第五回 老師(2)

2016年8月17日 / 留学のすゝめ

(写真)蒋老師宅の『年夜饭』

お世話になった先生のもう一人は、当時『外事办公室』で事務を担当されていた蒋老師です(中国では事務職員も「老師」と呼ぶんですね)。この方も女性で、当時40歳過ぎくらいでしょうか。

蒋老師はとても優しい世話好きな方です。「北京商学院」時代もすごくお世話になったのですが、2002年9月からの「対外経済貿易大学」での再留学以降、さらに密なお付き合いをさせていただいています。

蒋老師には私より10歳年下のひとり息子がいます。名前を崔くんといいます。中国では、結婚後も女性の名字が変わらないので、息子の名字が違うんですね。崔くんは映画やパソコンゲームが大好きで、よく私を家に招いては映画上映会や遊び方の「指導」をしてくれました。

「これは興行収入全米No.1の映画さ」

「敵が来たらライフルで打つんだよ」

笑顔の素敵な彼は当時20歳、毎日のように部屋にこもって“オタク的生活”を送っていたようです。

その彼も、素敵な女性に出会い2012年5月に結婚。北京の地下鉄沿線に購入した1LDKが愛の巣となっています。また、北京では、2011年1月からナンバープレートの抽選発行方式を導入し、一カ月に2万台、年間24万台に新車登録台数を抑える政策がとられていますが、最近幸運にも当選した彼は早速MAZDA6を買ったようです。持ち家+マイカー、典型的な『小康家庭(ゆとりある家庭)』を築き、幸せに満ちた甘い生活を送っています。

蒋老師家族はよく色んなところに遊びに連れて行ってくれました。中でも思い出深いのは2008年に開催された北京オリンピック。わざわざチケットを手配してくれ、陸上や水球などを一緒に観に行きました。男子200m決勝。ジャマイカ代表のウサイン・ボルト選手の世界新記録「19.30秒」を、ゴール前という最高のロケーションで目の当たりにし、興奮したことも昨日の事のように覚えています。

家族を重んじる中国人にとって、春節は一家団欒の極めて重要なイベントです。『年夜饭』と呼ばれる大晦日の晩ご飯を家族全員で食べるのが慣わし。この『年夜饭』は一般的に鶏や魚などを食べるのですが、その料理は地方によって異なります。南方では一年が甘くなるようにと甘いものを食べる習慣があるらしく、湖南省出身の蒋老師のお宅では『八宝饭』と呼ばれる甘いご飯を食べるそうです。

食後は日本の紅白歌合戦に相当するテレビ番組『春节联欢晚会』を鑑賞しながら一家団欒を楽しみます。

「大晦日に何も予定がないんだったら家に遊びに来て下さいね。『年夜饭』を一緒に食べましょう」

蒋老師は、一人での年越しは可哀そうだと、毎年私を家に招待してくれました。私の事を家族の一員として見てくれているのです。

家族のようにお付き合いしてくれる中国人老師やその家族たち。私の一生の宝物です。


Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。