第十三回 食

2016年8月17日 / 留学のすゝめ

(写真)学生でごった返す経貿大学学生食堂

民以食为天(民は食を以て天となす)

その国の食べ物が合うか否かという問題は、長期的な留学生活ではとても重要なポイントですね。

中国といえば「中華料理」を思い浮かべると思います。留学で中国に来たら毎日この中華料理をたらふく食べれるのかなぁと。まぁ、ちょっと考えればわかる事ですが、日本人用に改良されたレストランで食べる中華料理と、実際に一般の中国人が食べている料理は似て非なるもの。過度な期待は禁物です。

それでは大学の中はどうでしょう。

「食」の場は基本的に学食です。価格は約4~8元で、私が初めて留学した90年代と比較すると、近年はメニューの多様化も進み、定食、丼、面類など以外に、串焼きや鍋料理なども提供しています。

私も普段から学食で食事をする機会が多いのですが、お世辞にも「美味しい!」とは言えません。中国人の学生や同僚に話を聞いても、「まずくて高い。仕方がないから食べている」とぼやいていました。

では留学生はどうか。

私の知っている限りでは、留学生のほとんどがこの学食では食べていないようです。学生時代、私は毎日のように食べていましたけどね……

それでは、何を食べているのかというと、学校付近のレストランが多いようです。人が多く集まる学校の近くでは、必然的に外食産業が発達。今では中華、和食、洋食、何でもあります。

中華料理といえば円卓を囲むイメージがありますが、最近は個食化が進んでいます。90年代には、あまり見かけなかったラーメンや丼を提供する中華ファストフードの店がかなり増えてきました。年々加速し続けている北京の生活リズムを反映しているのでしょう。

また、北京のセブンイレブンでは、温かい惣菜料理も提供しています。冷たいものを食べない中国人への配慮でしょうか。

さらに最近では、デリバリーが随分発達してきました。私が学生の頃はよく韓国料理のデリバリーを頼んでいましたが、最近では和食や洋食もあります。また、マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンなどは、インターネットでもデリバリーを受け付けていますので、中国語ができなくてもクリック一つで注文可能です。

あぁ、なんと便利な世の中になったものでしょう。

ただ、便利になった反面、語学習得、国際交流という観点からは負の影響も否定できません。私の場合、96年当時、一人で分厚い辞書を片手に食堂を訪れ、片言の中国語で必死にコミュニケーションをとっていました。

それが今では全く喋らずに用事を済ませることが可能となっています。語学力が伸びる瞬間。それは、どうしても中国語を使わなくてはならない状況に自分を追い込み、その壁を乗り越えた時に最も顕著に感じることができます。

留学期間中にその「快感」を、是非味わっていただきたいものです。


Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。