第五回『Any Way You Want It』

2016年8月23日 / Let it Beijing



(写真)初めての北京の夜


ドアを開けてると、リビングで奥さんのNさんがお仕事をされていました。
KZさんが私のことを紹介してくれましたが、私とKZさんでさえも実質初対面のような状態です。
普段人見知りをしない性格ではありますが、さすがに緊張しないわけがありません。
Nさんは淡々と仕事を続けながらも「(部屋を)自由に使っていいからね」「荷物はその辺に置いていいよ」と、優しく言ってくれたのを覚えています。
Nさんは少し話しただけで心を許せてしまうような不思議な方で、翌日には自然体で生活していたように思います。


Nさんは仕事があるということで、KZさんと二人で夕食に行くことになりました。

「何が食べたい?」と、聞かれて『庶民的な食べ物がいいです』とだけ答えると、家からそう遠くない路地に入っていきました。
「美味しい串が食えるところがあるから…」と進んでいき、「冬は外で食べられないからね、せっかくだし外にしよう」と、店外のテーブルに座りました。
当たり前のことではあるのですがメニューが全て漢字で書かれていることにすら、ある種のカルチャーショックを感じていました。

まだ夏の日の明るい夕方ではありましたが「ビール、飲めるでしょ?」とKZさんに勧められるがままに乾杯しました。
羊の肉など日本では滅多に食べないものを食べながら、どれもこれも美味しくて感激していました。(ビールの安さにも感激していました笑)
同じ業界なこともあり共通の話題も多く、食べ終わる頃にはKZさんともかなり打ち解けていた気がします。

食事が終わると近所を散歩しながら案内してくれました。
そこで路地にある公衆トイレに入ったのですが、人生で初めての溝が掘ってだけの便器でした。
少し異臭が漂う感じではありましたが、「なんか中国に来た気がする」と、妙にテンションが上がっていたのを覚えています。

結構ディープでローカルな環境にいきなり放り込まれていたのですが、その日はわけもわからず「北京ってもっと都会のイメージだったけど…」なんて思っていました(笑)

でも、この環境が最初だったからこそ、北京を好きになれた気がしています。

あると便利だからということで交通カード(PASMOのようなカード)をKZさんに買ってもらい、初めての中国のバスに少し緊張しながら乗りました。
北京の交通システムは日本と近いこともあり、旅行期間中から一人でも電車もバスも問題なく移動ができました。

マンションに戻ってからNさんも一緒に3人で雑談をしながら、初日の夜は更けていきました。



Mine Kawahara

投稿者について

Mine Kawahara: 河原嶺旭(かわはら みねあき) 1988年10月18日生まれ。 神奈川県横浜市出身。 17歳から音楽を始め、20歳でテレビドラマ「メイド刑事」挿入歌で作曲家デビュー。2011年にAKB48に提供した『風は吹いている』が160万枚を越えるヒットとなり『アイドルと同世代の作曲家』として注目を集め、同年の年間作曲家売上第三位を獲得。アニメ・ゲーム関係の仕事も数多く手がけており、雑誌のコラムの執筆や教育関係など仕事の幅は多岐にわたる。2013年より、北京・上海を中心に活動している。