(写真)モノマネ学習に勤しんだ学生寮の学習机
「学ぶ」という言葉は、「真似ぶ」と同語言だそうです。中国語でも、『学』には、『学习(学習する)』と『模仿(模倣する)』の二つの意味があります(『现代汉语词典』商务印书馆)。つまり、学ぶことと真似をすることは密接な関係にあるといえます。中国語の上達のコツはこの「真似ぶ」、つまり中国人をモノマネすることにあると言えます。
子供は成長の過程において親のモノマネをして“語学”をマスターします。私も、中国語をネイティブのレベルまで高めたいのであれば、
「ネイティブ・スピーカーが喋っているのをそっくりそのままモノマネすればいいんじゃないか?」
と考え、早速これを実行に移してみました。これが大当たりで、この「モノマネ学習法」を取り入れてから、中国語、特に発音は飛躍的に伸びました。
方法はいたって簡単。教科書に附属されているヒアリングテープやCDを使い、丸暗記してマネするだけです。このような教科書附属のテープの中国語発音は非常に正確で、単調のようにも思えますが、実は一人一人の発音、発声は異なります。私もまずはこの特徴をおさえる所から始めました。例えば、
「この女性の『不知道』という発音は『不』が微妙に強いな」
「この男性は随分間延びして発声するな」
といった感じで、これを全てモノマネしていきます。このような特徴を耳で聞き分け、耳で聞いたままの音をそのまま発声するのは、決して簡単ではありません。これも毎日繰り返すことによって、徐々にできるようになっていくのです。
次のステップでは歌手や芸能人、漫才師のモノマネを徐々に学習に取り入れていきました。この場合も学習方法は至って簡単で、気に入ったフレーズをみつけてモノマネするだけです。ラジオ、テレビ、映画などソースはどこからでもかまいませんが、繰り返し聞けるものを用意。最初の内は一言のセリフや、比較的短い文章を選び、徐々にそれを長くしていきます。最終的には10秒くらいモノマネで喋れるようになれば理想的です。
格闘家の角田信朗さんはとても流暢な英語を話すことでよく知られています。後から知ったのですが、その彼も「ブルースリーの映画のサウンドトラックを繰り返し聞いて英語のセリフを丸暗記した」そうです。
私の場合も、言葉を売り物としている漫才師や、役者のモノマネでは特に大きな収穫を得る事ができました。ここでは中国語の正確な発音というよりも、中国人独特の「息遣い」、「間の取り方」、「会話のリズム」を学び取る事ができます。日本人の中にも非常にきれいな中国語を話すけど、なんか中国人とはちょっと違うという人がたくさんいます。これこそまさに、「息遣い」、「間の取り方」、「会話のリズム」の訓練が不足しているのです。
「学ぶ」=「真似ぶ」、このモノマネ学習法を一度試してみては如何でし
Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授 2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。 2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。 中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。