(写真)『北京孔庙和国子监博物馆』の孔子像
子曰:「知之者不如好之者、好之者不如乐之者」(子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)
これは孔子の「論語」の一節で、わかりやすく言うと、
「どんなにそれに関する知識が豊富にあっても、それを好きになれる人には及ばない。どれだけ好きになれたとしても、それを心から楽しめる人にはかなわない」
といった感じでしょうか。これこそが私の語学学習の基本となっている考え方です。
我々は中学校一年より英語の勉強を始め少なくとも高校卒業までの6年間は英語を学びます。現在、英語教育にこれほどの時間を費やしている日本人の中で、
「私は英語ができます!」
と自信を持って言える人はどれくらいいるのでしょう。私個人の経験では、英語学習はあくまで「試験のための勉強」でした。文法や読解を中心に、試験テクニックを数多く学びました。しかし、試験後時間が経つと、多くの時間を費やして覚えた英語もいつの間にか脳の中から消失していました。
北京には『狗熊掰棒子』と言うことわざがあります。これは意訳すると「クマがトウモロコシをもぎ取っては脇に挟み、次のトウモロコシを取るときには最初のトウモロコシを落としてしまう」となります。
語学はこの『狗熊掰棒子』の様に「単語を暗記し、試験が終わったら忘れる」の繰り返しでは絶対に進歩はありえません。語学とは日々の積み重ねこそがものを言うものなのです。
ただし、語学学習のように、毎日同じことを繰り返し、単語量をコツコツと積み上げる作業というのは単調で、味気ないものです。「語学は日々の積み重ね」と口では簡単に言えますが、面白みのないものを毎日続ける事は極めて困難です。
そこで私は、
「もし自分の好きな事だったら楽しく続けられて、いくらやっても飽きないんじゃ?」
と考えました。中国語学習と自分の好きな事のコラボレーションし、中国語習得を「勉強」から「趣味」に変える事ができれば、それに勝るものは無いと考えたのです。
私は中国映画に非常に興味があったので、ビデオを使った学習方法を開始しました。私が日本で勉強していた頃の90年代は種類も少なく、朱旭氏主演の『变脸(邦題:変面)』や姜文氏の初監督作品『阳光灿烂的日子(邦題:太陽の少年)』が私の教材でした。
勉強方法も試行錯誤しました。最終的にたどり着いた方法は至って簡単で、私は勝手に「モノマネ学習法」と名付けているのですが、気に入ったシーンのセリフをモノマネもしくは書き取りをするだけです。ただ、今でこそDVDは字幕が調節できますが、当時は日本語字幕を隠すために、テレビにガムテープを張っていました。今となっては良き思い出です。
留学に来てからも映画を使った学習方法は続きました。それに加え『相声(中国漫才)』にも魅せられ、中国語「モノマネ学習」に取り入れるようになりました。毎日時間にして約30分程度でしたが、たったこれだけでヒアリングも口語もかなり上達したものです。
味気ない語学学習も工夫と心がけ一つで効果が大きく変わります。
中国語を「好き」になり、上手になりたい、喋れるようになりたいと思って始めた中国語学習です。面白みのない勉強に自分の趣味の要素を加える事によって「楽しみ」に変え、「学習」ではなく「楽習」の感覚でレベルアップを目指しては如何でしょう。
※映画に興味がある方は、私のブログ『村哥の中国映画で中国語楽習』も是非お役立てください。
Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授 2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。 2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。 中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。