第十一回 住~学生寮編~

2016年8月17日 / 留学のすゝめ

(写真)対外経済貿易大学の学生寮

中国の大学は原則的に全寮制で、大学関係者の住まいも学内にある大学があり、敷地そのものが「住」「食」「学」一体の一つの街となっています。

今の中国人学生寮は4~5人部屋が一般的。約15平方㍍のワンルームに下が机となっているロフトベッドが人数分おいてあるだけの無機質な空間です。バス・トイレは共同で、シャワー、洗濯は有料制、夜の23時には消灯し午前零時になると門が閉められてしまいます。テレビも無ければ、クーラーも無ありません。共同部屋のためプライバシーも皆無に等しいでしょう。

実はこれでも随分改善されており、1996年に知己の盛くんの部屋にお邪魔した時に見た光景は凄まじいものでした。

「き…きたない…」

8~10人の学生が二段ベッドにすし詰め状態、部屋は「素敵な香り」を放っていました。1996年当時は、あまりお風呂に入らない人が多く、夏場に乗った満員バスがあまりに臭くて、耐えきれず一駅で降りた記憶もあります。毎日のように私の寮にシャワーを浴びに来ていた綺麗好きの盛くんにとっては、耐え難いものがあったことでしょう。

それに比べると留学生寮は快適です。様々なタイプがありますが、一般的なのは、ワンルームにベッドや机が二つずつ並べてあるタイプです。各部屋に、テレビやクーラーが設置されており、バス・トイレも完備されています。

このタイプの寮は設備的には問題ないのですが、それ以外に大きな問題が。それは、

全く異なる文化で育ち、異なる生活習慣をもつ初対面の二人が同じ空間で生活をすることによる摩擦

部屋が仕切られていないので、部屋にいる間は四六時中顔を合わせます。このシステム、気が合わない者同士だと最悪です。

私の場合、北京商学院時代は以前紹介したインドネシアの黄くんととても充実した日々を過ごしました。また、対外経済貿易大学に来てからの初のルームメイトはカンボジア人。それから一年後に代わって入ってきたのはベラルーシ人でした。私は運がいいことに、彼らとは大きな摩擦も起こらず平穏に暮らすことができましたが、そうでない人もたくさんいます。その摩擦の要因はというと、たとえば、

●部屋を汚すだけ汚してちっとも掃除しない
●音楽がうるさくて勉強できない
●朝から便所に入って出てこない

などなど。まあ理由は些細な事なんですね。恐らく、人間的に気に入らないから、些細な事にも腹を立ててしまうのだと思います。ただ、あまりにもストレスをため込みすぎてしまい、爆発して、殴り合いの喧嘩になったケースもあります。

やはり、改善してほしい点をしっかりと相手に伝えることが大切です。それでも改善しなければ、部屋を代わればよいだけの事。大したことではありません。

日本人は基本的に自己主張が苦手です。日本人同士であれば、「空気を読む」とか「相手を察する」といった方法でコミュニケーションがとれるのかもしれません。しかし、世界に出ると違います。ここぞという時には自分の意見をしっかりと相手に伝える必要があり、それを実践しなければなりません。

留学生活では、勉強以外にも多くの事を学ぶことできるのです。


Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。