その8 斉藤裕さん:「家、企業、都市」の概念

2016年8月31日 / 私の出会った日本人



(写真)建設ラッシュの北京

 茨城県日立市内にある日立製作所の事業所は、3月11日の大地震で大きな被害を受けたが、3月29日にはすでに操業を再開している。
「日立事業所が被災した際、我々はまず従業員を帰宅させ、家の状況や家族の安全の確認をさせました。それから工場の設備や生産ラインの復旧に向けた準備を始めました」
 日立製作所の常務、斉藤裕さんはそう言った。
 日立市内に勤務する従業員のうち、軽傷者および住居の被害が比較的大きかった従業員が数名いたが、従業員の家族は皆無事だった。会社はまず従業員と家庭の状況を確認して初めて、自社の設備や生産ラインの被害状況を確認することに集中できたとのこと。
「従業員自身の健康や家庭に不安があっては、会社として震災復興、生産復旧に取り組むことはできませんからね」
 斉藤さんは重ねて言った。
震源から遠くない日立市が受けた打撃は大きく、設備の修復や生産ラインの復旧には比較的長い時間がかかると思われたが、日立製作所は半月あまりの時間でそれを成し遂げている。
「日立製作所はお客さまに様々な装置を提供する立場にあります。納品した装置に問題があれば、日立の従業員が365日、24時間体制で修理に駆けつけていました。日立の工場が被災してしまった今、我々はこれまで以上に一致団結して立ち向かっているのです」
东京的日常景象-5 斋藤裕的“家、企业与城市”概念 危機管理に対する日ごろの備えと経験が、今回自社の被災復興に生かされている。
 震災復興後の斬新な日立市の姿——。操業再開後に日立製作所が考え始めたことだ。日立市はもともと数百年の歴史がある地方都市で、今回の被災で壊滅的とは言わないまでも、かなりのダメージを受けている。
 日立市の復興とは、以前の姿に戻すことではなく、全く新しい日立市に生まれ変わること―—。日立製作所はお膝元である日立市の新しい復興計画を立て始めた。
 日立製作所の構想は全く新しい『スマートシティ日立』をつくることである。工場がエネルギー消費する際にはITなどのツールを駆使することで効率化を実現、今後数年にむけての一歩進んだ省エネを目指し、外国人や中小企業にも技術提供できるような都市をつくろうとしている。
「エネルギー、交通、水などは、都市とは切り離せないものです。新しい日立市は更なる交通の整備、情報公開、資源の循環利用を実現させるべきです。特に資源利用については、最も効率よい方法を見つけ出せるはずです。それが私たちが考える新しい日立市なのです」   
 斉藤さんは言った。
 家があるから企業がある。企業があるから現代の都市がある。斉藤常務は震災復興後の個人、企業、そして都市の新しい姿を描き始めている。日本には彼と同じような志をもつ人が他にも多くいるだろう。そうした人々の努力の結果、遠くはない将来に全く新しいスマートシティが生まれ、再び世界の注目を集めることを私は信じている。


ChenYan

投稿者について

ChenYan: 会社経営者 1960年北京生まれ。 1978年に大学に進学して日本文学を専攻した。卒業後に日本語通訳などをして、1989年に日本へ留学し、ジャーナリズム、経済学などを専攻し、また大学で経済学などを教えた。 2003年に帰国し、2010年まで雑誌記者をした。 2010年から会社を経営している。 主な著書は、「中国鉄鋼業における技術導入」、「小泉内閣以来の日本政治経済改革」など多数。