<筆者プロフィール>
大山廣貴:
1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。
ブログ: CEIBS MBA日記 (http://ceibs2018.hatenablog.com)
<紹介文>
第1、2回では、大山さんがなぜ会社の制度がない中で、社費留学制度を作ってまで、中国MBAに行きたかったのか。第3回では、なぜ中国人エリートの働き方に興味をもったのか。第4回以降は、中国人同級生の取材を通してこれからの中国人エリートの働き方にせまります。
<第12話>在学中にママに。クラスメートは、スーパーキャリアウーマン
中国人同級生Tianjiao Mao:
1988年、湖南省湘潭市生まれ。北京外国語大学にて、ファイナンスを学び、ゴールドマンサックス入社。その後国営の投資銀行勤務を経てCEIBS入学。CEIBS在学中に出産を経験。
猛勉強してゴールドマンサックスへ
大山:ゴールドマン・サックス出身で、MBAのめちゃくちゃ忙しい時期に出産して、すぐに復帰して、その後交換留学にも行ったスーパーキャリアウーマンのTianjiao!お話聞くのを、とても楽しみにしてました!Tianjiaoは大学は北京だよね?出身も北京?
Tianjiao:出身は、湖南省の湘潭市(面積5,000km²、人口300万人程度、毛沢東の出身地でもある)という田舎だよ。高校まではそこで育って、大学から北京外国語大学で、ファイナンスを学んで、卒業後は、ゴールドマン・サックス(上海)のコーポレートアクセス部で数年働いた後に、中国国営の投資銀行で数年。それからCEIBSに入学したよ。
大山:輝かしい経歴だね。日本でも新卒でゴールドマンサックスに入ると、頑張れば若くして数千万円の年俸が貰えるということで、採用人数はとても少ないにも関わらず、トップ大学出身でそれも英語も喋れるトップの就活生が志望しているから、人口の多い中国だったら尚のこと入るのは難しいだろうね。ところで投資銀行はとても忙しいイメージだけど、実際はどうだった?
Tianjiao:忙しかったね。ゴールドマン・サックスでは朝7時に出社して、毎日だいたい深夜の1時ぐらいまで働いていたよ。忙しい時は週末もね。なぜなら、クライアントが欧米のクライアントだったから、時差の関係で先方に合わせる必要があったからね。結局夫と相談して、3年弱で中国国営の投資銀行に転職したんだ。それからは、だいたい夜7−8時くらいには、仕事が終わるようになった。
大山:Tianjiaoのキャリアは本当に、中国人の憧れの、王道中の王道だよね。学生時代は相当勉強した?
Tianjiao:学生時代は、本当に勉強したね。全てのテストで良い点を取らなければ、将来が開けないかもしれないっていうプレッシャーはあったけど、中学・高校時代は勉強しかしなかったね。
大山:なるほどね、日本でももちろん受験勉強はあるけど、中国人同級生の話を聞いていると、競争の熾烈さの次元が違うように思うね。僕だって受験はしたけれど、部活動とか課外活動もエンジョイしたからね。ところで、Tianjiaoは旦那さんとは職場で出会ったの?
夫は武漢で教育ビジネスを起業
Tianjiao:大学で知り合ったんだ。私の2つ上だね。その後、夫もゴールドマン・サックスで働いていたから、数年間同僚だったね。
大山:すごい夫婦だね……。僕はMBAに来て、自分がファイナンスのバックグラウンドをもっていないから、とても苦労したし、Tianjiaoみたいなファイナンスのプロをうらやましく思うよ。キャリアのオプションも多いだろうしね。
Tianjiao:CEIBSに来た理由のひとつはキャリアチェンジなんだ。今行ったとおり、私は大学での専門もファイナンスだし、社会に出てからもそれしか知らないからね。変化の速いこれからの時代は、もう少し幅を広げておいた方がいいと思ったんだ。
大山:なるほどね。具体的にはどのような職を考えているの?
Tianjiao:今考えているのは、インターネット企業の財務部とかかな。ゴールドマン・サックスの後に働いていた投資銀行は、国営企業だったから、意思決定とかも遅くて、それとは真逆の会社を見てみたいと思ったんだ。中国のインターネット企業は変化が凄まじく速いからね。あと、夫が昨年末にゴールドマン・サックスを退社して、彼の地元の武漢で起業したから、武漢でいい会社が見つかったらベストだね。
大山:旦那さんはどのようなビジネスを始めたの?
Tianjiao:夫は、教育ビジネスだね。具体的には海外の高校、大学、大学院に行きたい中国人学生向けのビジネスだよ。
大山:最近、中国の新聞で、昔は富裕層だけだったのに、中国の中間層の家庭もどんどん欧米に子供を留学させているっていうニュースをみるよ。
Tianjiao:そうだね。上海や北京は、競合他社も多いんだけど、武漢とか、他の第二級都市以下には、まだまだ競合他社も少なくて、夫は競合を避けるために、地元を企業の場所として選んだね。
大山:なるほどね。Rolexと同じ戦略だね(笑)(*著者注:同級生インタビュー第7回で紹介)。中国の二級都市に行くと、その発展具合に本当に驚くよ。こないだ成都(*著者注:四川省にある二級都市)に行った時、東京以外の日本のどの都市よりも発展しているんじゃないかと思った。
Tianjiao:成都は内陸部で、地理的な条件が武漢と似ているから、この2都市はお互いに意識していて、切磋琢磨しているんだよ。有名な大学もあって、武漢大学とかは優秀な生徒を積極的に集めて、質が上がって、地元の学生も北京・上海には行かずに武漢に残るという人が増えてきたね。ちょっとだけ空気が上海に比べて汚いのが難点だけど(笑)。
大山:なるほどね。でも旦那さんのビジネスが中国人学生の海外留学支援だったら、Tianjiaoの子どもも、インターナショナルな教育を受けることになるんだろうね。
Tianjiao:そうだね。私自身は、全員に平等にチャンスを与える中国の教育に感謝しているけど、子どもはインターナショナルな教育を受けることになるかな。まだわからないけどね。
大山:TianjiaoはMBA留学中に出産したばかりだけど、旦那さんがこのタイミングで起業したのは、子どもが生まれたのも関係しているのかな?
Tianjiao:いや、夫は自分の年齢との兼ね合いで、いつまでに起業したいっていうのが自分の中であったみたいで、昨年末に私の卒業前に武漢で起業したよ。まだビジネスも始めたばかりで軌道に乗っているわけではないから、私も学生の身分だし、家計は大変だよ(笑)。もちろんそんな彼のことが好きだし、尊敬もしているけど、私は私でしっかり家計を支えるためにちゃんとした就職先を探さないといけないね(笑)。
大山:Tianjiaoにとって理想の夫婦って?
Tianjiao:お互い独立していて、刺激し合える関係かな。もちろんリスペクトもしつつね。
大山:Tianjiaoの夢ってなに?
Tianjiao:うーん。まずは金融以外の世界に飛び込んで、全然違う世界を見ることでキャリアの幅を広げたいね。現実的だけど、今はそれが私の夢かな。
大山:Tianjiaoの今までの人生で一番の失敗とか、後悔とかってしたことある?
Tianjiao:実は、出産によってMBAライフをエンジョイできなかったことが、人生最大の後悔なんだよ。もちろん子どもが生まれたことはすばらしいことなんだけど、想定外だったから。今まで話したように、私は、今まで極めて直線的に生きてきたから、勉強以外のパーティに参加したり、新しい友達をたくさん作ったり、夜遅くまでみんなで飲んだりっていうMBAライフを満喫できなかったことは本当に後悔しているよ。特にみんなが一気に仲よくなるタイミングで抜けてしまったから、新しい友達を作る機会を逸してしまったのが本当に悔しい。あなたともこんな機会がなかったら、長く話す機会はきっとなかったろうしね。
大山:だけど、僕たちはTianjiaoを大切な仲間と思ってるから気にする必要はないし、これからもなかよくなる機会はあるはずだよ。とりあえず、来週武漢に行くので、観光案内お願いいたします(笑)。
Hirotaka Oyama: <プロフィール> 1986年東京生まれ。私立武蔵高校、早稲田大学理工学部卒。大学在学中は体育会ラクロス部に所属。 2010年株式会社商船三井入社。関連会社出向、本社経営企画部を経て2016年8月より、上海にあるChina Europe International Business School (CEIBS)に現在会社からの派遣でMBA留学中。 ブログ: CEIBS MBA日記