第二十回 話題をつくろう

2016年8月17日 / 留学のすゝめ

(写真)話のネタとなる熊本産馬刺し

 「ある程度中国語ができるようになったんで、中国人とおしゃべりして口語力を高めようと思うんだけど、あんまり話すことがないんだよね」

 よく聞く話ですが、外国人の口語力が伸びない核心をついた問題だと思います。つまり、共通の話題が少なく、会話が続かないのです。

 仕事で使えるレベルの語学力を身につける為には、「浅く広く」ではなく、「狭くても深い」議論ができるようになる必要があります。実際、私も毎週のように会議に出ていますが、話の内容はかなり専門的なものばかりです。それではどうすればそのような議論ができるようになるのでしょうか。

 私の場合は、まず一つの分野を徹底攻略することから始めました。90年代の留学の時には、幼少の頃から慣れ親しんでいるサッカー、二度目の留学では、中国語の勉強に一役買った中国映画です。

「中国人と映画の話題でとことん話す!」

 という目標の下、週末になると貪るように観続けました。まずは手始めに、幼少時代に大きな影響を受け内容をよく知っているジャッキー・チェンの作品からスタート。チャン・イーモウ、チェン・カイコー、フォン・シャオガンといった国内有名監督の映画を一通り観た後は、監督や出演役者、ジャンルを問わず幅広い映画にチャレンジしました。

 その後はドラマにも守備範囲を広げました。『我爱我家』、『编辑部的故事』、『北京人在纽约』などの誰でも知っている『经典』と呼ばれるドラマをおさえた後は、『蜗居』、『奋斗』など流行中の作品も欠かさず観ました。また、日本にいた時はほとんど観ることのなかった日本のドラマは、あえて中国語吹き替えバージョンを観ました。日本のドラマに興味がある中国人との会話のためです。

 もちろんただ見るだけでは、中国語のレベルは上がっても、深い内容の会話ができるようにはなりません。私の場合、毎回見た後で、自分なりの感想や気になったシーンに関する自分の意見をまとめました。

「『初恋の来た道(我的父亲母亲)』で、現在が白黒、過去がカラーで表現されているのは……」
「『我爱我家』で姜文が友情出演するシーンは……」

 そしてその自分の頭で考えた独自の意見を中国人にぶつけました。最初はぎこちなくても、繰り返し話をしていると、不思議なもので内容が更に深まり、会話も流暢になってくるのを実感できました。

「それじゃ、これから何の話題について学べばいいんだろう」

 と考えておられる方に私がお勧めするのは、「食」に関する話題です。中国人の「食」に対する関心は極めて高く、ほとんどの人と会話を楽しむことが可能となります。まずは、自分に身近な日本料理の中国語表現を覚え、中国人の友人に紹介する所から始めてみてはいかがでしょうか。さらに自分の地元の郷土料理などを詳しく話ができるようになれば会話はどんどんはずんでいきます。私も日本食の話になったら、必ず地元熊本の馬刺しの話をしています。

 共通の話題を見つけることで、会話も盛り上がり、相手との距離も一気に近づきます。自分に適した話題作りにチャレンジしてみてください。


Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。