編>(前編)CEIBS、行ってよかった! − 感動の卒業式 −

家族も参加。温かいセレモニー

2018年4月14日(土)に上海にてCEIBSの卒業式があり、僕のMBAジャーニーは幕を閉じました。
卒業式には、自分のわがままで散々迷惑をかけた家族を連れて参加しましたが、他の多くの同級生も家族やパートナーを連れてきていて、授業やディスカッション中に見かける普段の彼らの表情とはまた違った表情をしていて、とっても温かい雰囲気がキャンパスを包んでいました。

自分の名前が呼ばれ壇上で卒業証書を授与するタイミングを待っている間は、会社に派遣を認めてもらうために動き始めたところから、ここに至るまでの経緯がフラッシュバックし、その場にいるのがとても不思議な感じがしました。3年前に動き始めた時には、想像もできなかった光景でした。

卒業式を終えると、両親もとても興奮していました。
1人1人名前を呼ばれて壇上に上がって卒業証書を受け取る際に、そこで周りの見守っている同級生達から、チャチャが入ったり、歓声が上がったりするのですが、家族はぼくの順番で周りの反応が渋く、シーンとするのではないかと心配していたそうです(笑)。ありがたいことに、本当に多くの同級生にチャチャを入れられ、盛り上がりました。またその場で唯一の日本人ということで(前回登場した同級生の中西さんは1年間卒業を遅らせたため、来年卒業予定)、異国の地で世界中から集まった秀才たち相手に日本人1人でよく生き延びたなと感激したそうです。
日本人がいない環境にはこの2年間ですっかり慣れ、心地よさすら感じ始めていたのですが、 そういえば、最初は日本人が全くいない環境に適応するのに苦労したのでした。

MBAはコスパが悪い?

MBAに関しては、いろいろとネガティブなコメントを目にします。
MBAを批判するコメントは主に3パターンにわかれると思います。

1. MBAという教育が今の時代に合っていない<MBA教育批判>
2. 世界のランキングにランクインしているMBAスクールが日本にはない(=世界から評価されていない)<「国内」MBA批判>
3. 学費があまりにも高く、日本の会社で普通に勤めても投資(=学費)を回収できない<「海外」MBA批判>

僕は日本国内のMBAスクールに通っていないので2についてはわかりませんが、他の主張については理解できますし、実はある程度同意です。

しかしそれでも、ぼくはMBA留学に行って本当によかったと思っています。
以下、その理由を説明したいと思います。

ありきたりな部分があるかもしれませんが、僕が感じたMBAを通じて思ったことは、以下の3点です。
1つめは、自分の生きてきた世界の狭さを知ったこと。
CEIBSには、国籍のみならず多彩なバックグランドを持ったビジネスパーソンが集まります。会社でも、違う国籍のお客さんや、社内の違う国の支店に勤めている外国人と働く機会はそれまでにもありましたが、それはあくまで会社の看板をみて自分に接してくれていた、もしくは日本の文化をよく知る外国人たちと接してきたんだなとMBA留学中に痛感しました。
例えば、MBAで出会った海外の人に自分のバックグランドを説明する時は、自分は「何の専門家なのか」ということを簡潔に言わなければいけません。日本の大企業にいるとジョブローテーションの名のもと、自分の意志とは別に、様々な部署に所属するので、「いつからいつまでは○○の部署に所属していて、その後××の部署で働いていた」と説明しがちです。でもこんなバックグラウンドの説明では、相手は決まってポカンとします。
僕の話で言うと、会社では経営企画部に所属していたのですが、経営企画部という部署の役割や位置づけは実は極めて日本的で、海外の人にはなかなか通じません。簡潔にイメージをつかんでもらうために、ある時から「In-house consultant」(社内コンサルタント)をしていた、と説明するようになりました。海外の大企業では、今まで外部の戦略コンサルティングファームにいろいろ発注していたものを、社内で自前でコンサルタントを持つことで外部に発注せずに自社内で解決するというムーブメントがあり、イメージが伝わりやすかったからです。
それでも、だいたいまず最初に投げかけられる「おまえは何ができるのか?」という問いは、脳裏に焼きつき、常に自問していました。

「おまえは何ができるのか?」

自分はいったいどこで何にどのように貢献できるのか―—。MBAの前半、このことを絶え間なく自分に問いかけながら過ごしていました。
また、どの分野の話題になっても、自分の今までの経験から仮定を立て、正しい・間違っているは別にして、ポジションをとって自分の意見をしっかりと主張する同級生達に圧倒され、特に始めは、何もコメントできない自分になんて自分は無能なのだと悲しくなっていました。
しかし、ほどなく、それは今までの習慣や考え方が染みついていることが主たる原因ということに気づきます。それからは、議論に参加する際のマインドセットや姿勢を変え、1年かからないくらいで自分の意見を主張できるようになっていきました。

2つめは、自分の憧れ、目標となる人たちに出会えたことです。
頭のよさも、社交面も、ユーモアも全て含めて到底勝てそうにないスーパーマンのような同級生やOB・OGと知り合うことができ、自分も頑張ってこういう人になりたいなと思えるようになったのは、大きな財産です。
ぼくのそれまでの経験が狭い範囲であったということもありますが、CEIBSで出会ったような、全ての項目で飛び抜けている人材には日本では出会ったことはありませんでした。
例えば一番尊敬していた憧れの同級生は、年下の南アフリカ人です。彼は公認会計士で、学業もとても優秀で、学年の代表として卒業式でもスピーチしました。
彼のすごいところは、中国語がしゃべれないにもかかわらず中国人コミュニティの中に1人でどんどん入っていく物怖じしないところです。中国人の懐に飛び込んでいき、愛されていました。間違いなくとても優秀で頭もキレキレなのですが、たまに抜けたところもあり、そこも皆から愛されていました。そして彼はぼくが知る限り、中国人同級生の中国語名と英語名(中国人は自分の英語名を持っているケースが多い)全て覚えていました。勉強も学年トップにもかかわらず、全てのイベントに参加し、リーダーシップを発揮する彼のようになりたいなと強く思いました。

トップリーダーを囲い込むアリババ戦略に驚愕

3つめは、これはCEIBSでないと得られなかった経験ですが、中国の勢いを直に感じられたことです。
例えば、ぼくの上海生活が始まった2016年2月時点では全く流行っていなかった、シェアリング自転車が、気づけば1年も経たない間に、中国人の足となり、生活の一部となりました。また、普及した当初は、法規制やモラルが追いついておらず、街中に自転車が散乱されているケースも散見されましたが、その後、サービスに規制やモラルが追いつき、状況はかなり改善されました。
さらに驚いたのは、テクノロジー系やフィンテックの先端企業が僕のクラスメートたちをはじめ有能な人材を掻き集めている様子を目の当たりにしたことです。ご存じの通り、テンセントやアリババといった中国企業は時価総額でも世界トップ10に入っています。
例えばアリババは世界のトップ大学院の博士課程修了者を対象にアリババグローバルリーダーシップアカデミーという幹部候補生用のプログラムを持っています。これは世界中から集められた20名程のエリートたちが、ジャック・マーのもと、1年間強の特別なプログラムを受け、その後、母国でアリババの普及活動に務めるというもので、日本企業では考えられないような待遇と職域の広さに惹きつけられ、昨年はハーバード等の一流校から6000人程の応募があったといいます。そしてCEIBSからも先に述べたスーパースター級の逸材がアリババの門を叩いています。
こんな人材を抱えスピードあるジャイアント企業と、我々日本人がいったいどうやって戦っていくのだ……。と、恐ろしさすら感じました。
中国の発展具合は、日本人にとっては知らない方が幸せな、ある意味「不都合な真実」かもしれません。ぼくは東京に帰って2ヶ月強が経ちますが、いまだに中国を下に見るような何十年も前の感覚のままの日本人に多く会います。実際に中国本土に行って遥か日本の先を行っている中国経済とテクノロジーを見たら、愕然とするのだろうなと思いながら接しています。


Hirotaka Oyama

投稿者について

Hirotaka Oyama: <プロフィール> 1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。 ブログ: CEIBS MBA日記