(写真)北京の最新ニーハオトイレ
一昔前、中国政府は外国人が住める場所を厳しく制限していました。今でも原則的には「外国人用マンション」に住まなければならないことになっているようですが、北京などの大都市ですと、公安局の許可を得れば、比較的安いローカルのアパート・マンションに住めるようになりました。それに伴い、多くの留学生が学外の居住地を求めるようになっています。
学外での生活はそれなりのコストもかかりますが、留学生だらけの寮生活ではできない、貴重な経験を得ることができるという点で魅力的です。
マンションには、『塔楼』と呼ばれる高層タイプと、『板楼』と呼ばれる比較的低い(通常6階程度)タイプのものがあります。また、北京の胡同でよく見かける『四合院』を改造したタイプなども人気です。
また、外国人にはあまり縁がないと思うのですが、『筒子楼』と呼ばれる集団宿舎のようなタイプの住居もあります。友人の日本人女性が1年ほど住んだことがあるというので話を聞いてきました。
彼女が住んでいたのは3階建ての『筒子楼』。六畳一間の部屋にベッドが置いてあるだけの簡素なもので、家賃はひと月500元。トイレは共同、しかもニーハオトイレ。隣に並んで座っている人に用を足しながら
「今何時?」
と声をかけられることも日常茶飯事だったそうです。洗濯は共同の洗面台での手洗いで、蛇口は2つしかないため早い者勝ち。風呂はなく、歩いて約2分の場所にある大衆浴場。北京の冬は日中でも氷点下という極寒です。歩いて帰ってくる間に、髪の毛はカチンコチンに凍ってしまいます。
『筒子楼』の欠点は隣人の行動が、いちいち生活に影響を及ぼすことです。外から帰ってきてなんか目が痛いなぁと思ったら、お隣さんが唐辛子をふんだんに使った料理を作っていたそうです。
このように、生活条件は決してよくはありませんが、中国人の友人ができやすいというメリットもあります。彼女が生活した『筒子楼』は「ほのぼのとした人と人の距離が近い」環境で、日本人の彼女に対してもとてもよくしてくれたそうです。中国人は一旦仲良くなると、とことん面倒見てくれる人が多いのです。
仲良くなった友人たちとの交流で中国語力は飛躍的に上達します。語学力を短期間で高めたいという人にはもってこいの環境と言えるかもしれません。
留学期間中にどこに住むか。与えられたものだけに縛られるのではなく、自分の条件に基づいて、色々と検討してみるのもいいかもしれません。
Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授 2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。 2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。 中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。