大学在学中に公認会計士試験に合格。米系投資銀行とネット系ベンチャーで猛烈に働いた20代。30代は海外でビジネスという夢を実現しようと、アジアの時代に中国・北京へMBA留学。59人のエリート集団で(中国人比率80%)、たった一人の日本人留学生・大内昭典さんが、中国人クラスメートにインタビュー。同級生だから聞ける、ナマなハナシ。大内さんが代表を務めるチャイナMBAマネジメント協会では、中国/香港MBAに関する情報を提供しています。
<プロフィール>
1982年生まれ、ハルビン育ちの一人っ子。父は大学教授で、専門はヘルスケア・ボディビルディング。母は中国建設銀行に長く勤務、既に退職。17歳までハルビン。高2の時、学年トップの成績で海外留学のフルタイムスカラシップを獲得、大学からシンガポール国立大学でコンピューターサイエンスを専攻。海外留学組の中国エリート。大学4年間は勉強、生活ともに英語。モジュール3、4で学級委員長を務めた。
授業の合間の休み時間の風景(1コマ3時間、15分間休憩)教授を取り囲み、話を熱心に聞くクラスメートたち(写真)
マイケル・ジョーダンになりたかった高校時代、フルスカラシップを獲得。大学はシンガポールへ
Q. 海外留学の決断に、親の影響はあった?
A. フルスカラシップに合格するまで、親には海外留学のことは言わなかった。合格後、親にシンガポールで勉強したいと打ち明け、親は私の努力を認めてすぐに許してくれた。親はとても寛容で、反対は一切しなかった。とても感謝している。
Q. 高校生のときの夢は?どんな高校生活だった?
A. バスケ部に入っていて、マイケル・ジョーダンになるのが夢だった。普通の高校は授業終了後も夜の9時頃まで自主勉強させるけど(クラブ活動は基本なし)、私の高校は地区トップ校で文武両立を大切にし、放課後は比較的自由だった。バスケは学校で休み時間にやって、夜はフルスカラシップを獲得するために、家でかなり勉強した。同級生の半分以上は清華大学、北京大学に入学した。
Q. 大学でコンピュータサイエンスを専攻したのはなぜ?
A. 13歳の時に初めて従兄からコンピュータを教わり、コンピューターにのめりこんだ。大学の授業はとてもおもしろかった。学校委員長、バスケットなどバランスを取った学生生活で、勉強、学校活動、スポーツの時間配分は3分の1ずつだった。大学1年生の時に学年のリーダーになった。10人以上が立候補した選挙に勝った。日ごろからリーダーの訓練をしていたのが勝利の秘訣。
グローバル企業を渡り歩き起業。上海で子育ても経験したイクメン、今は企業家として強固なビジネスネットワークをつくるために、単身赴任でMBA学生生活
Q. 大学卒業後のこれまでのキャリアは?
A. 大学卒業後は、シンガポールのアクセンチュアでITプロジェクトのビジネスコンサルタントとして1年間働いた。朝から晩まで、週末もなく働いた。政府系のプロジェクトが多かった。
次に、AIGでインベストメントファンドセールスとして働いた。富裕層向けの資産運用ツールのセールスを担当。毎日の顧客フォローが大変だった。半年フルタイムで働き、その後はパートタイムに切り替え、2人のパートナーとともに個人宅のデザイン内装ビジネスを起業した。パートナーの1人はデザイナー。私はセールマンとして働いた。
2007年にABMアムロに移り、リスクコントロールを担当した。リーマンショックによりリスクコントロール部門はとても忙しくなり、私はアジア地区の損失計算プロジェクトに従事した。とてもラッキーなことで、会社の危機のおかげで多くのことを学べ、高い専門性が身についた。
2008年にコマーシャルバンクAGに。アジア地区のオペレーションセントラルプロジェクトの責任者を務めた。部下を数十人抱え、マネジメントスキルが身についた。この時、妻に子どもが生まれ、私も妻も共働きで子どもを育てるのが大変だった。そのため、中国に帰って、上海近くにある義父が経営する会社(ベアリング会社)に移り、子育てとの両立に努めた。しばらくすると、時間ができたので、義父の会社で働きながら、自分の会社を立ち上げた。義父の会社の商品を海外でセールスしつつ、独自の商品を国内向けに販売している。今もトップとして会社を経営している。
Q. 上海での子育てはどう?
A. 上海でも幼稚園や保育所の数が足りておらず、子どもをよく育てようと思うと、時間もお金もたくさんかかる。子どもは現在、プライベートスクールに預けている。
Q. MBAに入学したのはなぜ?
A. プライベートカンパニーの悪い点として、ボトルネックが見つかってもそれを解決する方法が分からずに、ただ放置していることなどがある。MBAを通して科学的なビジネス手法を身に着け、事業を拡大させたいと考えている。まずはビジネスモデル、ストラクチャーを学びたい。クラスメイト、卒業生、EMBAなどと将来のビジネスについて話し、どのビジネスを手がけていくべきか学びたい。教授とは、自分が手がけているビジネスについてよく話している。これまでのすべての授業から本業に活かせそうなことを見つけては、教授にアドバイスを求めている。教授はフリーでコンサルティングしてくれ、ありがたい存在だ。
Q. 学級委員長として実現したいことは?
A. クラスメートのキャリア構築に全力を注ぎたい。長江商学院は卒業生を5千名以上抱え中国最大のビジネスネットワークなので、これを最大限利用できる環境をクラスメイトに提供していきたい。
Q. 卒業後のビジョンは?
A. 今の会社をもっと拡大させたい。そして、もっとマネジメント経験を積み、より高いレベルの経営ができるようになりたい。精神的にもっと強くなりたい。
Q. バーリンホー(1980年以降生まれの一人っ子世代)はどんな人たち?
A. 一人っ子世代なので、基本はわがまま。70年生まれの人は保守的なのに対して、われわれの世代はオープンで、アグレッシブ。90年代はわれわれよりももっとオープン、自由な存在だと感じる。一人っ子なので親の面倒を見る必要があり、そのプレッシャーを感じる。生活面では、不動産、車などの生活費がとても高くなってきたのが不安。
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大内昭典
現在、日系事業会社の香港を拠点に中国関連の事業投資に従事、中華圏在住8年目。
1980年11月生まれ。大学在学中に日本の公認会計士試験(旧第二次試験)に合格。
大学卒業後、米系投資銀行でIPO引受/M&Aアドバイザリー、ネット系ベンチャーで事業開発を担当。
30代は「海外で活躍する」という夢を実現しようと、29歳のときアジアの時代に中国のトップビジネススクールである長江商学院に私費MBA留学。優秀なクラスメートたちに刺激され、卒業後は中国に残ることを決意。
留学や仕事で丸4年過ごした北京を離れ、2014年6月から香港へ移住。