<総集編>【後編】変わり続けることこそ豊かな人生
− 立ち止まるMBAという時間 −

<筆者プロフィール>

大山廣貴:
1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。

ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)

<総集編>(後編)変わり続けることこそ豊かな人生 − 立ち止まるMBAという時間 −

人生の充実をゴールに

BillionBeatsのこの連載を引き受けたことで、数多くの同級生をインタビューする機会を得ました。連載を通して思ったことは大きく3つあります。

1つめは、同級生たちは立ち止まる重要性を知っているということ。彼らはキャリアを一時中断して、別の環境に身を置くことをとても重要だと思っています。その期間に新しい視点を得て新しい価値観に触れることで、最終的に人生自体が豊かになると感じているからです。例えば、このインタビューシリーズでも、会社を辞めて、1年間の世界1周旅行に出て、そこで今の夫を見つけ、新しいビジネスアイデアを見つけた中国人女子のストーリーを紹介しました。
彼ら、彼女たちはむしろ、1つの場所に留まることで、自分の視座や、物の見方が固定されてしまうことを恐れているようにも感じました。
これは日本の従来型の、1つの大企業に定年まで勤め上げる思考とは相反します。また、短期的なキャリアの向上、短期的なリターンを真っ先に考える人には、なかなか真似できないことだと思います。
MBAとは自分のキャリアを追及する場所なので、もっとみんな目先の利益ばかりを考えて生きてきた人たちかと思ったら、じつはみんな、人生をどうやって充実させるかに焦点をあてて生きていて、そのために若干の目先のキャリアの利益を追求しない姿勢に感銘を受けました。むしろ、思い返せば自分の方が、目先の利益に振り回されて生きてきていたなと感じることが多かったです。
同級生たちを見習って、どうやったら人生を豊かに、おもしろく生きられるかに焦点を当てて、キャリアを含めて人生設計していこうと強く思いました。

パートナーのキャリアも大切にするということ

2つめは、子育てや結婚のために、夫婦のどちらかがキャリアを諦めるのは絶対におかしいということことです。2015年に日本総研が発表した、「アジア主要都市コンシューマインサイト比較」によると、既婚夫婦の共働き率は、北京98%、上海97%で東京は54%。じつはアジア主要都市の中で75%以下は東京だけです。

それは中国ではベビーシッターが安いからだとか、おばあちゃん・おじいちゃんが孫の面倒をみる文化が浸透しているからだとか、いろいろと理由をつける人はいるかと思いますが、中にはベビーシッターに子供を預けるコストの方が、その人の収入より多いケースも結構あり、そのようなケースは前の理屈では説明できません。結局彼ら、彼女らは、短期的なコストよりも、長期的な人生設計を考えているからそのようなことができるのかなと思います。
もちろん専業主婦自体を否定するつもりは全くありませんが、世界的にみて、レアな存在になってきていることは認識してもよいかもしれません。

3つめは、共働きだからこそ取れるリスク、選択があるということ。既婚の同級生のほとんど皆が共働きですが、こうやってMBAにこられるのも片方がその間働いているからですし、起業家精神旺盛な中国人の文化には、共働きはフィットしていると思います。
思い返せば先日同級生と話をしていて、ぼくの場合自分も妻も共に大企業で働いていると言ったら、なぜ片方がベンチャーもしくは企業してIPO(上場)を狙わないのだと言われました。それだけ守られている状態だったら、リスクも限られているし、大きなリターンを狙うべきだというアドバイスでした。これはとてもMBAに来ている学生らしい考え方です。
実際、同級生の中には起業する人も多いですが、日本人の中西さんのように片方がリスクをとって起業して片方は堅実な企業で勤めるケースは多いです。彼らなりにリスクを最小限に抑えています。
このように本当にやりたいことがあり、それに伴うリスクが大きいと判断した場合、共働きでないとなかなか踏み切れません。
同級生へのインタビューを通じて、夫婦ともにキャリアも、家庭も、子育ても全力で頑張る姿勢に感動しましたし、彼らのような家庭を築きたいなと強く思いました。

以上を踏まえて今後ぼく自身どうしていくか、ここに記しておこうと思います。

アウトプットと直感を大事にする

1つめは、アウトプットの場を意識的にもつようにすること。
留学期間中はとても多くのアウトプットの場を得ました。留学初期は、アウトプットの場がストレスフルでしょうがなかったのは事実です。しかしながら、とにかく数多くのアウトプットの場があるために、その決まったアウトプットの日までに、「知識のインプット→アウトプットの練習→アウトプット→フィードバック」を繰り返すことで着実な成長を実感しました。また、アウトプットをパブリックにすることで、たくさんの人たちとつながることができ、リアクションを受け取ることで更に成長が加速することを知りました。
日本の大企業では、なかなか特に若手がアウトプットする機会は多くないように感じます。これから意識的にブログなど含めて、積極的にアウトプットしていきたいと思っています。

2つめは、周りの批判は気にせず、重要な決断はすべて自分の直感に従うこと。
会社にMBA制度を作ろうとした時に絶対に無理と決めつけて批判する人や、なんとなく「中国」ということで中国MBAを批判する人たちに会いましたが、むしろそういう人たちが多ければ多いほど、その先にはブルーオーシャンが広がっていると考えるようにしています。
じつは、ぼく自身一度だけ、重要な決断を直感に委ねかったことがあります。大学卒業後に、単純な憧れから海外の大学院進学を考えていた時期があったのですが、費用面や周りの反対等を理由につけて諦めた経緯があり、会社に入ってからもそのしこりは残ったままでした。それ以降、一回きりの人生で、やりたいことを残したまま死ぬのは絶対に嫌なので、憧れや直感を意思決定の際の最も重要なものに置くことにしました。
最近は学生に就活のアドバイスをする機会が多いですが、散々自分の話をした後に「だけど今話したことは全部忘れて、自分の直感に任せた方がよいと思う」と言うようにしています。

大学に進学した時も、ラクロスというスポーツに直感的に魅力を感じましたし、社会人になったときは、それまで東京にしか住んだことがなかったので、漠然と関西に憧れがあり、会社に強く希望して関西勤務をさせてもらいました。そして海外に住んだことがない、外国語を操れない自分へのコンプレックスから、念願の海外でのMBA生活を経て、英語と中国語をマスターしました。

人生をドライブ、加速度的に夢が近づく

次はなにをするか。

「起業(≠今の会社を辞める)」と「デジタル領域(含むプログラミング)」なんだろうなと思っています。前者は祖父・父の影響。後者は、中国でテクノロジーが人々の生活を目に見えて豊かにしているのを目の当たりにした影響だと思います。共に今やらないと後々後悔するだろうなと猛烈に感じているので、きっとやるんだと思います。

CEIBSに行ったことでぼくの人生はドライブされ、夢に向かって加速度的に近づくことができました。
またBillionBeatsの活動にも加わることはありませんでした。
今中国と日本は大変難しい状況に置かれていますが、中国に大変お世話になった日本人の一人として、これからも少しでも両国の距離感が縮まるように、引き続き貢献するつもりでいます。
最後に、忙しい中時間を割いてくれた同級生たち、自分勝手な活動を応援してくれる会社の方々、心配をかけた家族には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。谢谢!再见!


Hirotaka Oyama

投稿者について

Hirotaka Oyama: <プロフィール> 1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。 ブログ: CEIBS MBA日記