第二十二回 スタートダッシュの大切さ

2016年8月17日 / 留学のすゝめ

(写真)2002年に留学して初めてのクリスマス

一日どれだけの勉強量が最も適しているのでしょう。これは、人によって大いに異なるので一概には言えません。

長い中国語学習人生を振り返ってみると、語学学習は最初のスタートダッシュ期間が最も大切だと私は考えています。

つまり、最初の約1~2年の基礎学習、初級学習の段階で、できる限りの事を一気にやってしまうのです。この場合もどれくらいの期間が適しているのかは定かではありませんが、第十七回「語学恋愛論」で触れたように、「中国語引き出し」が脳にできるまで、つまり他の外国語と触れ合っても、中国語とは完全に分離して考えることができるまで、と考えていいかもしれません。

私の場合は、中国語学習を開始してから留学に旅立つ前の最初の1年間は、どんなに忙しくても毎日最低2時間は机に向かうようにしました。それ以外の時間でも、できる限り毎日中国語と接することを心がけました。例えば、車の中で今までよく聞いていた音楽を中国語のヒアリングテープに換えたり、お風呂の中で中国語の本を読んだり、一日の最後に当日あった出来事を中国語で思い出したりと、あの手この手で中国語にアタックし続けました。

また、辞書を持ち歩きわからない単語があったらすぐに調べる習慣を身に着けました。今では電子辞書もありますし、スマホにも辞書機能がついている世の中になっていますが、当時はあの分厚くて重い辞書を持ち歩くだけで大変だった記憶があります。

このような日々の積み重ねのおかげで、この期間で培った中国語は、その後の中国語学習の礎となり、今になっても決して忘れることのない血肉となっています。

数年間中国語を勉強しているにもかかわらず、なかなか進歩しない人を、私は数多く知っています。そのような人に話を聞いてみると、

「時間がなかなかとれず、集中して勉強できないため、覚えた単語もすぐに忘れてしまう」

とおっしゃっています。まさしく、第十八回「好きこそ物の上手なれ」で紹介した『狗熊掰棒子』状態なのです。

「時間が無い」は言い訳にしかなりません。余った時間を勉強に回すという考えでは、いつまでたっても『狗熊掰棒子』から抜け出すことはできないでしょう。

時間は自分で作り出すものです。

語学学習はスタートダッシュが命です。テイクオフ直前の飛行機が滑走路を疾走するが如く、エンジンフル回転で中国語学習に取り組んでみては如何でしょう。一度大空へ飛び立つ事ができれば、後は自然と素敵な中国語の世界へと誘ってくれるでしょう。きっとそこには今まで見たこと、聞いたことそして感じた事の無い未知の世界があなたを待っているはずです。


Yusaku Nishimura

投稿者について

Yusaku Nishimura: 対外経済貿易大学副教授  2010年6月に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学国際経済研究院で専任講師として採用される。  2013年1月より同大副教授。日中両国でのコラム執筆や講演活動も精力的におこなっている。  中国の外国人の大学教員の立場は、自国の言葉で教える非常勤講師か、海外の大学教員でありながら中国でも講義する客員教員が一般的。日本人を中国人枠での専任講師として採用するのは極めてまれで、人民日報やChina Dailyなどでも大きく紹介された。