第18回:日本人の見分け方

2016年9月11日 / カイシャの中国人



(写真)こういう場所で日本人だと分かると、ちょっと怖いんです(汗)


 中国人、韓国人と日本人、同じ顔をしていても背景となる歴史・文化が微妙に違い、考え方に大きな違いがある。欧米人から見れば同じ東洋人だから考え方なども同じじゃないかと思うかもしれないけど、我々日本人は、この違いこそが中韓両国との争いの原因なのかもしれないと思っている。まあ、我々もドイツ人とフランス人の違いなんてよくわからないわけだが、彼らに言わせれば全然違うということになるだろう。

 中国人の友人に言わせると、日本人は「見てすぐ分かる」という。その主なポイントは「外見」と「動作」だと言う。まず外見で言えば、服装がそもそも違う。中国人がスーツを着る場所は、正式な儀式や相当大きな会議とかに限られている。公式の会議でも夏の暑いときなどは、国家のリーダークラスでも開襟シャツを着ているのをテレビでよく見る。日本はクールビズが許されるようになったのはごく最近のことだ。真夏でも暑苦しいスーツを着ていたりするのは、世界中では日本人だけかもしれない。

 日本人の男性はスーツを着ている人が多いので、すぐ見分けられると言う。最近はそういうことが日本でも伝わっているので、仕事の時でも中国ではカジュアルな格好をしている日本人が多くなったが、それでも「着こなし」が中国人と違うので、やっぱり日本人だと分かるらしい。一方女性の場合は、服装の「色使い」ということになるのだろうか。日本の女性は淡色を好むし、ゆったりめの服を着る人が多いが、中国の女性は原色系が多く、身体にぴったりした服を着る人が多いと感じる。だから日本人女性も分かるらしい。

 僕が絶対中国人だと確信できる見分け方がある。男性の場合はベルトのバックルだ。金色や銀色のでっかいバックルをしている男性は絶対中国人だ。ボタンダウンのワイシャツなんかもほぼ日本人だ。女性の場合、大きな花の刺繍柄の入った服を着ていればだぶん中国人だと思う。でも女性はフォーマルな服装の場合はちょっと見分けがつきにくい。一般的に言って、服装は日本人と中国人を見分けるのに重要なファクターになる。

 次は「動作」の違いによる見分け方だ。中国人と日本人はいわゆる「立居振舞い」が違うのだと言う。よく知られていることは、中国人はおしゃべりで声が大きく、公衆の場でも他人にあまり気を使わないが、日本人は声が小さく、何かと周りの人に気を使いながら行動するという違いだ。列に並ばないとか痰を吐く(最近は都会ではかなり減ったが)とか、中国人の特徴を表す動作はいろいろある。逆に日本にいる中国人は、やたらとお辞儀をする等々、日本人の特徴を表わす動作がたくさん指摘できるだろう。

 でも僕の前秘書だった劉纉さんが教えてくれた見分け方は秀逸だ。彼女曰く「椅子にすわる動作で見分けられます」。日本人は椅子に座る時、まるで椅子が壊れてないかを確かめるかのようにそっと腰かけるが、中国人はたいてい「ドン」と音がするほど重力に任せて座る。僕はこのことを教えてもらってから観察をし始めたが、なるほど百発百中だ。

 反応の「動作」で言えば、絶対中国人だとわかる動作がある。驚いた時「アイヤ」って言うのは100%中国人。人に話しかけられてわからないときなどに、「あ~?」って聞くのも絶対中国人だ。まあ、中国人と日々接している皆さんには常識でしょうけど。

 さて、このコラムは「カイシャの中国人」だから、ビジネス上の日本人と中国人の見分け方をご披露しなければならない。このコラム自身は、ずっと日本人から見た会社の中国人の行動観察を書いてきているので、ここではあくまで「ぱっとわかる方法」を示そう。

 中国人ビジネスマンの特徴の第1は「名刺」だ。中国人は挨拶する時に名刺を出さない人が多い。日本人はと言えば逆に、相手の顔も見ないでとにかく名刺を出すので、それもちょっと滑稽だ。中国人で特に役職の高い人はだいたい名刺をくれない。清華大学のある教授は「俺の顔が名刺だ」とおっしゃったので、僕は思わず吹き出してしまったことがある。もうひとつ、中国人は名刺を日本人とは逆に向けて差し出すので、これもちょっと面白い。

 中国人ビジネスマンの第2の特徴は、「うなずき」動作だ。僕の観察によると、中国人がうなずく速度は日本人の2~3倍だ。ともかく速く縦に何度もうなずく。これに対して日本人は相手の言うことがわかっていてもわからなくても、ともかくゆっくりうなずく。中国はビジネスのスピードも速いのでみんなせっかちなのだろうか。実はこれは僕のとっておきの見分け方なのだ。

 まだまだある。中国人の若い人は「鉛筆回し」がお得意だ。オフィスで脱いだ上着を丁寧に畳んだりしたらそれは日本人だ。スケジュール帳とか大きなノートとか、日本人に特徴的なビジネスアイテムも結構ある。でも最近はスマホなどの普及で見分けがつかなくなってきた。中国人は電話でのおしゃべりが大好きだから、スマホの細かい操作は苦手かと思っていたら、結構年配のビジネスマンも、スマホでちまちまスケジュールを入れていたりする。意外にスマホは、中国人に受け入れられているのではないかと思う。そうなると日本人を見分けるビジネスアイテムが、だんだん少なくなってきている。

 中国での日本人の見分け方なんか、どうでもいいことじゃないかと読者は思うだろう。でもこういう分析も、実は役に立つことがあったのだ。ちょっと悲しいことだけど、去年の秋のように日中関係が悪くなったとき、中国にいる僕たちは、いかに「日本人と見分けられない」かをあれこれと考えたのだから。