第十四回『Dad Where Are We Going』

2016年8月26日 / Let it Beijing



(写真)「爸爸去哪儿2」の映画ポスター


象棋を指しながらのんびり暮らしていたのですが、半年も経つ頃には交友関係が広がっていく中で音楽制作の話も出てくるようになりました。

最初はやはり日本人ということでゲームやアニメなど日本が最先端を走っている分野が多く、中国作品の主題歌やBGMなどをやらせていただいていました。

実際に日本にレコーディングに行った案件などもあり非常に楽しくやらせていただいているのですが、同時に「もっと中国の誰でも知っているような作品をやってみたい」という気持ちも出てきました。

そんなちょっとしたモヤモヤを抱えた日々が続く中でひょんなことから「爸爸去哪儿」の2015年公開の映画向けの主題歌の編曲依頼がきました。

中国のTV番組などにあまり関心の無かった自分ですら知っているいわゆる国民的番組だったので驚きましたが、いわゆるコンペ形式で最も良かったものを選ぶという形式でした。

中国の音楽業界でコンペ形式というのはあまり使わない方法なのですが、第一作目の「爸爸去哪儿」劇場版は140億円の記録的筆ヒットを記録していることもありいいものを選びたいという作品にかける気合いが伝わってきました。

中国人の作曲家のデモテープを聴く機会はあまりなかったのですが(日本でも同業者のデモテープを聴く機会はあまりないですけど)、キャッチーで日本でも全然流れていてもおかしくない雰囲気のメロディーでした。

1週間の期限が与えられ、編曲は基本的に2~3日あれば問題ないこともありじっくり作り込んだ第一稿を提出しました。

しばらく返事が来なかったので忘れていたのですが、「編曲をお願いします。打ち合わせをしましょう」というような返事が来て私が主題歌を編曲することになりました。

今となってはいい思い出ですが、この打ち合わせから信じられないような忙しさや理不尽な制作に巻き込まれていくのでした…。



Mine Kawahara

投稿者について

Mine Kawahara: 河原嶺旭(かわはら みねあき) 1988年10月18日生まれ。 神奈川県横浜市出身。 17歳から音楽を始め、20歳でテレビドラマ「メイド刑事」挿入歌で作曲家デビュー。2011年にAKB48に提供した『風は吹いている』が160万枚を越えるヒットとなり『アイドルと同世代の作曲家』として注目を集め、同年の年間作曲家売上第三位を獲得。アニメ・ゲーム関係の仕事も数多く手がけており、雑誌のコラムの執筆や教育関係など仕事の幅は多岐にわたる。2013年より、北京・上海を中心に活動している。